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患者さんに懇願されて返答に詰まる(small G)

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今回はsmall Gさんのブログ『small G』からご寄稿いただきました。

患者さんに懇願されて返答に詰まる(small G)

今日は回診している時に患者さんからお願いごとをされました。

しかも、その御願いは実にシンプルで、何度も何度も念仏のように私に浴びせられたのでした。
それは「先生、楽死(らくし)させて!御願いします!」というフレーズです。それを私に投げかけ続けたのは90代半ばの心不全のお婆さんでした。認知症はそれほど進んでいない状態の方で、担当医との質疑応答も充分に理解できる方でしたが、私が診察を終えて挨拶をし、部屋を出ていこうとする時に私にこの言葉を投げかけて来たました。

部屋を出ようとするその瞬間、お婆さんの言葉が見えない鎖のように私の足に絡みつき、お婆さんの部屋に留めて離さない事になってしまった様に感じました。両手を擦り合わせて上の言葉を吐きつづけながら何度も「らくし」を懇願されるお婆さんに私は返す言葉もなく、ジッと手を握り返す事しか出来ませんでした。
この時、何か気休めの言葉を投げかけてもその「ウソ」がお婆さんのカッと見開かれた眼に跳ね返されそうで、口から声を出すことが出来ませんでした。orz

このお婆さんの段階の心不全になると、言葉を出すだけでも息が上がります。心臓はホオズキのように膨らみ血液を送り出す指標である駆出率というのが15-20%まで落ち込み、正常下限を大きく切るようなレベルになることも稀では有りません。
そんな苦しい息の元、必死になって何度も何度もそのフレーズを私に投げ返し、激しく息をしながら握りしめた手の先をギュッと握り返してくる命懸けの真剣な懇願に気圧されて、他のスタッフが次の病室に移動したあとも、一人だけ部屋に取り残されてしまいました。

二人だけでじっと目を見つめ合った状態で数分が過ぎましたが、最後には、私からお婆さんに「わかりました。」と言って部屋を出てきました。しかし、何がわかったというのか。言った自分自身が全くわかっていません。そう言った「いい加減な一言」しか出せなかった自分が本当に情けなくなってしまいました。

やっぱり俺には消え行く命と真剣に向き合えるだけの倫理や哲学的ベースというものが「全く」無いなと、改めて感じたのでした。

執筆: この記事はsmall Gさんのブログ『small G』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2015年06月15日時点のものです。

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記者:

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