インターネットを活用した、ひきこもりのための株式会社の創り方(その3)
今回は末永匡さんのブログ『グニャラくんのグニャグニャ備忘録@はてな』からご寄稿いただきました。
インターネットを活用した、ひきこもりのための株式会社の創り方(その3)
この度、株式会社wktk(ワクテカ)という法人を設立いたしました。
30歳の誕生日に何か面白いコトをやろう!と思い立って、2週間くらいで法人設立にこぎつけました。あ、会社勤めは辞めてないし、辞めるつもりもないですよ、念のため。僕の勤め先は、そういうところに融通が利くところなのです。起業を促進してます。うんうん。
株式会社の作り方と、基本的な開業準備について、「ひきこもり気質でインターネット大好きな人」向けに情報を公開します。
世の中には、会社設立のガイドがあふれかえっています。重複することを書いても仕方ないので、本や他のサイトに載っていない情報を主に書いていきます。情報は2010年4月現在のものです。
インターネットを活用した、ひきこもりのための株式会社の創り方(その1)
https://getnews.jp/archives/59823
インターネットを活用した、ひきこもりのための株式会社の創り方(その2)
https://getnews.jp/archives/59836
(その2からのつづき)
銀行口座を作成する
ネット大好きならネットバンク!
小額資本金の法人が都市銀行にて口座を開設するのは、一種の“すわりの悪さ”を感じます。ネット通販で買った自転車を近所の自転車で防犯登録するような感じ。では、どこの銀行で口座を開設すればよいのでしょうか。
『ジャパンネット銀行』はどうでしょうか。
https://ssl3.topica.ne.jp/tgba1/index.html
『ジャパンネット銀行』で法人口座を開設する場合には、会社のウェブページ内容を審査されます。株式会社wktkみたいにふざけた内容のサイトだと、まず審査に落ちるでしょう。
『楽天銀行(旧イーバンク銀行)』の場合はどうでしょうか。
http://www.rakuten-bank.co.jp/transfer/lp/tg-top.html
『楽天銀行』では、他の銀行で法人口座を開いたあとでないと口座を開設できません。
『住信SBIネット銀行』では、口座開設の手続きがネットと郵便だけで済みます。ひゃっほーい!今回は、住信SBIネット銀行で口座を作成しました。
『住信SBIネット銀行』 法人のお客様
https://www.netbk.co.jp/wpl/NBGate/i900500CT/PD/co_client
さて、銀行口座開設の際には、“印鑑証明書”“登記事項証明書”に加えて、“定款の写し”が必要となります。電子定款のPDFを印刷したものは、厳密には“定款の写し”ではありません。しかし、多くの場合はPDFを印刷したもので代用できるようです。“ホンモノの電子定款の写し”を手に入れるのはちょっと面倒なのですが、本稿では触れません。
『日本電子定款作成センター』で電子定款を作成した場合には、“ホンモノの電子定款の写し”が2部ついてきました。大事に使いましょう。
FAX番号を取得する
家にFAXがあると邪魔ですが、法人ではFAX番号が必要となるケースも多くあります。『D-FAX』という便利なサービスを利用しましょう。このサービスを利用すると、FAX番号を取得することができます。FAXが送られると、その内容をTIFFファイルとして電子メールで送付してくれます。PDFを希望する場合には、オプションが必要です。
『D-FAX』
http://www.d-fax.ne.jp/
ただし、FAXが必須(ひっす)となる『ASKUL』の登録において、『D-FAX』の番号は登録することができません。残念ですね……。
『ASKUL』
http://www.askul.co.jp/?frameURL=%2F&storeId=1001&rtMode=affiliate&screenID=STATICSEO&langId=-10
会社のロゴを作る。
『Lancers』というサイトで、コンペ形式にてロゴの作成を依頼することができます。
http://www.lancers.jp/
株式会社wktkのロゴ製作は以下のように依頼しました。商標登録を行う予定がないので、既存のフォントの使用を許可しています。商標登録する予定があれば、その旨を依頼内容に書いておく必要があります。
http://www.lancers.jp/work/detail/5490
力作ロゴが多数提案されました。下記のリンクからご覧になれます。
http://www.lancers.jp/work/proposals/5490
freefrogさんの提案と、
inazumaさんの提案と、
どちらかの提案で悩んだ結果、freefrogさんの提案を採用させていただきました。
ロゴのデザインをお願いする場合、1点気をつけるところがあります。著作権のうち、“著作者人格権”は譲渡できません。“著作者人格権”のなかに“同一性保持権”があります。ロゴを使う場合に、用途に応じて少し改変して利用したい場合があるでしょう。このような改変が、同一性保持権によって禁止させる可能性があります。「少し改変して使うかもしれませんが、よろしいでしょうか」とたずね、ロゴデザイナーの方から了解をとっておくとよいでしょう。
『Lancers』では、仕事を頼むだけではなく、仕事を請け負うこともできます。iPhoneアプリの開発のお仕事など、プログラマー向けの案件も出ていました。プログラマーやデザイナーの方、登録どうでしょうか?
