【ライブレポ】矢沢永吉、50年走り続けてきたからこその壮観な景色「俺まだずっと歌ってるからヨロシク!」

【ライブレポ】矢沢永吉、50年走り続けてきたからこその壮観な景色「俺まだずっと歌ってるからヨロシク!」

矢沢永吉が、〈EIKICHI YAZAWA LIVETDO It!YAZAWA 2025〉ツアーファイナル公演を、2025年12月20日(土)神奈川県・ぴあアリーナMMで開催。集まったファンを前に渾身のパフォーマンスを見せて、ソロデビュー50周年アニバーサリーイヤーのツアーを締めくくった。

11月に行われた東京ドーム2daysからスタートしたこのツアーは、12月10日、12日、13日の日本武道館公演(通算160回を達成)を含む国内7ヶ所全15公演で行われ、ついにこの日ファイナルを迎えた。矢沢のサクセスストーリーの原点ともいえる横浜でのツアーファイナルということもあり、会場は開演前からとてつもなく異様な盛り上がりを見せていた。

【ライブレポ】矢沢永吉、50年走り続けてきたからこその壮観な景色「俺まだずっと歌ってるからヨロシク!」

開演のアナウンスから暗転すると、ステージバックの巨大なビジョンの映像でバンドのメンバーが次々と映し出される。バックに流れる曲は「GET UP」だ。東京ドームのライブ映像で煽りに煽るオープニング映像から、サングラス、コート、紺色のスーツに黒いシャツを着た矢沢がステージに上がり、怒涛の拍手で迎えられた。何度も繰り返されるイントロのメロディから、サングラスを外してマイクスタンドを掴み歌いだした曲は「さまよい」だ。客席を見据えて歌う矢沢。感情を抑えるように淡々と刻むギターリフが、わけありそうな関係を描いた曲の世界を見事に表現している。間奏で2人のギタリスト、トシ・ヤナギ(Gt)とジェフ・コールマン(Gt)がビジョンに映しだされ、ジェフがフライングVでソロプレイ。矢沢はハンドマイクを持ち「Oh,Oh,Oh,Oh」とコーラスして、圧倒的求心力のオープニングを終えると「ファイナル、ようこそいらっしゃい!いまから2時間、一緒にいこうぜ!」と客席に向かって両手を広げた。

【ライブレポ】矢沢永吉、50年走り続けてきたからこその壮観な景色「俺まだずっと歌ってるからヨロシク!」

ツインギターのイントロから、かなりハードアレンジな「テレフォン」で早くもマイクターンを決めて、ドッと歓声が沸き上がった。トシのブルージーなリフからガイ・アリソン(Key)の寂しげなシンセが導いたのは「さめた肌」。〈何故それなのに いま沸き上がる〉とこみ上げるメロディラインはこれぞ矢沢節といった旋律で、1番を歌い終わると拍手が湧き起こった。さらにスネーク・ディヴィス(Sax)によるサックスソロが哀愁を誘う。アリソンのブギウギピアノから始まった「恋の列車はリバプール発」では、ホーンセクションが登場して派手なサウンドに乗せて生き生きと歌い、「フォー!ロックンロール!」と叫んだ矢沢に、両手を掲げて手拍子を送るファンたち。

MCでは、「「恋の列車はリバプール発」、タイトルが古くていいね!矢沢がまだ20代の時の作品です」と語ると、ツアーファイナルについて「相撲とかお芝居なんかで千秋楽って言うんですけど、ロックは似合わないね、千秋楽。今年のファイナルステージ。どこまでできるかわかりませんけど、俺まだずっと歌ってるからヨロシク!」と、力強く宣言して拍手喝采となった。

MC明けには、6年ぶり35枚目のオリジナルアルバム『I believe』から、「あれから10年」「誰のため」の2曲が披露された。「あれから10年」は跳ねたリズムと美メロ、抒情的なムード漂うミディアムバラードで、トシのエモーショナルなソロも光った。「誰のため」
では、冷たさを纏ったピアノの打音から始まり、しんと引き締まった空気の中で、切々と歌い上げる。汗を光らせながらシャウトするその迫力に圧倒され、曲間で自然と拍手が広がった。ニューアルバムからの楽曲は年輪を重ねたからこその歌えるのであろう、じつに味わい深いもので、矢沢が今なお最高のメロディメーカーであることを証明している。

【ライブレポ】矢沢永吉、50年走り続けてきたからこその壮観な景色「俺まだずっと歌ってるからヨロシク!」

ド迫力のオルタナティブロックチューン「カサノバと囁いて」でガラリとムードチェンジ。間奏でメジャーに転調するとステージのライティングがパーッと明るくなり客席の熱狂を浮かび上がらせる。映像を挟んで歌われたのは、「共犯者」。グリーンの照明に包まれたステージで、矢沢の歌を支えるジェフ・ダグモア(Dr)と野崎森男(Ba)によるズシリと重いボトムが、ダンディな曲をより一層際立たせた。バンドが作るグルーヴに乗って、ハンドマイクに持ち替えてステージ端まで行きスタンドを見ながら歌う矢沢。卓越したバンドの演奏と圧巻の歌声は東京ドームでも最高だったが、やはりツアーファイナル。ツアーを経て見事に一体感が強くなった演奏と歌がさらに素晴らしい。過去に聴いた「共犯者」の中でもベストな歌と演奏だった。「HEY YOU…」では、優しく包み込むようなバラードに、観客が着席してうっとりと聴き入っていた

「今年で、ソロ50年。50年だよ。正直言ってこんなに長く歌えるとは本当に思ってなかったですね。「夢は、50歳ぐらいの誕生日に「I LOVE YOU, OK」を野外の何万人を前に歌えたら最高だよね」って言ってたのが、たぶん35歳ぐらい。そのときは、50まで歌ってるわけないと思ったから、そう言ったんでしょうね。そしたらあれよあれよと、50歳、60歳、いまもう76歳です。本当にありがとうございます!」

