日本経済の現状

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日本の現状はかなりきびしいですね。困難な中で日本の産業が発展していく道を見つけることはできるのでしょうか。今回は青木理音さんのブログ『経済学101』からご寄稿いただきました。

日本経済の現状
経済産業省が公表しているスライドがよく出来ているのでここでも紹介。日本が抱える問題とここに至るまでの経緯が丁寧に解説されている。ではどうしたらいいのかという部分になると急に説得力がなくなるが、日本語だし全部読む価値はあるように思う。特に興味深いグラフを幾つか抜粋する。

「日本の産業を巡る現状と課題」 平成22年2月 『経済産業省』
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100225a06j.pdf

主要国の家計貯蓄率の推移

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まず各国の貯蓄率の推移だ。日本は貯蓄率が高く、アメリカは借金だらけというイメージを持つ人が多いと思われるが、日本の貯蓄率はアメリカを下回っている。高齢化や社会保障によって貯蓄率が下がるのはしょうがないが、それにしても衝撃的な数字だ。
(編集部注:2009年のデータではフランス、ドイツ、イタリアは10~15%の範囲に収まっているが、米国や日本は0~5%の範囲にあり、日本は更に米国を下回っている)

労働分配率の国際比較

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最近、株主主権の問題と絡めて話題となった労働分配率だがここでも日本は英米独仏などよりも高い水準を保っている。特にドイツが一番低いのは興味深い。
注:労働分配率=雇用報酬/国民所得=(一人あたり雇用者報酬×雇用者数)/(物価×実質GNP)=実質賃金×労働生産性

今後、国内の生産機能、開発機能、研究機能、本社機能を海外に移転するか。

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企業の海外移転に関するアンケート結果だ。多くの企業が生産機能移転を決定ないし検討しているとのこと。生産コストを考えればその流れは当然だろう。日本で働く人は開発・研究・本社機能で能力を発揮出来るようにならないと厳しい。
(編集部注:開発機能の移転を検討している会社は30社、研究機能は8社、本社機能は4社と低いが、生産機能の移転を検討している会社は90社、移転を検討していない会社は84社と多く、そして同様の数となっている)

日本の都道府県別将来推計人口(平成19年5月推計)

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こちらは三大都市圏及び地方の人口推移だ。全体に人口が減っていくものの、相対的に地方での人口減少が深刻となる。
(編集部注:2005年~2020年の予想では首都圏の増減率はわずかに増加、名古屋圏、大阪圏、地方圏は減少、2005年~2035年の予想では首都圏も含め増減率は減少となっている。地方圏は特に減少が大きい)
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特に地方圏では、今後急速に人口減少。地域経済の立て直しが深刻な課題。
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「日本の産業を巡る現状と課題」 平成22年2月 『経済産業省』より引用

とはいえ、既に莫大(ばくだい)な予算をつぎ込んでいる地方経済をどう立て直すというのだろうか。

失業率の推移

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実質失業率は急激に伸びている。日本の比較的低い完全失業率は企業による抱え込み=保蔵によって維持されているに過ぎない。
(編集部注:2008年に比べると2009年1~3月では失業者数(失業率)はほぼ倍増し、潜在的な失業者数は905万人、潜在的な失業率は13.7%となっている)

G5の労働生産性の推移

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当然これだけの余剰人員を抱えていれば労働生産性で他国に引けをとるのは当然の帰結だろう。
(編集部注:労働生産性の国際比率は英国、米国、フランス、日本、ドイツの順となっている)

G5の1人当たり雇用者報酬

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企業内部で再配分が行われているような状況であり、雇用者報酬も伸び悩む。国境を越えられるような人材の確保はますます難しくなりそうだ(こっちも購買力平価だよね?)。
(編集部注:英国、米国、フランスは上昇しているが、日本は伸び悩んでいる(ドイツは下降))

法人課税負担率実績

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では日本の問題は何か。まず挙げられているのが実効法人税率の圧倒的な高さだ。どこの国で始めても良いような産業があえて日本を選ぶことはないだろう。もうかりそうであるほどそうだ。運輸に関する費用も高く事業コストが足かせになっている状況が分かる。
(編集部注:日本の法人税率は39.2%と諸外国に比べて圧倒的に高い。米国、英国、フランス、ドイツも29~31%の範囲に収まっている。台湾、シンガポールは13%台)

各国証券取引所における外国会社上場数の推移

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資本市場としての魅力もない。シンガポールの躍進をみればアジアでの地位は完全に失われたといっていいだろう。
(編集部注:1996年、2002年、2008年の推移。東京+大阪市場は1996年も100を切るかなり低い数値だったが、年を追うごとに減少している。シンガポール市場は1996年は50を切る低い数値だったが、2008年には300を超え、大幅に増加している)

資料では、これらの経緯・現状を踏まえた上でさらなる産業政策の重要性が強調されているが、現状はその産業政策の失敗ともとらえられる。まずは企業活動がしやすい環境を整え、国内での競争を促進することで生産性を上げることが重要だろう。そうすることで、政府が成長産業を決め打ちしなくても、優秀な産業が競争に生き残る。

結論部分こそ微妙だが、全体として非常によく出来た資料なので、時間のある時にでも是非読んでみてほしい。

執筆: この記事は青木理音さんのブログ『経済学101』より寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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