シェアハウスみたいな企業寮「月島荘」。どんな人が住んでるの?

「月島荘」入居者のみなさん(写真撮影:榎並紀行)

企業の寮というと会社が一棟まるごと借り上げた建物で、若手社員が共同生活を営むものといったイメージ。ですが、最近ではそこから一歩進んだまったく新しいタイプの企業寮も登場しているようです。

そのひとつが今年1月に本格稼働がスタートした「月島荘」(東京都中央区)。企業向けの社員寮でありながらシェアハウス的な要素を取り入れ、さまざまな企業の社員が入居。他業種かつ多世代のビジネスパーソンが活発に交流できるとのことで、いわば毎日が異業種交流会みたいな感じでしょうか。

共用設備もキッチンダイニング、ジム、大浴場、シアタールーム、スタディルーム、ミーティングルームなどなど、ずいぶん充実しているということで、稼働当初からかなり話題を集めていました。あれから8カ月…、現在の月島荘はどうなっているのでしょうか?
その後の様子を取材してみました。20代の若手社員が、業界の垣根を越えて交流

今回現地をはじめて訪れてみて、まず驚いたのはその瀟洒(しょうしゃ)なたたずまい。
筆者の中の社員寮イメージを180度覆す、ハイソでモダンな建物がそこには建っていました。
え? これが寮なの?

生まれ変わったらこんな寮に住まわせてくれる会社に就職しよう。そう決意しつつ中に入ると、共用部のソファや中庭でくつろぐ入居者とおぼしき男女の姿がちらほらと見られます。みんな、年齢は24~25歳といったところか。思ったより若い印象です。

【画像1】商業施設のお洒落なテラス、といった雰囲気の中庭。奥にはキッチンダイニングがあり、入居者同士が仲良く料理をつくっていました(写真撮影:榎並紀行)

【画像1】商業施設のお洒落なテラス、といった雰囲気の中庭。奥にはキッチンダイニングがあり、入居者同士が仲良く料理をつくっていました(写真撮影:榎並紀行)

じっさいの入居率や男女比、年齢層はどんな具合なんでしょうか? 月島荘の事業主であるイヌイ倉庫の加藤貴子さんに聞いてみました。

「入居率は現状のところ1/3程です。全644室のうち、約210室が埋まっています。男女比は男性7割、女性3割くらいで、210名のうち7割が20代の方です。ご利用いただいている企業様は26社で、具体的な企業名はお教えできませんが、金融、電機メーカー、シンクタンク、流通など職種はさまざまですね」

やっぱり若手が中心なんですね。さまざまな業界に身を置く同世代が、ひとつ屋根の下で暮らす環境は刺激とやる気を与えてくれそうです。なんだかビジネス版のトキワ荘みたいじゃないか。

なお、企業視点でみても、月島荘に自社の社員を住まわせる利点はある模様。
その目論見はさまざまですが、とくに「異業種の社員とのふれあいの中でコミュニケーション能力を鍛えてほしい」という点の期待値が高いようです。

では、その「入居者同士の交流」はどの程度行われているのか?
聞けば、キッチンダイニングで他社の社員と食事会を催したり、クラスターと呼ばれる上下フロアの入居者同士で飲み会をしたり、同じクラスター同士でLINEのグループをつくって情報をシェアしたりと、少しずつながら関係を築いていっている模様。共用部を使ったヨガ教室を開催する入居者もいるなど、仲良くなるきっかけはいくらでもありそうです。

【画像2】取材当日は「秋まつり」が開催されていました。仲良く料理をつくってみんなで食べたり、来場者にふるまったりと、楽しそうでしたよ(写真撮影:榎並紀行)

【画像2】取材当日は「秋まつり」が開催されていました。仲良く料理をつくってみんなで食べたり、来場者にふるまったりと、楽しそうでしたよ(写真撮影:榎並紀行)

また、入居者同士のスキルや知識をシェアする機会もあります。たとえば、入居者それぞれが日々感じていることや仕事の専門分野にまつわる知識、活動していることの成果などをプレゼン形式でシェアする場を定期的に設けているそうです。
プレゼンする側にとっては自分の考えや活動成果を振り返り&アウトプットする絶好の場になりますし、聞く側にとっても知らない世界の知識を得る貴重な機会になるわけです。これは非常に意義深い試みではないかと思います。

ちなみに、この日も世界の人権問題や世界情勢についてなど幅広いテーマについて、3名のプレゼンテーションが展開されていました。

【画像3】堂々たるプレゼンテーションでした(写真撮影:榎並紀行)

