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なぜ今頃発表? 「母乳」の放射性物質濃度調査について厚労省にきいてみた

厚生労働省パンフレットより

4月30日、厚生労働省が母乳の放射性物質濃度などに関する調査結果を発表した。

【発表原文】
母乳の放射性物質濃度等に関する調査について(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001azxj.html

結果、23名中7名の母乳から微量の放射性ヨウ素(131I)が検出された。原発事故から50日ほど経過してからの調査と結果発表について、「検出値が下がるのを待って調査したのでは?」といううがった見方もあるようだが、果たしてどうなのだろうか。厚労省の担当の方にきいてみた

深水:そもそも母乳の調査が遅すぎるような気がするんですが。先日、市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」の母乳調査結果の発表がありましたが、それを見て調査を始めたということなんでしょうか。

厚労省:官房長官の指示で調査をおこないました。その指示の前に「母乳調査・母子支援ネットワーク」からの発表がありましたので、関連はあると思います。

深水:それにしても遅くないでしょうか。数値が下がるのを待っておこなったのでは、という批判もあるようですが。

厚労省:確かに指示があるまでは調査はしていませんでした。ヨウ素の場合、お母さんが摂取した量の4分の1が母乳にも出てくるといわれています。国は水や食べ物などの汚染に関して暫定基準値を設けましたが、その指標以下の水や食べ物であればお母さんが飲食しても母乳、そして乳児には影響がないと考えております。例えば水に関しては大人は300ベクレル/リットル、乳児は100ベクレル/リットルとなっていますが、お母さんが300ベクレル/リットルの水を飲み続けたと仮定すると、その4分の1である75ベクレル/リットルが母乳の中から検出されるだろうと考えられます。この75という数字は乳児の基準値100を下回っています。

深水:つまり暫定基準値内の食べ物、飲み物を摂取している限りにおいては、母乳に関しても安全であるはずだ、ということなんでしょうか。

厚労省:そうです。それぞれ立場の違う日本核医学会、日本産婦人科学会にもご意見をききながら進めております。

深水:しかしながら市民団体から「母乳が放射能汚染している」という発表がおこなわれたときはかなり衝撃を覚えた方も多いのではないでしょうか。

厚労省:数値が出たということそのものに関して不安を覚えた方もいらっしゃるようですが、大事なのはその数値がどのくらいか、ということだと考えます。

母乳の放射性物質濃度等に関する調査結果

●市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」の人が心配していること

国より先に母乳の検査をおこない、結果を公表した市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク(以降「母乳調査ネット」と略)」。母乳調査ネットでは現在新たに福島約30名、茨城約10名、千葉約10名の方の検査を順次進めているそうだ。代表に話をきいたところ、厚労省の発表を見ていくつか心配している点があるという。

「母乳調査ネット」コメント:
基準値ですが、昨日厚労省の発表では、母乳の基準が牛乳と同一になってしまっています。母乳しか飲めない乳児では、月齢によっても違い、その影響は幼児と比較してもかなり大きいのではないでしょうか?

確かに赤ちゃんはミルクだけ飲んでいるわけで、牛乳と同じ基準でいいのかというのは疑問だ。その件について厚労省にきいてみた。

深水:基準値が牛乳と同じなのはおかしいという声もあります。母乳だけを飲んでいる乳児と、大人が飲む牛乳が同じ基準値というのは違和感があります。

厚労省:確かに「牛乳と同じ」ですが、水道水に関しても同じ基準値であり、これで問題ないと考えています。つまり、その基準値を超えていなければ、その水道水で粉ミルクを溶かして飲んでも問題ないという指標でもあるわけです。その水道水で粉ミルクを溶かして飲み続けても大丈夫ということなんです。ですので母乳であっても同様の基準で問題ないと考えています。

●6週間経過しての母乳調査

今回の厚労省による調査で検出された放射性物質は「微量」だった。しかしそれにしても何故これだけ調査が遅れたのだろうか。「母乳調査ネット」が四日市大非常勤講師の河田昌東氏にたずねたところ、以下のようなコメントをいただいたという。

河田昌東さん:
厚労省は、ヨウ素の半減期を考え、出なくなってから測ったのでしょう。
牛乳から出たときにすぐに測るべきでした。
このデータを見ると、いわき市のかたは、水素爆発当時30km圏内にいた、ということですから、汚染した空気の吸引もあったでしょう。
母乳採取日が4月25日ですから、ヨウ素131の半減期から逆算すると、直後はこの45.7倍(約50倍)はあったことになり、3.5×45.7=160Bqになり、基準を超えていた可能性があります。茨城県内でも複数からヨウ素131が出ていることは事故直後の福島の風向きも見る必要があります。また、牛乳や野菜、飲料水も基準を超えていたので、原因の特定は困難ですが、何れにせよ事故直後はこれらの値を大幅に上回っていたと考えられます。また、現在、野菜の規制解除が始まっていますが、現在の暫定基準は非常に高いので,これらが市場を通じて広く出回れば、首都圏始め広い地域で母乳の汚染が検出されるようになる可能性もあります。

(厚労省の母乳調査結果発表を見た河田昌東さんからのコメント)

●母乳に含まれていた放射性物質はどこからきたのか

河田氏は空気からの吸引も可能性があると指摘するが、乳児に母乳を与えているお母さんたちは、生活するにあたってできるだけ放射性物質を取り込まないように、注意をしているはずだ。実際のところ、これらの放射性物質は、どこからお母さんの体内に入ってきたのだろうか。

深水:母乳に入っていた放射性物質はどこからきたものなのだと推測されますか?

厚労省:お母さんたちは飲み水はミネラルウォーターにしてらっしゃいますし、大気中の線量もかなり低くなっていますから、考えられる理由としては、「食べ物」が挙げられます。既に心配するレベルではないのですが、食べ物に微量でも放射性物質が含まれていますと、そのうちの4分の1は母乳として出てきますからこのような形で検出されるということになります。

深水:現在の数値は微量といえますが、これはさかのぼって考えると、大量の放射性物質が原発から大気中へ排出された時期の数値は微量とは言えない量だったのではという話もあります。「直後」は現在の値の50倍だったという話もあり、そうだとすれば100ベクレル/リットルという基準以上だった可能性もあるということになります。

厚労省:確かに、環境中の濃度が高かった時期には母乳に含まれる放射性物質の濃度が高かった可能性はあります。お母さんの摂取した食べ物等に含まれる放射性物質の4分の1が母乳にも出きますので、食べ物に含まれる放射性物質の濃度が高ければ、母乳に含まれる放射性物質の濃度も高くなります。

深水:事故直後は調査結果の50倍近い数値だったのではと推測している方もいらっしゃいます。

厚労省:お母さんが摂取した食べ物の中の放射性物質は、蓄積されるわけではなく、そのまますぐに母乳に出てきます。お酒を飲むとすぐに母乳にも影響が出ますが、それと同じです。ですので、これは一概には言えないと思います。今、母乳から微量の放射性物質が検出されたからと言って、6週間前に50倍の濃度のものを食べたという話にはなりません。

現時点では、水道水に含まれる放射性物質の濃度も下がってきていますし、食品に関しても出荷制限の解除が進んでいます。市場に出回っている食べ物は安心して食べていただいてよいですし、母乳への影響もほとんどありません。心配しすぎることによるマイナス面もありますので、お母さんにはあまりナーバスにならずに生活していただきたいと思います。

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深水英一郎(ふかみん)

記者:

見たいものを見に行こう――で有名な、やわらかニュースサイト『ガジェット通信』発行人。トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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