アメリカで活躍する日本人起業家が見た“日本人”
米国オバマ大統領から一般教書演説にゲストとして招かれた日本人がいる。
アメリカで医療機器開発製造会社を起業した藤田浩之氏だ。藤田氏はどのような半生を送り、どのような考えを持っているのだろうか。
藤田氏が著した『道なき道を行け』(小学館/刊)では、アメリカ発・世界相手でも熱い「日本流」を貫く藤田氏の多くの魅力的なエピソードが語られている。
藤田氏は、1998年、米国ケース・ウエスタン・リザーブ大学物理学博士課程修了し、米GE(ゼネラル・エレクトリック)を退社後、2006年、医療機器開発製造会社クオリティー・エレクトロダイナミクス(CEQ)を設立した。CEQは、今や医療の現場に欠かせない存在となっているMRIの心臓部である、人体を磁場で励起し生じた信号を検知し、画像化するラジオ周波数送受信コイルと呼ばれる製品を開発・製造し、世界各国のメーカーに供給している。
ビジネスは順調に成長し、2009年に『フォーブス』誌が選ぶ「アメリカでもっとも有望な新興企業20社」に選ばれ、徐々にアメリカで注目を集めてきた。そして、2012年1月24日、米国オバマ大統領一般教書演説にオバマ大統領とミッシェル大統領夫人から全米から選ばれた21名の1人として招待されることになる。
このような経歴を持ち、アメリカで起業し、経営者となり、アメリカに拠点を置く藤田氏は、外側から見た日本をどのような思いで見ているのだろうか。
藤田氏が帰国するたびに尋ねられるのが日本人の英語力の問題だという。藤田氏は、究極的には人間同士の交流に言葉の問題は存在しないと語る。生き方、仁義、正義感というのは、英語が流暢だろうと、人より多くの英単語を知っていようと、本質的には影響を受けない。むしろ態度で示すほうが、よほど有効なのだ。
現実問題として、欧米とは異なる日本固有の文化や生活様式、価値観を持つ日本人が英語を習得することは大変困難なこと。なぜなら言葉はその国の固有の文化価値観に裏打ちされたものだからだ。表面的な言葉そのものの意味あいと、文化や生活から来る深い意味あいといったものの両方を学ぶ必要があるのだが、日本人が起こしがちな間違いは、日本人が持つ思考をそのまま英語に置き換えてしまうところから生じる。
では、英語が苦手な日本の企業の役員や幹部にとって、英語を使うビジネスの場面での交渉はどうすればいいのか。自己紹介やあいさつくらいは勉強し、英語でした方がいい。しかし、ビジネスの現場では不必要に強い印象を与える英単語を無意識に使ってしまったり、相手の信頼を失ったり、威厳を失ったりする心配をしないために、信頼できる最高の通訳を連れて行くのがいい。むしろ、その方が、相手に対しても「準備ができている」という好印象を与えるし、交渉事が込み入ってきても、不安を与えることはないからだ。
長くアメリカで暮らす藤田氏は、むしろ離れている時間が長くなるほど、自分が日本人であることの意味や意義を考えるという。日本にいては、見えていないものがわかる一冊だ。
(新刊JP編集部)
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