成功企業が共通して持っているものとは?

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成功企業が共通して持っているものとは?
 社会のニーズや流行に合わせながら、イノベーションを起こし続けていける企業があります。アップルやグーグル、日本ならば無印良品もそうでしょう。では、なぜ、こうした企業たちはイノベーションを起こし続けられるのでしょうか。

 その秘密は「コンセプト」にあると言うのが、ブランド・コンサルタントでクリエイティブ・ディレクターとしても活躍している江上隆夫さんです。
 江上さんの著書『無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか?』(SBクリエイティブ/刊)は世界のブランド作りの根幹である「コンセプト」について、その概念から作り方、使い方までを、これまでにないほど分かりやすく丁寧に解説している一冊です。
 新刊JPでは本書について、そして「コンセプト」の作り方について江上さんのお話をうかがってきました。今回はその前編をお伝えします。

■日本企業がイノベーションをもたらすために不足しているものとは?

――『無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか?』はどうして日本発のヒット商品が少なくなりつつあるのか、どのようにすればヒットが生まれるのかということがシンプルな形で提示されていて、非常に参考になる一冊です。
ただ、この「コンセプト」という言葉をしっかりと理解することが大事なのですが、コンセプトを広告業界の人や企画、クリエイティブに携わっている人以外に説明するのはかなり難しいのではないかと思いました。

江上:コンセプトを辞書で開くと「概念」と書かれています。でも、なんだか分からないですよね?僕自身も「コンセプトとは一体なんだろう」というのが、ずっと頭にありました。どの説明でもなかなかしっくりこなかったんです。ただ、経験的にコンセプトというのは一種の道具で、ぼんやり集まっている様々な要素を貫いてまとめる言葉なんです。
この本では、なかなか上手く説明できないなりに「目的を達成するための原理・原則を短く表現した言葉」として規定しました。でも、これだけでは分かりにくいというところで、豊富な具体例を載せています。この本は、誰でも作れるようにという前提で、コンセプトの作り方をひもといたものなんです。

――確かに本書には、タイトルになっている無印良品をはじめアップルやアスクル、スターバックスなどたくさんの事例が出てきますね。iPodの「1,000 songs in your pocket.」は非常に印象的なコンセプトです。でも、自分事になると難しくなります。

江上:僕はブランド・マネージャー認定協会というところでブランド作りを教えているのですが、ブランドのコンセプトを作るところで受講生の皆さんが躓いてしまうんです。コンセプトが上手く作れない、と。
本書では、コンセプトを作るための様々な方法の中から、一番オーソドックスなやり方を取り上げているのですが、基本からスタートするので、SWOT分析などマーケティングで普通に使われる手法もたくさん出てくるし、職種によっては当たり前のことが淡々と書かれています。広告業界の方や企画・開発部門ではない人がコンセプトを作れるようにする上で一番間違いない方法をピックアップしました。

――どのヒット商品、成長企業にも一言で言い表すことができるコンセプトがありますよね。その意味では、やはりどの企業でもコンセプトを作る力が必要だと思うのですが、これは広告業界の方々が得意としているコピーライティングに通じるものがあるように思います。

江上:それはあるかもしれませんね。得意かどうかは人によるけれど、コピーを作ることも大事な仕事の一つですから。

――江上さんはアサツーディ・ケイのご出身で、クリエイティブ・ディレクターとして活躍されていますが、具体的にコピーを考えたりアイデアを生み出したりするために、普段から訓練はされているのですか?

