首都圏の住宅の価格はまだ上がる?ローン金利の上昇でどうなる?デベロッパーへの調査結果から今年を予測

首都圏の住宅の価格はまだ上がる?ローン金利の上昇でどうなる?デベロッパーへの調査結果から今年を予測

三菱UFJ信託銀行 不動産コンサルティング部では、不動産デベロッパーに対して半期ごとに首都圏における事業戦略や相場観などに関するアンケート調査を行っている。2025年1月時点の状況を調査した「2024年度下期のデベロッパー調査」(マンションデベロッパー25社、戸建デベロッパー12社の回答)の結果が公表された。デベロッパー側は、住宅ローンの金利が上昇トレンドにあるなか、どんな供給計画でいるのだろうか?

【今週の住活トピック】
【新レポート発行】独自調査「2024年度下期 デベロッパー調査」/三菱UFJ信託銀行

1年後の販売価格は?上昇見込みだが、マンションと一戸建てで違いも

まず、気になる販売価格について。マンションと一戸建てのデベロッパーはどう見ているのだろうか?

現在の販売価格を「100」とした場合で、1年前の実績と1年後の予想を、マンションと一戸建てそれぞれで価格帯別に聞いている。その結果(画像1)を見ると、マンションについては、1年前からの上昇が顕著で、価格帯が高くなるほど上昇幅も大きくなっている。

一方、1年後の予想では、いずれの価格帯も現在(100)より高くなっている。「6000万円~8000万円」の場合は、105.9と上昇幅は比較的小さいが、「2億円以上」になると114.0とまだかなり上昇すると見ている。つまり価格が高いほど、1年後も上昇幅が大きいということだ。

マンション 販売価格の実績と予想

【画像1】出典:三菱UFJ信託銀行「2024年度下期 デベロッパー調査」

戸建 販売価格の実績と予想

【画像2】出典:三菱UFJ信託銀行「2024年度下期 デベロッパー調査」

次に、一戸建てについて(画像2)見ていこう。現在の販売価格は1年前の実績よりも上昇していたことが分かる。価格帯が高いほど上昇幅が大きいこともマンションと同じだが、それぞれの上昇幅はマンションに比べると小さい。

一方、1年後の予想については、「2億円以上」「1億円以上2億円未満」「8000万円以上1億円未満」では現在の販売価格(100)よりも高いが、「6000万円以上8000万円未満」「6000万円未満」では現在よりも低くなっている。一戸建ての高価格帯では1年後もまだ上がるが、8000万円未満では下がると見込んでいるようだ。

マンションの売れ行き好調な価格帯はエリアによってかなり異なる

マンションで、販売価格が高価格帯のものほど1年後の上昇が予想されるのは、エリアによって「売れ行き好調」の価格帯が異なるからだろう。

「現時点で売れ行きが好調な物件の価格帯」を聞いた結果(画像3)を見ると、都心6区(千代田区・中央区・港区・渋谷区・新宿区・文京区)の売れ行き好調価格帯の平均は、1億7616万円。都心6区の中でも千代田・港・渋谷の3区に限ると、平均は2億2860万円まで上がり、3億を超える売れ行き好調物件もある。一方、郊外(東京駅から20キロメートル以上)になると、売れ行き好調の価格帯の平均は5181万円となる。

富裕層や海外を含む投資家が中心となる都心部では、土地や建築費用の上昇を上乗せされて販売価格が上昇しても、需要が落ちない、ということだろう。

売れ行き好調価格帯

【画像3】出典:三菱UFJ信託銀行「2024年度下期 デベロッパー調査」

詳しくは割愛するが、一戸建ての売れ行き好調な価格帯でも、エリア差が見られた。世田谷区などは平均が1億2349万円と高価格帯になるが、郊外では平均が5392万円になるなど、マンションほどではないがエリア差の出る結果だった。

住宅ローン金利が上昇した場合、供給戸数や販売価格はどうなる?