【画像3】堂々たるプレゼンテーションでした(写真撮影:榎並紀行)入居者に聞く、「月島荘の暮らしってどう?」

入居者の方にもお話をうかがってみましょう。
まずは、人権問題を取り扱うNGO(非政府組織)に所属する吉岡さん。ここへは8月に入居されたばかりとのことです。

― ― じっさい入ってみてどうですか?
「こういう共同生活は初体験だったんですが、常に誰かがいて『帰る場所がある』という感覚が自分にとっては新鮮で魅力的ですね。月島荘のスタッフの方や入居者の方がご飯に誘ってくれたりしたので、最初からすぐ溶け込むことができました。ここではクラスターごとにFACEBOOKのページがあったり、各階に設置されたホワイトボードで情報共有できたりと、なかなか時間帯の合わない人同士もコミュニケーションがとれる仕掛けがあるので、コミュニティには入っていきやすいと思います」

― ― 異業種の方との交流もあるんでしょうか?
「はい、ありますよ。NGOに所属していると仕事でのつながりも同じ業界に限定されてしまいがちなのですが、ここでは一般企業にお勤めの方、しかも同年代とふれあう機会がいくらでもあります。フロアで一緒にご飯を食べてお話を聞くだけでも、すごく貴重だと思いますね。個人的にビジネス業界の方と仲良くなりたい気持ちもありますし、私が所属する団体も若い層の認知度は低いので、ここで情報をシェアすることによって世界の人権問題を同年代の方に少しでも知ってもらえたらという想いもあります」

【画像4】充実した暮らしぶりを語る吉岡さん(写真撮影:榎並紀行)

【画像4】充実した暮らしぶりを語る吉岡さん(写真撮影:榎並紀行)

続いて、金融機関にお勤めの勢田さん。4月に入居し、半年ほどが経つそうです。

― ― ここへは会社から勧められて入ったんですか? それとも自分の意思で?
「自分の意思ですね。会社の人事部が入居希望者を募っていて、それに立候補しました。私の会社からは私を含めて10人ほどが入居しています」

― ― 何か目的があったんでしょうか?
「もちろん交流目的もありますが、仕事に活かしたいという気持ちも強かったです。具体的にはリサーチですね。自分と同年代の方が一般的にどれくらい不動産知識を持っているものなのか、若い人は家を買う派と借りる派どちらが多いのかなど、雑談しながらもデータ収集をしています」

― ― ここに入居することで、会社側からも何かを期待されているんですかね?
「会社から具体的に何かを言われているわけではありませんが、やはり成長してほしいというのはあると思います。私自身も、一緒に入った自社の後輩には他業種の方とどんどん交流して刺激を受け、ひとまわり大きくなってほしいと願っていますので。おそらく会社もそう考えているのではないでしょうか」

ちなみに勢田さんの会社ではないそうですが、企業によってはここで生活する自社の社員に月1回のレポート提出を課しているケースもあるようです。やはり企業としてもこうした寮に社員を送り出す効果について、実験的な要素も含めて把握していきたいのではないでしょうか。

というわけで、稼働から半年以上が経った月島荘の様子を探ってみたところ、なかなかおもしろい動きがみられました。

とはいえ、それでもまだ「この恵まれた環境を活かし切れていない」と、反省を述べる入居者も。せっかくさまざまな分野の専門家が集まっているのだから、入居者同士の力を結集して世の中に何かを届けたいと意欲を燃やす声も聞かれました。それは新しい商品だったり、サービスだったり、あるいは社会貢献だったり…さまざま考えられますが、とにかく「何かおもしろいことをやりたい、できるはずだ!」という空気感はひしひしと伝わってきました。

果たして今後、ここからどんな可能性が生まれるのか? 月島荘のこれからに引き続き注目していきたいと思います。●月島荘
HP:http://www.tsukishima-sou.com/
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/10/09/70756/

【住まいに関する関連記事】ゴルフ好きのための設備や仕掛けが満載のシェアハウスが登場
つくるところから参加できるシェアハウス「ユウトヴィレッジ」
食べられるインテリア、生ハム原木がつくる食のコミュニケーション
マンガ・アニメ・ゲーム・イラスト好きが集まる「ドーミー三ノ輪Net」とは?
地方での定着はある?福岡「あまつ風」に見る地方で選ばれるシェアハウス

住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. シェアハウスみたいな企業寮「月島荘」。どんな人が住んでるの?

SUUMOジャーナル

~まだ見ぬ暮らしをみつけよう~。 SUUMOジャーナルは、住まい・暮らしに関する記事&ニュースサイトです。家を買う・借りる・リフォームに関する最新トレンドや、生活を快適にするコツ、調査・ランキング情報、住まい実例、これからの暮らしのヒントなどをお届けします。

ウェブサイト: http://suumo.jp/journal/

TwitterID: suumo_journal

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。