【住宅の補助金制度】戸建注文住宅契約者調査でわかる、建築費や地価の上昇影響は?減税や補助金が大きな動機付けに!
住宅生産団体連合会が実施した「2024年度 戸建注文住宅の顧客実態調査」の結果が報告された。近年の建築費上昇の影響が見て取れるなか、減税や補助金などへの期待も高いことがうかがえる結果だ。詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「2024年度 戸建注文住宅の顧客実態調査」結果を報告/(一社)住宅生産団体連合会
建築費や住宅取得費の増加が続き、自己資金や借入金も増加
この調査は、三大都市圏と地方都市圏において、2024年度中に住宅生産団体連合会の住宅メーカーと契約した人が対象で、調査票は各社の営業担当者が記入している。2024年度の今回は、第25回目となる。
まず、注文住宅を建てた人の属性を見ていこう。世帯主の平均年齢は40歳程度で、世帯年収は1000万円超、子どものいる家族が主体というのが、ここ数年変わらない平均像だ。
戸建注文住宅の平均顧客増の変化(出典:住宅生産団体連合会「2024年度戸建注文住宅の顧客実態調査結果の要約及び考察」より転載)
一方、変化に着目すると、目立つのは「建築費」および「住宅取得費(建築費と土地代の合計)」の上昇だ。近年の地価や建築費の上昇を受けた形だ。取得費用の上昇によって、「自己資金」を増やしたり「借入金」を増やしたりしている様子がうかがえる結果となった。
なお、「古家解体・新築率」(28.8%)というのは、所有する土地に建つ家を解体して注文住宅を新築する、いわゆる「建て替え」率ということだ。今は、土地の取得と合わせて注文住宅を建てる人の方が多いということがわかる。
また、建てた住宅は、2階建て、延床面積が122.5平米程度というのが平均像だが、「平屋建て」が年々増加している点にも注目したい。
住宅の階数(出典:住宅生産団体連合会「2024年度戸建注文住宅の顧客実態調査結果の要約及び考察」より転載)
減税や補助金などの優遇制度が住宅の性能に大きく影響
住宅の取得費用が上昇するなか、期待が大きいのが減税や補助金だろう。こうした制度が住宅取得の動機付けにどの程度効果があったのかを見ていこう。
税制特例等による住宅取得の動機付けへの効果(出典:住宅生産団体連合会「2024年度戸建注文住宅の顧客実態調査結果の要約及び考察」より転載)
いずれの優遇制度も動機付けの効果は高いが、なかでも効果が高いのは、「住宅ローン減税」と「子育てエコホーム・子育てグリーン住宅支援事業」だ。前者は利用対象者が多いこと、後者は補助金の額が大きいことに理由があるだろう。
「住宅ローン減税」は、新築の場合、年末のローン残高の0.7%を13年間にわたり減税するもの。現行の省エネ基準に適合している住宅 < ZEH水準の省エネ住宅 < 長期優良住宅等 で控除限度額が増えていく。また、子育て・若者夫婦世帯なら、控除限度額が上乗せされる。今回の調査では、81.0%が住宅ローン減税の適用を受けていた。
なお、住宅ローン減税は2025年末までの措置となっていたが、与党は税制改正大綱で、住宅ローン減税の5年延長、中古住宅の控除額拡充などを盛り込む検討をしている。
補助金の制度は毎年度変わる点に注意
「子育てエコホーム支援事業」(注文住宅の場合)は、子育てまたは若者夫婦世帯が対象で、交付申請期間が2024年4月2日~2024年12月31日まで、「長期優良住宅」で100万円、「ZEH水準住宅」で80万円までの補助金が出たもの。
その後継事業となる「子育てグリーン住宅支援事業」(注文住宅の場合)は、交付申請期間が2025年5月14日~2025年12月31日(予算に達するまで)まで、「GX志向型住宅」で160万円、「長期優良住宅」※1で80万円※2、「ZEH水準住宅」※1で40万円※2までの補助金が出る。
※1 子育てまたは若者夫婦世帯のみが対象
※2 古家の除却が伴えば20万円を加算