さて、2025年1月時点の予想となるが、「住宅ローン金利が0.5%以上上昇した場合」という想定で、マンション・一戸建ての供給戸数と販売価格について聞いている。

マンションデベロッパー(画像4)は、供給戸数については「ほとんど影響はない」が42%だったが、「供給戸数が10%未満減少する」のほうが54%で最多となった。「供給戸数が減少する(10%以上)」も4%で、金利の上昇が供給戸数を減少させるという見方が優勢だ。

また、販売価格では、「ほとんど影響はない」が最多の46%で、供給戸数の場合よりも多くなった。次いで、「販売価格が下落する(10%未満)」(38%)、「販売価格が上昇する」(13%)と見方が分かれる結果も見られた。

住宅ローン金利が0.5%上昇した場合の供給戸数 住宅ローン金利が0.5%上昇した場合の販売価格

【画像4】出典:三菱UFJ信託銀行「2024年度下期 デベロッパー調査」

次に、同じ質問に対する一戸建てのデベロッパーの回答(画像5)を見よう。供給戸数については「ほとんど影響はない」が62%と過半数を超え、次いで「供給戸数が減少する(10%未満)」(31%)となった。販売価格については「ほとんど影響はない」が46%と最多ではあるが、販売価格が上昇すると見る事業者はおらず、「販売価格が下落する」(10%未満が38%+10%以上が15%)が合わせて過半数を超える結果となった。

一戸建てでは、住宅ローン金利の上昇(0.5%以上)により、販売価格が下落するという見方のほうが優勢といえそうだ。

住宅ローン金利が0.5%上昇した場合の供給戸数 住宅ローン金利が0.5%上昇した場合の販売価格

【画像5】出典:三菱UFJ信託銀行「2024年度下期 デベロッパー調査」

住宅ローンの金利はどこまで上がる?

供給戸数や販売価格に影響がありそうな住宅ローンの金利は、実際に0.5%以上、上がるのだろうか?

調査(住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2024年10月調査)」)によると、77.4%が利用しているという「変動型」で考えてみよう。

変動型の金利は、各金融機関が主に短期プライムレートを参考にして、基準となる金利を決めている。短期プライムレートは、日本銀行の政策金利に連動する。日本銀行は長く続いたマイナス金利政策をやめて、金利のある時代に入ったが、2024年7月に政策金利を0.25%に引き上げた。これを受けて、2024年9月に短期プライムレートは従前の1.475%から0.15%引き上がり、1.625%になった。短期プライムレート+1.0%が変動型の基準金利になるので、基準金利を2.625%に引き上げた金融機関も多かった。

ただし、各金融機関では最優遇金利が適用される変動型の金利を+0.5%や+1.0%などにしたところもあれば、優遇する幅をさらに大きくして、適用金利を変えなかったところもあるなど、対応が分かれた。顧客獲得のための低金利競争が続いているからだ。

さらに日本銀行は、2025年1月に政策金利を0.25%UPの0.5%にする追加利上げを行った。これを受けて、3月の短期プライムレートは0.25%上乗せされて1.875%になる見込みだ。各金融機関の4月の適用金利はまだわからないが、MAXで0.25%上がる可能性がある。

2025年年内には日本銀行のさらなる追加利上げが予想されており、政策金利の到達点は1.0%とも1.25%とも言われている。近い将来、住宅ローンの金利が2025年1月時点より0.5%以上上がる可能性もあるといえるだろう。

金利上昇による住宅市場への影響は大きいが、高額物件はその影響が小さく、一般的な価格帯の物件ではその影響が大きくなるなど、二極化の動きもある。また、収入が増えたり、効果的な資産運用ができた人には、その影響が小さくなるなど、ユーザー間で影響の度合いが変わる場合もある。今は不確実な時代なので、冷静に住宅市場を見ることが大切だ。

●関連サイト
三菱UFJ信託銀行【新レポート発行】独自調査「2024年度下期 デベロッパー調査」

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