コンテンツビジネスのリアル店舗型ビジネスの終焉(しゅうえん)を予感させる米最大のビデオレンタル ブロックバスターの破たん

ASSIOMA

今回は大元隆志さんのブログ『ASSIOMA』からご寄稿いただきました。

コンテンツビジネスのリアル店舗型ビジネスの終焉(しゅうえん)を予感させる米最大のビデオレンタル ブロックバスターの破たん
本日、大きなニュースが報道されました。*1
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ブロックバスターが数日中に連邦破産法第11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破たんする見通しが強まった。同社は約9億ドル(約760億円)の負債を抱えており、破産法を申請して、その後経営再建を目指す考えという。
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*1:「米ビデオレンタル最大手が破たんへ ネット普及で」2010/09/23『47NEWS』
http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010092301000165.html

■今年に入って、米レンタルビデオ大手 1位、2位が破たん
2010年2月3日に当時全米第2位の『ムービー・ギャラリー』も米連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請*2 しました。

*2:「米ムービー・ギャラリー:破産法適用を申請、07年に続き2度目」2010/02/04『Bloomberg.co.jp』http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90970900&sid=aFdpYmLC_mJU

今回のブロックバスターの破産申請が報道どおりに実行されれば、今年に入って全米1位、2位のレンタルビデオチェーンが破たんしたことになり、映像コンテンツ市場の“リアル店舗終焉(しゅうえん)”を予感させます。

しかし、そんな、リアル店舗を中心事業とした米ビデオレンタル最大手が破たんする一方で、同じ映画を取り扱ったサービスでも絶好調と言われている企業が存在します。

■飛ぶ鳥を落とす勢いのNetflix
『Netflix』。日本国内の方々にはなじみのない企業名かもしれません。それもそのはず、『Netflix』は現在、米国とカナダでしかサービス提供が行われていませんので、日本国内ではご存じなくても当然です。

この『Netflix』は、米国のネット経由でいつでも、好きなビデオを見ることができる“Video On Demand(VoD)”最大手の企業です。

会員数は約1500万人。人気の秘密は月額$8.99を支払えば、映画がいつでも、好きな時に何度でも観られること。パソコンがなくても、iPadやiPhoneでも閲覧できますし、ゲーム機でも視聴することができます。先日『Apple-TV』でも『Netflix』をサポート*3 することが話題になりました。まさに、ネット環境があれば、いつでも、どこでも、どんな機械を使っていても映画を楽しむことができる、日本人からすれば夢のようなサービスです。

*3:Apple-TV『Apple』
http://www.apple.com/appletv/

その人気を反映するように、『Alexa』の米国内トラフィックランキングでは22位につけ、『New York Times』や『Flicker』よりも上位にランキングされています。

■映像配信参入のうわさが絶えないAmazon
デジタルコンテンツという観点で忘れてはならないのが、電子書籍でトップシェアを誇り、インターネット通販最大手の『Amazon』。『Amazon』も「『NetFlix』に対抗して動画配信サービスを計画しており、米タイムワーナーなど複数のメディア企業に提携を持ちかけている」と報道されています。

■コンテンツのオンライン化へ向けて急速にシフトする米国
日本では音楽以外で実感することはありませんが、米国の報道等を見ていると、CD、DVD、書籍といったコンテンツビジネスは急速にオンライン化へ向けてシフトしているように感じます。

 ・音楽
  『iTunes』
 ・映像配信
  『YouTube』『Hulu』『Netflix』
 ・書籍、新聞
  『iPad/iPhone』『Kindle』『Nook』

米国は国土が広いというのも理由の一つだと思いますが、音楽を聞きたい、映画を見たいと思ってもリアル店舗で購入しようとすれば、移動の手間もありますし、郵送しようとすれば到着までの時間もかかります。しかし、ネットなら欲しいと思ったら一瞬で買える。しかも、大半の成功しているコンテンツ配信事業者の販売価格はリアル店舗等と比較して価格面でも安価になっています。

リアルパッケージを提供しようとすれば、物流コスト、テナント代、人件費様々な物が必要であり、そこを削減できた分、提供価格を抑え、顧客に還元するという当たり前の発想が、消費者に支持され急速なオンライン化を後押ししているのではないでしょうか。

■ネットインフラ世界一の日本。しかし、その上に流す物は“海外頼み”という現状
当ブログでも度々お伝えしている通り、日本の通信インフラは価格、速度、品質の観点で世界トップクラスの水準です。この世界一のインフラが更なる進化を遂げるために、光の道、周波数再編、インフラのあるべき姿が検討されています。

しかし、先日発表された総務省の日本国内のトラフィック動向では、集計以来初めてのアップロードトラフィックの減少が見られましたが、その原因が“P2P利用の減少”とコメントされています。

コンテンツビジネスのリアル店舗型ビジネスの終焉(しゅうえん)を予感させる米最大のビデオレンタル ブロックバスターの破たん

出典:総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒック総量の把握」

また、同じく同資料によると、国内ISP間でのトラフィックは減少、海外ISPとのトラフィックは上昇傾向にあるとのことです。これは、世界一のインフラが日本の消費者を『Twitter』や『Facebook』、『Youtube』等と結びつけるため“単なる土管”としてしか利用されなくなってきた兆候ではないかと感じます。

コンテンツビジネスのリアル店舗型ビジネスの終焉(しゅうえん)を予感させる米最大のビデオレンタル ブロックバスターの破たん

出典:総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒック総量の把握」

世界一のインフラがP2Pトラフィックの増減に左右され、単なる海外CPへの土管として利用されるような状況で、なんのための通信インフラ世界一なのでしょう。

日本のコンテンツ、特に漫画やアニメ放送は世界的に人気のあるコンテンツです。米国の“リアル店舗からオンライン配信へのシフト”を感じとり、この世界一のインフラを活かした“オンラインコンテンツ配信大国”として、世界に提供していくべきではないでしょうか?

放送局、出版社といったコンテンツホルダーの方々には、従来のビジネス形態に固執し、提供者側の視点でデジタル化、オンライン配信を検討する“やらなくても良い理由を探す検討”ではなく、時代の変化と消費者視点を考慮した“変化に対応し先手を打つための検討”を行っていただきたいと思います。そして、コンテンツ産業が、車と並ぶ日本の“輸出ビジネスの柱”になるような心構えで、“コンテンツ提供のあるべき姿”を議論してほしいと心から願います。

執筆: この記事は今回は大元隆志さんのブログ『ASSIOMA』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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