江上:僕らが「広告のアイデアを考える」のって、つまりは「切り口を考える」ということなんですね。広告の切り口、事業の切り口…コンセプトの、ある意味での分かりやすい言い換えでもありますね、切り口は。
もともと僕らは、こうした切り口を日常的にたくさん考えさせられるんです。一つのキャッチフレーズを考えるだけでも、切り口をまず10個くらい考えて、そのうちの1個の切り口ごとに10個ずつフレーズを作っていく。そうすれば100個フレーズができますよね。そういう訓練をしているので、逆に一番良い切り口はどれかということが、キャッチフレーズを出すことで分かってきたりもするんです。

――普段そういった仕事をしていない人にとっては、フレーズを作るのはかなり難しいのではないでしょうか。

江上:そうなんですよね。だから、本書ではそれとは逆の、文章を作って、そこから削ってコンセプトを作っていくというやり方を載せています。コピーライターはさっき言ったようなやり方をしますが、慣れていない人はこの本で書かれているやり方がやりやすいと思います。

――日本人はコンセプトを作りだすのが苦手だという指摘とともにあったのが、日本は「型」に従って物を生みだす文化が根付いているということです。確かに「動きが遅い」「イノベーションを起こしにくい」という傾向が日本の企業にはありますが、それも「型」に捉われ過ぎている部分が影響しているのでしょうね。

江上:「型」を覚えることは良いことなんですが、日本人は戦略的に動くのが苦手な傾向がありますよね。逆に欧米はコンセプトを作ったり、概念的に考えたり、さらに大きな戦略を描くのが得意だと思います。それはやはり、国と国が陸でつながっていて、山脈を隔てれば言葉や人種が違うという環境があって、その中でどう動くかという戦略を立てないと不利益を被る背景があるからでしょう。
ただ、日本人がまったく戦略を作れないかというとそうではなく、織田信長も徳川家康も戦略を持っていたと思うんです。ただ小さな島国だから、戦略的に動かなくてもなんとかなってきたんではないかと思います。

――日本においても、「大きな戦略」を考えられた人が、偉業を達成してきた、日本を変えてきたという側面もありそうですね。

江上:確かに、それはあるでしょうね。

――本書では豊富な事例が載っていますが、書籍タイトルをはじめとして、表紙のイメージも事例の一つである無印良品がフィーチャーされているのはなぜなのですか?

江上:これは編集者と相談した上でこのような形になりました(笑)無印良品は昔から広告業界の中でも注目されていて、成功しているブランドとして有名でしたから。
コンセプトの作り方を解説している本ですが、「コンセプト」をタイトルで使ってしまうと誰も手にとってくれなくなるのではないかということで、誰でも知っているブランドをタイトルに入れることになったのです。

――本のタイトルもコンセプトですよね。『無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか?』というのも一つの切り口ですし。

江上:一種の戦略ですよね。実は、僕はこのタイトルでいいのか最後まで悩んでいて(笑)僕の出したタイトルには「コンセプト」という言葉を入れていたのですが、知り合いの作家さんにもアドバイスをいただいて。今ではこのタイトルで良かったと思っています。

――江上さんは現在、ブランド・コンサルタントとしてご活躍されていますが、どうしてその道に入ったのですか?

江上:先ほども言いましたけど、僕はアサツーディ・ケイの出身で20年近く勤めていたのですが、クリエイティブ・ディレクターの仕事って、クライアントの課題を広告で解決したり、コミュニケーションの施策で解決するということなんですね。それって、実は半分、ブランド・コンサルタントの仕事でもあるんです。だから、これまでやってきた仕事の発展形と言えます。

――仕事の中で様々なクライアントさんのお話をうかがうと思うのですが、ブランドを立ち上げる際に、「こうあるべき」「こうなんだ」という思い込みが必ずあると思います。その思い込みをどのように外していくのですか?

江上:そうですね、思い込みはあります。そのときは、一つは客観性に基づいた新しい切り口をいくつか提示します。あとは、ブランディング・セッションといって、例えば小さい企業ならば、その経営者の幼い頃からのストーリーを全部掘り起こしていきます。

――人となりを掘り下げていくのですね。

江上:経営者の人となりがベースになって企業はできています。それを聞いておかないと、切り口を考えることも難しいですし、ブランドの全体像も整理できないんです。想いを聞くことは大事ですね。

(後編に続く)



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