Album Review: ペロタ・チンゴー さらなる可能性を秘める、アルゼンチン音楽界の新星による初の作品集

Album Review: ペロタ・チンゴー さらなる可能性を秘める、アルゼンチン音楽界の新星による初の作品集

 潮風が香るアルゼンチン音楽。といっても、あまりイメージできないかもしれない。ブラジルであればボサノヴァなどは、太陽や海のイメージがあるだろう。しかし、アルゼンチンのコンテンポラリー・サウンドは、タンゴやフォルクローレにしても、どちらかというと海よりも山や川、太陽ではなく雲や雨だ。そんな内省的な音楽が主流のアルゼンチンには珍しいグループが、このペロタ・チンゴーである。

 ペロタ・チンゴーは、男女4人組のグループ。ヴォーカルとギターを担当するドロレス・アギーレと、パーカッションを叩きながら歌うフリア・オルティスという二人の女性シンガーを中心に結成された。伝え聞くところによると、ウルグアイを旅行する旅費を稼ぐために、海辺やストリートで歌っていたという。そのうちに、2人の男性メンバーが加わり今の編成となったようだ。

 アルバム『ペロタ・チンゴー』は、彼らにとって初めての作品集となる。基本的にはアコースティックが主体で、楽器もギターとパーカッションがほとんど。数曲にサポート・メンバーが加わっているが、全体的にはライヴ感を大事にした作りになっている。冒頭はカハという吊り太鼓を叩きながら歌う伝統的なフォルクローレ・スタイルだが、そこからフォーキーなナンバーにつなげるところが彼ららしい。時にはレイジーなブルース風に展開したり、エスニックな味付けでワールド・ミュージック的な要素を加えるなどスパイスも効いてはいるが、基本的にはシンプルでナチュラル。しかも、どこか外に向けられている感覚があるので、ジャック・ジョンソンあたりのアイランド・ミュージックと質感は近いかもしれない。

 このサニーサイドなイメージは、アルゼンチンでは異色ではあるが、もしかしたら今後の主流になる可能性を秘めている。実際、国内だけでなく隣国のブラジルやラテン諸国でもツアーを行っており、ますますミクスチャー度も増していきそうだ。これまでになかったタイプのアルゼンチン音楽の新星が、シーンの活性化に貢献してくれることを祈っている。

Text: 栗本 斉

◎リリース情報
『ペロタ・チンゴー』
ペロタ・チンゴー
2015/04/05 RELEASE
2,700円(tax incl.)

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