「『Facebook』流行ってる」論ってだれ得なの?

Parsleyの「添え物は添え物らしく」

今回はParsleyさんのブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』からご寄稿いただきました。

「『Facebook』流行ってる」論ってだれ得なの?
個人的に『Facebook』は、アカウントを取得して以来、『tumblr』と『Twitter』のポストを流すだけの、一種のミラーサイトみたいなものだったのだけれど、ここ最近になって主にITベンチャー系の方々が急に使いはじめていたら、あちこちから「『Facebook』きてる! 超きてる!!」みたいな記事がぽこぽこと『はてなブックマーク』でホットエントリーに入っていて、「???」という感じだった。一応、『Parsley』も流れに乗って友達リクエストを承認したり送ってみたりしていたのだけれど、やっぱり違和感をぬぐいきれずにいたので、一応まとめてみたいと思う。

これまでの流れは、『In the looop』様の「【続編】Facebookは日本に普及するだろうか?」に詳しく書かれている*1 ので、ご参考に。

*1:「【続編】Facebookは日本に普及するだろうか?」2010/10/21『In the looop』
http://blogs.itmedia.co.jp/saito/2010/10/facebook-ads-ae.html

確かに、日本のユーザー数が9月~10月に激増して160万人に迫る勢いというのは驚異的。『TECH SE7EN』様の記事*2 によると、女性が51%とわずかに多いというデータは興味深い。なぜか『Parsley』のまわりにはあまり見当たらないけど……。ただ、160万人という数字は多いようで実のところ微妙。

例えば、イラスト投稿SNSの『pixiv』は8月末の時点で会員数約230万人で、一年間で約100万人増加しており、今でも3000~4000人/日で新たなユーザーが登録しているという。単純な比較はできないけれど、個人的にはコンテンツ制作のすそ野の広がりを考えれば「こちらの方がすごくない?」と思う。

広告的なスケールでいえば、『mixi』、『GREE』、『モバゲータウン』がいずれも2000万人以上で、『Twitter』の日本のユーザー数が約1700万人という規模であることを考えれば、「まだまだ」というか、「ぜんぜん」じゃないのか、という疑問を抱く。

*2:「Facebookが本当に始まっている件―日本のユーザーが急激な増加で150万人突破」2010/10/14『TECH SE7EN』
http://techse7en.com/archives/1255450.html

なんだか皆様のエントリーを拝見していると、“いいね!”ボタンがいいとかおっしゃっているみたいなんだけれど、それって『はてなスター』とあまり違わないし、『mixiチェック』もはじまっている。ソーシャルグラフのユーザー獲得競争で、何馬身離れているんだ、みたいに感じてしまう。

なんだか考えれば考えるほど、「『Facebook』きてる! 超きてる!!」って本気でおっしゃっているんですか、というふうに問いかけたくなってしまうのだけど(特に『The Social Network』*3 がお正月映画で公開されるから、とか挙げていらっしゃる方には)、実際『Facebook』が日本でキャズムを越えるには、3点の障害があるように思える。

*3:映画『The Social Network』公式サイト
http://www.thesocialnetwork-movie.com/

1・携帯(ガラケー)に現時点で積極的でないこと

今どきそんなウェブサービスの方が少ないよ、やる気あるの? と、思っていたらひっそり対応していました。*4 なんで大々的に宣伝しないのだろ?? まじめに日本で三大SNSとガチンコする気なら10代~20代向けのコンテンツの充実を図ることが欠かせない。いうまでもなく、彼らはパソコン(PC)ではなく携帯を使っている。更にいうと、60代以上のボリュームゾーンも実は“ケータイ(らくらくフォン)世代”だ。

*4:『Facebookモバイル』
http://www.facebook.com/mobile/

2・ユーザーインターフェース(UI)が日本向けではないこと

例えば、『mixi』のインターフェースと、『Facebook』のインターフェースを比べてみてほしい。『mixi』の方が一つのページにおける情報量が多い。逆にいえば『Facebook』はコミュニケーションに重点を置いたUIなのだけど、それなら『Twitter』の方がさらにシンプルだ。そして、“ニュース”の項目がないことが“暇つぶし”のツールとしては致命的。『GREE』や『モバゲー』さえトップページに新着ニュースが配信されているのだ。

まぁ、結局日本人は、PCの場合『Yahoo!』が作り上げたポータルサイトのインターフェースに慣れすぎているし、ケータイでは3大SNSや『前略プロフ』などのトップページになじんでいる。そういう目で見ると、現状の『Facebook』のUIは帯に短したすきに長し、なんだよねぇ……。

3・実名主義&経歴主義なこと

『Tiwtter』の普及でだいぶ解消されてきたとはいえ、実名をいとう空気はいまだに強い。もっとも、日本だけじゃなく、欧米でも若者は「SNSに実名登録? はぁ? あんたバカァ??」といった感覚であるということを昨年の時点で『Geekなぺーじ』様が記事にしていらっしゃる*5 ので、今どき欧米ネット文化=実名主義と信じて、まじめに本名で『Facebook』に登録している皆様はちょっと立ち止まってよく考えてみた方がいい。

そして。経歴主義というのは、一流大学&レガシーカンパニーの優位性を示すためで、そのあたりの根本が揺らいでいる今の日本の社会状況からしてみれば、多くの学生にとっては、あまり好ましい“空間”じゃないんじゃないかしら、と感じる。このあたりは、今後の展開次第ではあるけれど、就活サービスとして『リクナビ』や『毎日就職ナビ』が強いところに食い込んでいけるかは未知数だろう。

*5:「アメリカのネットって本当に実名主義なの?」2009/11/10『Geekなぺーじ』
http://www.geekpage.jp/blog/?id=2009/11/10/1

そんなこんなで、いろいろと記してみたけれど、とどのつまり、『Facebook』オンリーなサービスがない、この一点に尽きる。

では、どうしてそういったウェブサービスを持ち上げる人たちがこれほどいらっしゃるのか、という話になるのだけど。

まずは広告・PR関係者にとっては新たな“ネタ”がほしいところですよね、というところだろう。うわさどおりビルコムが広告宣伝企画を一手に引き受けているとすれば、横から業界に広がるのは早いだろうし(こう書くと陰謀論ぽいですが)。コンピューター系出版社にしても、『Twitter』本ブームが一段落して、次の電子書籍本もそれほど広がりがないことを見ると、やっぱり新しいネタは欲しいところなのでは、と推察する。既に何冊か発売されているが、本番はこれからなのではないか。

そして、IT系ベンチャーの経営者の皆様からしてみれば、ネットビジネスが常に“アクティブ”であるように見せる必要がある。新しい箱庭はとりあえずいじってみる、という精神。アーリーアダブターでもある彼らの姿勢が日本のネットサービスの“ブーム”を駆動させている、といっても過言ではない。彼らがこのタイミングで飛びついたのは、9月末に『Facebook』の日本法人が広報活動を開始したため、というのも関係しているだろう。

というわけで、「だれ得?」という問いには、IT関係者&広告関係者&出版関係者でしょうね、という答えになるかな、と個人的に踏んでいるわけですが。もう少し広いレンジで見て、オープンソーシャル連合 vs 『Facebook』、という争いがどうなるか、ということの方がより根本的で興味深いところではありますが、この考察はお詳しい別の方に譲りたいと思う。

執筆: この記事はParsleyさんのブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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