メディアによる悪質な偽造編集は罪に問われる?

偽造編集の罰則は放送法上、定められていない

メディアによる悪質な偽造編集は罪に問われる?

不適切な演出があり、フジテレビの人気バラエティー番組「ほこ×たて」が終了することになりました。このことが物議を醸しています。刑法では通貨、文書、有価証券、印章に関する偽造を罪とする規定はあるものの、映像編集を偽造した際の処罰規定は置いていません。テレビ放送は放送法に主な規定が置かれており、編集については放送法4条3号で「報道は事実をまげないですること」とされています。

しかし、これに違反した場合の罰則は放送法上、定められていません。そのため「偽造編集」として直接罪に問うことは難しいでしょう。ただし、編集の過程で意図的に犯罪の教唆(きょうさ)や幇助(ほうじょ)を行ったり、報道内容が名誉棄損罪等に当たったりすれば、その内容によって処罰されることはありえます。

放送局に電波停止の行政処分が発動されたことは過去にない

なお、放送法では、総務大臣によって認定又は登録されることで放送事業を行うことが可能となります。この認定・登録を取り消されることもありうるのですが、その取消事由に関しては、「正当な事由なく一定期間休止した」「不正な手段により認定等を受けていた」としており、編集過程での内容の偽造は含まれていません。

以前、関西テレビ「発掘!あるある大事典2」で「やらせ問題」が発覚した後に総務大臣からの行政指導で最も重い「警告」が伝えられ、再度の放送法違反には「法令に基づき厳正に対処する」とし、電波法に基づく電波停止の行政処分に言及したとされています。ただ、放送局に電波停止の行政処分が発動されたことは過去になく、偽造編集にも当てはまるのかという問題があります。

放送倫理検証委員会に強制力はなく、自浄機能に期待

法令上の罰則の適用がない場合、その後の措置として考えられるのは放送倫理検証委員会の審理にかけられることです。放送倫理検証委員会とは放送界の自浄機能を確立し、視聴者に信頼される放送を維持すると共に、表現の自由を守ることを目的としています。問題ありと指摘された番組について、取材・制作のあり方や番組内容について調査し、放送倫理上の問題の有無を審議・審理。その結果を公表する機関です(※「放送倫理上問題がある」と指摘された番組は審議、「内容の一部に虚偽がある」と指摘された番組は「審理」となる)。

同委員会は、国家のように罰則を科せるほどの強制力を持つ機関ではないため、業務の停止や罰金を科すなどはできません。放送局は、国民の知る権利に奉仕する重要な機関です。また、その影響力は多大です。有意義な放送とするためにも、その自浄機能に期待したいところです。

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