約半数が「能力主義」より「年功序列」の賃金体系希望、新社会人の思惑とは?
新社会人の約半数が「能力主義型」よりも「年功序列型」を希望
ネットリサーチ会社のマクロミルが、今年4月から働き始めた全国の新社会人を対象に行った意識調査によると、「年功序列型」と「能力主義型」どちらの賃金体系を望むかとの問いに、半数以上の50.5%が「年功序列型を望む」と回答したとの結果が出ました。
「年功序列を望む」とする回答については、2013年は37%、2014年は42%であったということから、ここ1年で大きく増加したことがわかります。一方、「能力主義型を望む」とする回答は25%に留まり、2013年の34%、2014年の36.5%という数値からも一気に減少しました。
過去数年の調査データを見ても、「年功序列型」と「能力主義型」どちらの賃金体系を望むか、との問いに対して、ほぼ均衡した割合で推移してきたものが、2015年になり急激に差が開いたかたちになっています。
「最近の若いモンは…」との紋切り型の理由には当てはまらない
数年かけ、徐々に年功序列を望む割合が増えてきたというのであれば「まったく、最近のゆとり世代はチャレンジ精神がない。俺たちの若いころはもっと……」という、「最近の若いモンは」的な紋切り型の理由付けをされそうですが、ここ1年で急激に差が開いたということであれば、それも当てはまりません。
大きく影響していると考えられるのは、やはり、アベノミクスによる株価上昇や円安の影響により、企業の実質賃金の上昇や、大幅なベアが行われたことです。それにより、本質はどうであれ「景気が回復してきた」「企業の収益が上がってきた」というイメージが定着してきました。
世の中が安定すれば平凡、一生安泰を望む人が増加
いつの時代でも、世の中が荒れているときは、自分の実力一つで大きくのし上がりたいという野望を持つ人たちが多く現れ、また、実際にそのチャンスも転がっており、英雄と呼ばれる人たちが生まれます。
一方、世の中が安定すれば、平凡でもいいから一生安泰で暮らしたいという考え方が大多数となります。戦後の日本を支えた「年功序列型」にしても、高度経済成長の中、日本経済が安定していた時代は非常に有効に作用していましたが、バブル崩壊後、日本経済が衰退しはじめると、その制度の抱える問題が多く指摘され、代わりに欧米型の「能力主義型」が持てはやされるようになりました。
現実はまだまだハリボテの経済回復
ただ、「能力主義型」についても、単純に欧米の枠組みだけを真似しただけで、実際は賃金削減の口実などに利用されたりしたことから、いつしか下火となっています。ただ、ここ数年、大手企業では世界を相手に戦う人材を育成するため、以前の失敗を踏まえた上で再び新たな能力主義型制度を導入する会社が増えてきます。
今回のアンケートデータから読み取れるように、本当に日本経済が安定してきており、今後、誰しも平凡ながら安泰なサラリーマン生活が送れることが望ましいものの、実際のところ、まだまだハリボテの経済回復であり、世界に目を向けても日本企業の遅れが目立ちます。見せかけの平穏に惑わされることなく、毎日刀はきちんと研いでおく必要がありそうです。
(吉田 崇/社会保険労務士)
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