映画『BETTER MAN/ベター・マン』VFXシニアモデラー・宮澤芳里インタビュー「見た目はロビー・ウィリアムス本人に見えるようにしないといけなかった」

『グレイテスト・ショーマン』のマイケル・グレイシー監督最新作にしてミュージカル・エンターテイメント作品『BETTER MAN/ベター・マン』が、3月28日(金)より全国公開となりました。

主人公は、イギリス音楽界において史上最高の売り上げ記録をいまだ維持する“スーパー”ポップスターのロビー・ウィリアムス。1990年にボーイズグループ「テイク・ザット」のメンバーとしてデビュー。その後ソロアーティストとして世界的な成功を収めたウィリアムスをサルの姿で表現。彼の成功と挫折、再生を通して、支えてくれる家族、仲間、恋人の存在の大切さを描いています。

本作で劇中に登場するアンサンブルキャストほか、何百着分ものロビーの衣装デザインを手掛けたのはオーストラリアを代表する衣装デザイナー、カッピ・アイルランドですが、その彼女のスキルに加え、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『アバター』シリーズなどハリウッド超大作のVFXを手掛けたWētāFX社の技術もプラスされ、ロビーのすべての衣装がデジタルで再現されました。

そして、Wētā FX社に所属のVFXシニアモデラー・宮澤芳里さんが、劇中に登場する煌びやかな衣裳の数々をモデリング。主人公・ロビーが映画の中で着用する250種類の衣装のモデルを作成、ヴィンテージの素材やデザインを再現しました。


2005年にWētā FXに入社。ピーター・ジャクソン監督の『キングコング』の制作に携わり、『ホビット』3部作、『アリータ:バトル・エンジェル』、『アバター』、『アンブレラ・アカデミー』など、数多くの著名なプロジェクトに携わってきた宮澤さんに、担当された『BETTER MAN/ベター・マン』にまつわるお話を聞きました。

●これまで数々のヒット作でVFXを手掛けられたと思いますが、本作の難易度はいかがでしたか?

自分の中ではチャレンジ度は高かったです。わたしは洋服を作り続けているのですが、今回はかなりの量がありましたし、そんなに担当する人間もいなかったんです。映像になじむように作らないといけなかったので、チャレンジではありました。

●資料によると、250種類以上の衣類を作られたそうですね!

そうですね。使い回したものもあるので250種類作ったわけじゃないのですが、数はありました。

●衣類はVFXじゃないと思って観ていたのでかなり驚いたのですが、 それだけにこだわりもたくさんありますよね。

なるべく本物に近いように作る必要がありました。人間と猿の体は違うので、洋服をスキャンしたまま同じものを作ることはできないので、体に合っている見た目に作ることはこだわりました。

あと、わたしは顔は担当していないのですが、WETAのお家芸のキャラクターの表情は今作もとてもよいですよね。監督やスーパーバイザーも彼の表情にはこだわっていたと思います。

●いくつかの衣装は、ロビーが当時着ていたものに見えました。

そうですね。そのように衣服を作っていて、当時の衣装と同じようにしたみたいです。写真あるいはモノがあるものは、実際に人間が着た写真が送られてくるので、それを見ながらスキャンが撮れる時は撮っていました。

●見た目は猿なのにロビーに見える工夫もされていますよね?

そうですね。猿の骨格に合わせて作っているものの、見た目はロビー・ウィリアムスみたいに、本人に見えるようにしないといけなかったんです。

最終的には監督がジャッジしますが、ものによってはなかなかアプルーバルが出なかったり、やり直す部分が出たり、ものによって違いました。

●長年この仕事をされているかと思いますが、面白さは何でしょうか?

わたしはモデリングをしていますが、観察することが楽しい です。『BETTER MAN/ベター・マン』で言うと、ジャケットひとつとっても違うんです。なぜこんなにカッコよいのか、丈の絞られ方などを見ていると発見がたくさんあり、面白いです(笑)。

●映画をご覧になっていかがでしたか? ロビー 本人にしか分からない苦しみや葛藤が、思いも寄らないダイナミックな表現力で描かれていてよかったです。

わたしも同じように思いました。表情によく出ていましたよね。自分と戦っている感じの描写がすごく面白かったです。よくできていると思いました。びっくりするようなシーンもありますし、わたしはラストが好きでした。エンタメ性もアート性も高いので、みなさん楽しんでほしいです。

公開中

(執筆者: ときたたかし)

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