名刺を作る
法人で何かの契約を行う場合、名刺の提示が求められるケースがあります。携帯電話の契約や、『gree』の開発者アカウントの登録などですね。会社のロゴも作成してもらったことですし、それを活かした名刺を作成してみましょう。
名刺は、『SuperPrint』にて注文しました。会員登録時に、紹介コード「82944392」を入力すると、ずっと注文が5%引きになるので、入力を忘れずに。
http://www.superprint.jp/
さて、『SuperPrint』では、『Adobe Illustrator』のaiファイルで名刺データを入稿する必要があります。ここで、『Adobe Illustrator』を持っていない方に朗報があります。
『Adobe Adobe Creative Suite 4 Web Standard』の購入をオススメします。なんと今なら『Adobe Creative Suite 5 Web Premium』に無料でアップグレードできます。つまり、『Photoshop』と『Illustrator』がタダで手に入っちゃうわけです。
「Adobe Creative Suite 4 Web Standard 日本語版 Windows版(Creative Suite 5Web Premium への無償アップグレード対象)」『Amazon』 ※現在は販売しておりません。
http://www.amazon.co.jp/dp/B001JJCKEU/
名刺作成の際に気をつけることは、以下の点です。
・文字はアウトライン化しておく必要があります。
・カラーモードは、RGBではなくCYMKにする必要があります。TMNT じゃないよ!
・黒1色のモノクロの場合には、色のうちC/Y/Mを念のため0%にしておいてください。ディスプレイでの見た目は変わりませんが…
・カラー印刷の場合には、黒はC/Y/M 30%、K100%くらいにしておいてください。深みが出るらしいよ!
『Illustrator』の操作に慣れていなくても、それなりの見た目の名刺を作ることができる「ある操作」があります。それは、「文字と文字の間の詰め」を調整する操作です。テキスト編集中に Altキーを押しながらカーソルキーの左右を押すことにより、文字の詰めを調整できます。適当なフォントを選んで、文字を入力し、詰めを調整すれば、それなりの見た目の名刺が出来上がるのではないでしょうか。
会計ソフトで仕訳する。
会計ソフトとして、『弥生会計』を導入しました。
『弥生会計』弥生
http://www.yayoi-kk.co.jp/products/account/index.html
まず、発起人が立て替えた設立費用を仕訳しましょう。
設立費という勘定科目があるので、定款の認証にかかる仕訳などはすべて借方をコレにします。貸方は“未払金”でよいでしょう。
——
(設立費) xxx,xxx / (未払金) xxx,xxx
——
たまった“未払金”について、会社から発起人に銀行振込をして処理するもよし、
——
(未払金) xxx,xxx / (普通預金) xxx,xxx
(支払手数料) xxx / (普通預金) xxx
——
役員からの借入金として振り替えてもよいでしょう。
——
(未払金) xxx,xxx / (役員借入金) xxx,xxx
——
役員からの借入金について、借用書を書く必要はありません。気になる人は書いておくとよいでしょう。ただし、借用書を作る場合には収入印紙が必要となります。
設立費は会計的には繰延資産といって、5年間かけてジワジワと費用処理する必要があります(繰延資産は、勘定科目が3文字のは5年償却、5文字のは3年、という会計受験知識もありますねー……)。税法上は1年目で全額費用処理してOKなようです。
——
(営業外費用) xxx,xxx / (設立費) xxx,xxx
——
また、ずっと設立費を費用処理せずに、法人が黒字となった時点で費用処理することもできます。
今回は、設立費を繰延資産として扱い、費用処理しませんでした。どうせ売上たたないしね。
新設法人は、何の届出もしていなければ“消費税の免税事業者”となります。この場合、全ての仕訳は“税込”の額で行います。実は、儲(もう)からない法人を設立する場合には、消費税の課税事業者になったほうがお得です。払った消費税を還付してもらえるからです。今回は、届出が面倒だったので免税事業者のままにしました。
仕訳について、簿記の3級程度の知識はもっておくと便利です。ついでに資格取得はいかがでしょうか。簿記は楽しいですよ。この本を1冊しっかり勉強すれば、簿記3級は取得できるでしょう。
『10日で合格るぞ!日商簿記3級 光速マスターテキスト』 出版:東京リーガルマインド
http://online.lec-jp.com/defaultMall/sitemap/CSfLastGenGoodsPage_004.jsp?GOODS_NO=128234
必要なお金の総額
必要なお金の総額について気になる方がいるようなので、まとめてみました。筆記用具代・法務局への交通費・プリンタ代・インターネット通信費・パソコン代・ICカードリーダ代などは除きます。
法人設立登記までは、最低20万6000円 + 資本金 + 代表印代 のお金が必要となります。資本金1円、代表印が 1280円だと、20万7281円かかるわけですね。
項目 金額
電子定款認証 5万6000円
登録免許税 15万円
代表印 1,280円
資本金 1円
法人登記以降でかけたお金は、以下のとおりです。
項目 金額
登記情報の照会番号取得 465円
印鑑証明書 @500円x1 500円
履歴事項証明書@1,000円x1 1000円
定款の写しを税務署に送る切手代 80円
.co.jpドメイン代 (1年) 3000円
ロゴデザイン代 5万円
名刺 モノクロ 100枚 900円
D-FAX 2625円
というわけで、ロゴのデザインに5万円もかけても、総額 26万5851円で株式会社を作ることができました*1。
まとめ
以上のように、法務局に2回行くだけで株式会社を設立できます。設立日にこだわりがなければ、法務局に1回行くだけで済みます。事業の開始に必要な準備も、インターネット上で行えます。
ぜひ皆々さまのお役に立ちますことを。
ちなみに、法人名の最初の候補は“株式会社蟹工船”でした。もっと前向きな名前をつけようよ、と上司に諭されたのでした。そりゃそーだよな!
イブセマスジー!!
執筆: この記事は末永匡さんのブログ『グニャラくんのグニャグニャ備忘録@はてな』からご寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信
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