『アイドルマスター2』事件が象徴する何か

フューチャーインサイト

今回はgamellaさんのブログ『フューチャーインサイト』からご寄稿いただきました。

『アイドルマスター2』事件が象徴する何か
『Twitter』ではおもしろネタとして言及してしまった以下の事件ですが、いろいろ考え込んでいるうちにプラットフォームホルダーとしても、コンテンツプロバイダーとしても笑えない重い事件だな、と感じました。事件の経緯などは以下のまとめなどを読んでいただくとして。

「【男性ユニット参戦】『アイドルマスター2』騒動まとめ【メインキャラのリストラ】」 2010年09月18日 『はちま起稿』
http://blog.esuteru.com/archives/1006405.html

事件の経緯を見るに、おもしろおかしくあおっている人も多いと思うのですが、『アイドルマスター』のビジネスモデルというのは決してたくさんのソフトを購入させるというものではなく、一部の『アイドルマスター』を本当に好きなユーザーに、衣装などのアイテム課金で継続的にお金を払ってもらうことで成り立っているシステムです。

これは考えてみると今のソーシャルゲームのビジネスモデルとかなり一致します。ただ、『アイドルマスター』自体はコンシューマゲームであり、そのソフト自体も結構な額がしますし、『ニンテンドーDS』の『アイドルマスター』の売り上げなどを見るに、グラフィック重視の根強いユーザーが多いので、『XBOX360』で『アイドルマスター2』を出すという決断自体はこれまで支えてくれたファンのことを考えると決して間違った決断だとは思いません。

今回の件がなぜ今まで『アイドルマスター』を支えてくれたファンの逆鱗(げきりん)に触れたかを考えてみると、最近のコンテンツの性質の変化に関係があるのではないかと思います。

『アイドルマスター』というコンテンツが盛り上がった経緯として絶対に外すことのできないものに『ニコニコ動画』のMAD動画があると思います。『ニコニコ動画』の『アイドルマスター』MAD動画はバンダイナムコゲームスもほぼ公認であり、そこでの盛り上がりが『アイドルマスター』に良い影響を与えていたと思うのですが、この盛り上がりが『アイドルマスター』にコンテンツプロバイダー側が制御不可能な価値を与えてしまったのだと思います。

なんとなくこの話を読みながら、以下のid:kawangoさんのボーカロイド(以下、ボカロ) * 音楽のエントリーを思い出しました。

* :ボーカロイド
ヤマハ株式会社が開発した歌声合成ソフトウェア。『はてなキーワード』より
http://d.hatena.ne.jp/keyword/Vocaloid

*********
面倒くさくなってきたので重要なポイントを箇条書きする。
・ボカロ音楽は作曲家と歌手がひもづかない。
・(上記の理由で)ボカロ音楽は作曲家が主役である。アーティストのライブはコピーバンドであり、CDはカバーアルバムみたいなものになる。
・コンテンツ消費速度の早いネットにおいて、2次創作がボカロ音楽の寿命を長くしている。
・名曲をひとつの歌い手が独占できないので、歌い手の寿命も長くなる(だろう)
・ボカロ音楽の歌い手たちには商業音楽の世界へのあこがれはもはやない。
・ボカロ音楽の世界ではセルフプロデュースできるアーティストしか残らない。
*********
「商業音楽がボカロ音楽に勝てない理由」 2010年09月16日 『はてなポイント3万を使い切るまで死なない日記』から引用。
http://d.hatena.ne.jp/kawango/20100916

まぁ、簡単にいうと『アイドルマスター』というものは一種のボカロ音楽とおなじ属性を帯び始めており、コンテンツプロバイダーがその側面を見逃したというのが今回の事件の本質的な部分なのではないかと思います。

コンテンツはユーザーがあってはじめて成り立つものなので、制作者がどのような意図を持っていようが、ユーザがとった解釈こそがそのコンテンツの総合的なイメージ、価値となるという側面が最近強くなっている気がします。

これにより、コンテンツの変化の方向性を企業側が制御不能になりつつあり、ユーザーが期待する変化にコンテンツプロバイダー、プラットフォームホルダーが対応できなくなっています。『アイドルマスター2』の事件はプラットフォームホルダー、コンテンツプロバイダーが今後も直面していくだろう問題のような気がしました。

執筆: この記事はgamellaさんのブログ『フューチャーインサイト』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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