日本のビジネスマンが気づくべき3つの“時代遅れ”

日本のビジネスマンが気づくべき3つの“時代遅れ”
 テレビなどで活躍中の経営コンサルタント・宋文洲さんの著書『新版 やっぱり変だよ日本の営業』(宋文洲/著、ダイヤモンド社/刊)は、IT技術の変化についていけず取り残された日本企業の“悪しき風習”をあぶり出し、科学的経営手法を提唱する一冊です。

 実は本書、『新版』とあるように12年前に出版され、12万部のベストセラーとなった『やっぱり変だよ日本の営業』(日経BPコンサルティング/刊)を全面改訂したもの。
 なぜ今あのベストセラーが帰ってきたのか。帰ってこざるを得なかったのかは、本書「新版へのまえがき」を読むだけでも明らか。スマートフォンやタブレット端末、クラウドサービスといった最新のIT技術がこれだけ発達したにも関わらず、日本企業がいまだにそれらを使いこなせていないことに本書は改めて警鐘を鳴らしています。
 前時代的で非効率的な営業手法。そこには日本のビジネスマンが気づくべき3つの“時代遅れ”が潜んでいます。

■「よいモノだから売れる」時代ではない
 「よいモノだから売れる」。この“よいモノ”信仰は今でも見受けられます。そして、「モノがよいのだから、売れないのは営業努力が足りないせいだ」という議論になりがちです。
 モノのなかった時代、営業マンは営業活動を強化すればモノが売れました。モノも知識もなかった顧客にとっては、営業マンが足しげく通うことにも意味があり、懐に余裕のあった顧客は馴染みの営業マンに情を移して購入を決めることもあったでしょう。しかし、今、市場の性質は変わったと宋さんは指摘します。その結果、大量の「よいゴミ」を生産し、自ら「何がよいか」「なぜよいか」を問う能力と手法を持たない「裸の王様」が率いる「裸のモノ作り企業」ができてしまったのです。
 「よいモノ」と「欲しいモノ」は違います。いくら「よいモノ」でも、「欲しくないモノ」を強引に売ろうとすると、クレームが殺到します。その結果、コストが掛かり、利益も出ない悪循環を招いてしまうのです。ITが発達したこの時代、情報は消費者の方が持っているということを知って、「裸のモノ作り企業」の営業をやめるべきなのです。

■「お客さまは神様です」の時代ではない
 「よいモノだから売れる」という信仰とともに、「お客さまは神様です」という思想も、いまだに続いています。しかし、宋さんは「この言葉は、売る側の立場に立って考えても、買う側の立場に立って考えてもおかしい」と言います。
 まず、売る側の立場に立って考えれば、ノルマ制度を廃止すべきです。神様の意志を無視して信者が勝手に数字を決め、神様にモノを売りつけているようなものであり、これは神への冒涜です。
 続いて、買う側の立場に立って考えれば、ほどよい気遣いは嬉しいものの、過剰な勧誘や押し売りは迷惑になるだけ。さらに、値段を上乗せされて買うことを要求されれば、誰も良い気分になりません。
 これは言うなれば、営業マンが顧客のことを「神様」と思うどころか、「餌」としか考えていないということ。本来は「顧客の身になって考える」という心構えがベストですが、「お客さまは神様です」という信仰にとらわれていると、その心構えを持つことができないのです。

■「営業は足で稼ぐ」という時代ではない
 より多くの顧客を見つけるために、顧客との接触は必要不可欠。接触の量が顧客の数へつながり、売り上げにも反映されます。これ自体の考え方は正しいといえます。
 しかし、インターネット技術が発達した昨今、「とにかく人に会う」ことをしなくても、情報を手に入れられるようになりました。特定のソフトを使って検索すれば住所や業種をはじめ、様々な法人データを手に入れられるようになったのです。
 「足で稼ぐ」ことを信奉している営業マンがこれまでやってきた「訪問件数を増やすことでモノが売る」という時代は終わり、ITを利用してより効率的に動くことが求められていることに、日本の企業はすぐに気づくべきなのです。

 内容がバージョンアップされているとはいえ、宋さんが12年前と同じ提言をしなければいけないということは、その間、いかに日本企業の営業の現場が成長しなかったかを表しているはずです。
 精神論や根性論が根強く残る中、そういったものが足かせになっていることを認め、より効率的な営業活動にシフトしていくことが、他の企業と差をつけるために必要になります。そのために、本書は大いに参考になることでしょう。
(新刊JP編集部)



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