『Google』を使って株価を予想する研究

サイエンスあれこれ

今回は神無久さんのブログ『サイエンスあれこれ』からご寄稿いただきました。

『Google』を使って株価を予想する研究
株で大もうけしたいと考えている方に朗報です。研究者たちは、株価の動きを予測できるかもしれないある法則を見つけたようです。ただ、当面は動くということは予想できても、それが上がるか下がるかのどちらに動くかまでは予測できないようです。

そう、今はまだこの法則を知ってもお金持ちになることはできません。けれど、この法則は、将来的に日単位さらには時間単位で株価が予想できるようになる糸口になるのではと、研究者たちは期待しているようです。

株価の変動はランダムで予測不可能と言われてきました。この数十年、数学や物理学の研究室から引き抜かれた何人もの精鋭がこの株価の変動予測に挑戦しては、失敗してきたからです。予測が難しい最大の原因は、群衆行動だと言われています。つまり、人は株売買の決定を、自分の判断だけに求めず、他人の判断を参考にしたり、それにゆだねることがあるので、わずかな変動が瞬時に増幅されたと思えば次の瞬間には逆方向に動いたりというめまぐるしい変動を生むというわけです。

ドイツ・ヨハネス・グーテンベルク大学の物理学者Tobias Preisが目をつけたのは、まさにこの点でした。現代のネット社会は、群集心理の動向を知るための最強のツールを提供してくれていたのです。『Google トレンド』がそれです。

『Google トレンド』
http://www.google.co.jp/trends

ここでは、どういった言葉が『Google』で検索されたかの頻度を表す、検索ワードランキングを見ることができます。例えば、2007年初頭から始まった“サブプライム(Subprime)”問題は、2008年9月の“リーマンブラザース(Lehman Brothers)”社倒産を経て、一連の“経済危機(Financial Crisis)”を招きましたが、これら“ ”内の検索ワードの頻度が上がると、スタンダード&プアーズ500(S&P500)株価指数が上下するという密接な連動を示していることがわかります。

*1:S&P 500 『フリー百科事典ウィキペディア』より
アメリカ合衆国の投資情報会社であるスタンダード・アンド・プアーズ社が算出しているアメリカの代表的な株価指数。
http://ja.wikipedia.org/wiki/S%26P_500

Preis氏は、この検索ワードの動向を、株価の変動の予測に使えないかと考えたのです。Preis 氏率いる研究チームは、S&P500に登録されている500社の名前が検索される週間頻度と、翌週の各社の株価変動と取引総額を2004年から 2010年の7年間分比較した結果、残念ながら、週間検索頻度と株価変動の間には相関が見られなかったものの、週間検索頻度と取引総額の間には相関が見られたと、11月15日号の『Philosophical Transactions of the Royal Society A』 *2 に報告しています。

*2:「Complex dynamics of our economic life on different scales: insights from search engine query data」 『Philosophical Transactions of the Royal Society A』(購読無料)
http://rsta.royalsocietypublishing.org/content/368/1933/5707

つまり、ある会社の名前が検索される頻度が高まると、次の週にその会社の株が取引される頻度も上昇するというわけです。ただ、売られるのか買われるのかまではわからない……、と。

なーんだとがっかりしないでください。今回は、単純に社名の検索頻度だけを対象にしていましたが、これを関連ワードや検索結果ランキングにまで広げたりすることで、株価自体の動向予測ができるかもしれません。

それにしても、私たちは『Google』が公開した検索関連情報にしかアクセスできないわけで、その他あらゆる情報を手中に納める『Google』が善良な会社であり続けることを願ってやみません。

今回の記事は、こちらを参考にしました。
「Can Google Predict the Stock Market?」 2010.11.14 『Science』
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2010/11/can-google-predict-the-stock.html

執筆: この記事は神無久さんのブログ『サイエンスあれこれ』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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