このように、年度ごとの予算に基づく補助金の制度は、それぞれで条件や補助額が変わる点に注意したい。ちなみに、2026年度は、「子育てグリーン住宅支援事業」の後継事業となる「みらいエコ住宅2026事業」が予定されているが、今年度より補助額は抑えられる内容だ。
また、調査の選択肢で2つの制度が併記してあるのは、調査対象者の建築時期によって、利用可能な補助金制度がどちらかだった、ということだろう。
計画している住宅の省エネ性能水準(予定を含む)を聞くと、今回の2024年度の調査で選択枝に追加された「ZEH水準を大きく上回る省エネ住宅」つまり「GX志向型住宅」が27.1%を占めた。対象が子育て・若者夫婦世帯に限定されないこと、補助金の額が高額なことなどのメリットがあるので、住宅の性能をここまで引き上げた人が多かったと考えられる。
計画住宅の省エネ性能水準(予定を含む)(出典:住宅生産団体連合会「2024年度戸建注文住宅の顧客実態調査結果の要約及び考察」より転載)
ちなみに、それぞれの違いについて、細かい基準を説明すると専門的になるので簡単に説明しておこう。
「ZEH(ゼッチ)水準」:「断熱等性能等級5」かつ「一次エネルギー消費量等級6」を満たすことが必要。政府は2030年までに、現行の省エネ基準を「ZEH水準」に引き上げる予定。
「GX(グリーントランスフォーメーション)志向型住宅」:ZEH水準を大きく上回る省エネ性能の住宅で、環境負荷の低減と快適な住環境の両立を目指すもの。
「長期優良住宅」:省エネ性能はZEH水準と同程度だが、長く快適に住める住宅として、「構造躯体の劣化対策、耐震性、可変性、維持管理・更新の容易性、バリアフリー性、省エネ性」など、多くの性能について一定レベルが求められる。
ZEHにしなかった理由にも補助金の制度が影響!?
ZEHについては、ほかにも補助金の制度がある。新築一戸建てでいえば、「戸建住宅ZEH化等支援事業」もある。2025年度はZEHなら55万円、より水準の高いZEH+なら90万円に加え、追加設備に応じた補助があるもの。
補助金の手厚いZEHだが、調査結果で「ZEHの検討の有無」を見ると、「ZEHにした」は43.8%にとどまり、「検討は行ったが、ZEHにしなかった」という回答も17.5%あった。
ZEH検討の有無(出典:住宅生産団体連合会「2024年度戸建注文住宅の顧客実態調査結果の要約及び考察」より転載)
では、なぜZEHにしなかったのだろう。その理由を見ると、補助事業との関わりが見えてくる。
補助金を受けるには、登録された事業者に依頼すること、事前に申請してから工事に着手すること、中間報告や終了報告が必要となることなど、さまざまな手順が必要で、時間もかかる。それによって、希望の入居時期に間に合わないなどの不都合が生じる可能性がある。
また、省エネ性能が高いほど建築コストも高くなる。補助金のバックがあっても、性能向上の費用が高いと感じる場合もあるだろう。
ほかにも、寒冷地で太陽光が少ない豪雪地域などで、所定の条件を満たすのが難しい場合があるなど、さまざまな要因によって補助金が受けられないという事態が起こりうる。
ZEHにしなかった理由(複数回答)(出典:住宅生産団体連合会「2024年度戸建注文住宅の顧客実態調査結果の要約及び考察」より転載)
減税や補助金が適用されるには、さまざまな条件をクリアする必要があることも、頭に入れておきたい。
さて、注文住宅では、住宅の性能や間取り、設備などで施主の意向が強く反映される。性能や仕様を上げれば費用も増大するので予算の管理も必要となり、全体のスケジュールを管理することも必要になる。加えて、減税や補助金の適用を受けるかどうか、適用条件などを把握する必要もある。選択肢が広いということは、判断する観点も多いということを、知っておくとよいだろう。
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