「三菱化工機株式会社」をご存じだろうか。会社資料には「三菱化工機グループは、プラント・環境設備の建設・エンジニアリングと、各種単体機械の製作及び、納入後のアフターサービスを軸に事業を展開しています。製造機能を持ったエンジニアリング企業として、都市ガス・水素・石油化学・半導体・電子材料・船舶・医薬・各種水処理など様々な分野で求められる機械・設備を製作・建設し、社会の発展を力強く後押ししています。2024年度の三菱化工機グループの売り上げは592億円、従業員数は1,017名(連結)。」と書かれている。直接一般消費者の目に留まることは少ないが、生活にかかわる多くの場面でお世話になっているいわゆる縁の下の力持ちといったB to Bのエンジニアリング企業なのだ。
今年三菱化工機は、おひざ元の川崎からMKKプロジェクトを発足。今後は様々なプロジェクト案件を通じて、三菱化工機をもっと身近に感じられることになりそうだ。
7月3日、MKKプロジェクトの発表イベントが開催された。写真上は三菱化工機 代表取締役 社長執行役員の田中利一氏だ。
三菱化工機は水素製造やバイオマス活用といった環境循環型エネルギーシステムに関する技術を提供しているが、これまでにはなかなか市場の需要を十分に喚起できていなかったという課題があるそうだ。そこでこのMKKプロジェクト。三菱化工機の環境対応技術を基盤にして、多様な分野の知見やアセットを掛け合わせ、5つの活動分野(スポーツ&カルチャー、環境・災害対策、食・医療、学び・人材育成、地域創生)において多様な共創パートナーと共に、世界を循環型社会に変える様々な事業を創り出していくという。
今年で90周年を迎えた三菱化工機が次の100周年までを見越したプロジェクトを動かし始めた。
続いて登壇したのが同じく常務執行役員イノベーション推進担当 林安秀氏。
「”技術”のエネルギー、”人”のエネルギー、そして川崎という”場”のエネルギーが創発し合うことで、新たな事業やイノベーションを生み出すエネルギー循環構造を目指す」ということで、三菱化工機、パートナーとなる企業や団体、そしてEnergy創発特区と位置付ける「川崎」から世界に発信するプロジェクトにしていくという。
MKKプロジェクトは、まず2030年までの5年間に川崎で5つの新規事業を立ち上げる。そして、そのうちの2つはすでに具体的に始動している。
「スポーツ&カルチャー」において、川崎新!アリーナシティ・プロジェクトでの世界最先端の環境対応型アリーナ建設に向けた実証実験などの協業を、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)と、そして、「食・医療」「学び・人材育成」において上智大学と「フード&エネルギーのサーキュラーエコノミー化」をテーマに社会連携講座を今秋開設する予定だ。
株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース取締役会長 元沢伸夫氏(写真中央)、上智大学SPSF(持続可能な未来を考える6学科連携英語コース)主任・経済学部教授堀江哲也氏(写真右)を迎えてパネルディスカッションが行われた。
元沢氏は「川崎はいろいろなもの、いろいろな人たちが入り混じっている楽しい街だ。ここには例えばコリアンタウンがあって、インドに関連したイベントも人気だし、日本最古のペルー料理店もあれば、沖縄県人会も。ここには混沌とした熱力があって新しいカルチャーが生まれている。魅力的な街です。」という。そして「世界基準のアリーナを、大量に利用する電気などのエネルギー、発生するごみ処理なども考慮して、循環型のものにしていく。」と続けた。
堀江氏も川崎の魅力を語った。「戦後発展した重化学工業、そしてまた新しいものを川崎から創出していきたい。8月にはインドの提携大学の学生たちがビジネスの提案をしにやって来る。”川崎モデル”を作り出して、その発信元である川崎を世界に伝えていきたい。」
これから川崎をベースにした様々な事業が生まれてくるMKKプロジェクト。消費者の目に触れるビジネスとして展開されていくということで、川崎から目が離せなくなりそうだ。