介護分野「資格要件」緩和、人手不足解消につながるか?
厚生労働省、介護職に従事する資格要件を緩和させる方針
介護分野における人材不足は慢性化しており、常に求人情報が飛び回っている状態です。有料職業紹介を行っている「ベストウェイケアサポート(大阪府豊中市)」では、有効求人倍率が10倍以上と、常に介護の人材が求められている現状を目の当たりにしています。
今回、厚生労働省より、介護人材不足解消のために、現状の研修制度を変更し、介護職に従事する資格要件を緩和させるという方針が出てきました。では、この研修制度を変更することで、人材不足は解消されるのでしょうか?
ふたつの「研修時間短縮」案が生む懸念点
平成25年4月から「ホームヘルパー2級」資格が、「介護職員初任者研修」へと名称変更されました。今年で2年目に突入しましたが、世間に浸透していません。むしろ「介護職員初任者研修」=「介護の仕事をしている人たちのための資格」と思っている人も少なくないでしょう。現実、この名称変更により、介護の資格を取得しようとする人が激減し、人材不足へ拍車をかけた形となってしまいました。
今回、この最短130時間の研修で取得できる「介護職員初任者研修」の研修時間を減らすという案がありますが、これでは既に資格を取得した人との整合性がとれなくなるばかりか、「内容が薄くなったのでは」という雇用者側からの懸念さえ出てきそうです。
そして、もうひとつの案として検討されているのが、「新たに研修時間の短い資格を設ける」です。「ホームヘルパー2級」時代には、実は「ホームヘルパー3級」という資格も存在していました(平成20年3月に廃止)。それが50時間で少し短いという議論があったため、新たに設けられる資格の想定される研修時間数としては70~90時間ほどになるでしょうか。
確かに、時間数が短くなれば、資格を取得する人は多くなるかもしれませんが、そうなると「介護職員初任者研修」と短時間研修の雇用における差別化など、これはこれで雇用者側を悩ませてしまうでしょう。また、短時間研修で介護の資格を取れる、となれば「介護職員初任者研修」受講者がさらに減り、結果的に人数は変わらない、という結果を招いてしまうことも考えられます。
「人材不足」=「研修制度の不備」は早計?
研修内容を見直し、より多くの人に介護職の門戸を広げていくことについては大いに賛成です。ただ、介護の人材不足が「資格が取りにくい」ということだけではないということを忘れてはいけません。そもそも論として、「なぜ介護分野には人が集まらないのか」を論じる必要があるでしょう。思い当たる節はたくさんあるはずです。
日本の高齢化における諸問題については、小手先の作業で良い方向へと風向きを変えることが難しいでしょう。10年先、20年先を考え、ひとつひとつの積み重ねで問題解消へ突き進んでもらいたいと思います。
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