アコギ弾き語りの「もうひとりの俺」。夜更けに1人で過去を回想しているような歌詞と歌声が、ノスタルジックな鍵盤の音色でより心に染みる。ステージが朱色になり、火花がステージから立ち昇って「ワン・ナイト・ショー」へ。重低音が響くハードロックに桑迫陽一(Per)のパーカッションのソロが加わって、ドラムとセッションを繰り広げる。ギター、ベース、ホーンセクションもソロをとると、矢沢は衣装チェンジして登場。「ロックンロールに感謝しようぜ!」とキメゼリフを叫んだ。激しさから一転、東京ドームでも見事なボーカルを聴かせた「古いラヴ・レター」へ。音数の少ない演奏に乗せたソウルフルな歌声は、この日も情緒たっぷりに会場の空気を震わせた。

キャロルの4人のアーティスト写真に始まり、ソロ以降のライブの変遷が画像でビジョンに映し出されると、「Risky Love」へ。鍵盤の音にフィンガースナップが重なり、スローに歌い出すライブアレンジから、「Alright!!」と矢沢の合図で、ヘヴィロックへと変化。激情ほとばしるボーカルで魅了すると、青いレーザー光線が無数に飛び交い、クラビネットのイントロで「黒く塗りつぶせ」が飛び出して、カオティックなサウンドで興奮の坩堝と化していく。「Oh Oh Oh~」とコーラスしてから、「Let’Go!!Come On!」と煽る矢沢に客席は大合唱でレスポンスした。

光沢のあるジャケットを纏った矢沢がスキャットから「A Day」を歌い出すと拍手が広がった。ピアノとストリングスをバックに歌い、後半は花道に歩を進めて熱唱。そのまま曲は続き、ミラーボールが回る下で「LAST CHRISTMAS EVE」へ。この時期恒例の矢沢からのクリスマスプレゼントだ。

「今年一年、すごく早かった。なにしろ、年が明けて気づいたら12月だよ(笑)。最近は、いろんなことを思います。ただ1つはっきりしてることは、こうやってまだまだライブをやれる、やりたい、やり続ける。そんな感じかな。それが今一番幸せを感じます。なんか一杯飲みたいね。今、一杯飲みたいよ!」と笑いながら、メンバー紹介へ。コーラスのアネット、イマニ、アジー、湯本スーパーホーンセクションも含めたメンバーたちが賞賛の拍手を集めた。豪快無比なデカい音の塊が放たれて始まった「YOU」では、ビジョンにアリーナの観客たちが映し出された。みんな最高に楽しげな表情で手拍子を送っている。矢沢のラブソング、ポップスの最高傑作と言っても過言ではない人気曲を歌いあげると、「ありがとうー!最後に1曲行きます!」。長尺なイントロの最中、ビジョンにはソロ初期のタオルを肩にかけた矢沢の姿が。グッときてるところに、「鎖を引きちぎれ」がスタート。〈Gold Rush!〉と歌う矢沢に合わせてタオルが上がり、最後は金の紙風吹がステージに舞い降りた。歌い終えてもどんどん降って来る紙吹雪に、「紙吹雪、遅いよ!(笑)」と苦笑いする矢沢に客席もドッと反応して和みつつ本編終了。

【ライブレポ】矢沢永吉、50年走り続けてきたからこその壮観な景色「俺まだずっと歌ってるからヨロシク!」

満を持して、爆発的に沸き起こった永ちゃんコールに応えて、ハットに白スーツの正調スタイルで「止まらないHa〜Ha」へ。タオルが飛び、サビで合いの手が入り、大盛り上がりに。途中でハットをステージ袖に放り投げて曲をおえると、「トラベリン・バス」へと突入して金テープが炸裂した。アリーナから3階までタオルが舞う光景は壮観の一言だが、この曲で歌われているように、街から街へと歌いながら50年間走り続けてきたからこそ、この景色がある。「横浜!最高だよ!」コール&レスポンスを繰り返し、深々と客席に一礼して顔を上げると、万感極まった表情を見せる矢沢。ラストの曲は「真実」。〈人は儚く 永遠などない〉圧倒的な声量、表現力で歌われる、そんな歌詞が会場中に広がり、先程までの熱狂が嘘のように、静まり返り耳を傾けるオーディエンス。歌い終えた矢沢に万雷の拍手が送られ、「サンキューどうも!」と客席に感謝を伝えて、2025年ツアーファイナルは終演となった。“永遠などない”にしても、2026年からもまだまだ、矢沢永吉はステージに立ち続けるに違いない。そしてその姿を観続けていたい。そう思えた最高のライブだった。

【ライブレポ】矢沢永吉、50年走り続けてきたからこその壮観な景色「俺まだずっと歌ってるからヨロシク!」

PHOTO:HIRO KIMURA
取材・文:岡本貴之

ライブ情報

〈EIKICHI YAZAWA LIVETDO It!YAZAWA 2025〉
2025年12月20日(土)神奈川県・ぴあアリーナMM
〈セットリスト〉
01.さまよい
02.テレフォン
03.さめた肌
04.恋の列車はリバプール発
05.あれから10年
06誰のため
07.カサノバと囁いて
08.共犯者
09.HEY YOU..
10.もうひとりの俺
11.ワン・ナイト・ショー
12.古いラヴ・レター
13.Risky Love
14.黒く塗りつぶせ
15. A Day ~LAST CHRISTMAS EVE
16.YOU
17.鎖を引きちぎれ
EN1. 止まらないHa〜Ha
EN2. トラベリン・バス
EN3. 真実

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