2拠点生活をもっと身近に楽しめるサブスク、京都から始動! シェア別荘は空き家活用、”旅行以上移住未満”の1.5拠点生活を楽しむ利用者の声も 八清「シムターンズ」

「SymTurns(以下、シムターンズ)」は数人で同じ部屋を毎月一定額で借り、各自が都合のいいときに利用できるという斬新な居住スタイル。完全に2拠点生活をするのは難しいけれど、試しに住める1.5拠点なら、さまざまな人に可能性が広がる。さらには、空き家問題解決の糸口にもなりそうなのだとか。
京都から始まり、全国へ広がるシステムをすでに実践している方の体験も含めて紹介したい。
京都で古家・空き家の再生を行う八清の代表が創る新しい別荘シェアリング「シムターンズ」とは

京都の象徴ともいえる鴨川(撮影/四宮朱美)
2拠点目に物件を借りたり、購入したりするのはなかなか大きな決断。一方で、暮らすように滞在を楽しみたい人にとっては、ホテル滞在やAirbnbでは同じ居場所を持つことが難しい。そこで、1つの物件を複数人でシェアして2拠点生活を楽しめるようにしたのがセカンドハウスシェアのサービス「シムターンズ」だ。
プランニングしたのは、京都で古家・空き家の再生販売を中心に事業展開をする株式会社八清の社長、西村直己(にしむら・なおき)氏。
モニター体験した人々の意見や提案を取り入れて、数年かけてバージョンアップ。そうして、西村氏と弁護士の西村啓(にしむら・あきら)氏が知恵と経験をしぼって、株式会社SuiTTeという別会社で本格スタートした。
「別荘を複数の人で共同利用、オーナーとのマッチングと管理支援、収益化を行う目的で開発しました。掃除やゴミ出しといった管理を入居者が担当するという、セカンドハウスの新たな価値を提供しています。これから首都圏や軽井沢、北海道、沖縄でも展開できればと思っています」と西村氏。

シムターンズの概念図(画像提供/株式会社SuiTTe)

シムターンズとして利用できる洛縁六条表と裏の入口(画像提供/株式会社SuiTTe)
筆者も、2022年の約1週間ずつ2回体験させていただいたが、別拠点を持って2拠点生活をやってみたいけれど、ハードルの高さに躊躇していた者の一人として、お試し居住=1.5拠点ということで気軽に挑戦してみたいと感じた。
以下に借りる側・貸す側の利点をまとめてみた。
〇借りる側のメリット
京都や沖縄といった人気のエリアで暮らすように生活できる
礼金・敷金などのまとまった初期費用が必要ない(共同利用料の半額程度の入居準備金は必要)
月額4万円~10万円程度の定額共同利用料(家賃)で1棟あるいは1室を利用できる
光熱費等も共同利用料(家賃)に含まれる
テレビ、冷蔵庫、などの家電、家具や食器、調理器具も完備。自分で購入する必要がない
鍵付きの収納を完備し、着替えやPCなどの各自の持ち物を置いておくことが可能
入口は主にスマートキーで管理する
予約システムはLINEと連携されているため、誰でも簡単に利用できる
〇貸す側のメリット
オーナー自らも利用することが可能
共同利用料をはじめ、滞在可能日数や予約できる日程の範囲も自由に設定が可能
物件の管理はオーナーと入居者が連携して行うので管理の手間が少ない
Airbnbやゲストハウスとして活用する際の煩雑な仕事が必要ない
コロナ禍のような際の利用客の急な減少に頭を悩ますことがない(サブスクリプション料として安定した収入がある)
京都では順調な滑り出しで、どこも満室。「シムターンズ」を利用して多拠点生活を満喫している方たちに話を聞いてみた。
利用者インタビュー① 「おかえり」と言ってくれる関係が心地いい

「京都と東京の2拠点暮らし」をテーマにInstagramで多拠点ライフを紹介している森洋子(もり・ようこ)さん(撮影/四宮朱美)

森さんが利用している、岡崎エリアの物件「(j)amu」のLDK(画像提供/株式会社SuiTTe)
森洋子さんは家族と暮らす東京の家に本拠地を置きながら、京都で美大の学生もしている。なぜ「シムターンズ」を選んだかについて聞いてみた。
「私はまず大前提として『東京』が大好きなんです。だから軸足は東京に置いて、そこから自分の好きな街に秘密基地をつくる感覚で、さらなる拠点を探していました。1年かけていろいろ巡ったあと、京都でこのサービスがあると聞いて利用を決めました。『旅行以上移住未満』の感覚が私にぴったりだと思ったのです」
森さんは、“妻活トレーナー”としてさまざまな夫婦の悩みを解決するだけでなく、暮らし・家族・自己実現など「妻をもっと楽しむ」ための情報を発信したり、女性のためのマネーリテラシー向上のスクールを運営したりしている。
「2拠点生活をすることで夫婦の関係にもいい意味で変化がありました。夫にイヤな言葉を言わないようになり、夫との時間を努力してつくるようになりました。以前よりずっと仲良くなった気がします」
加えて「美大の学生になる」という長年の夢も京都で実現した。京都に拠点を持ったことで実際に通うこともできるようになった。今ではクラスメイトと一緒に歴史散歩に行ったりしているそうだ。
「シムターンズを利用して気付いたのは、いつのまにか『おかえりなさい』と言ってくれる友達が増えたことです。友達や近所のお店の方も、旅行者としてではなく住民のように扱ってくれることが一番楽しいですね」
森さんは今回7日間滞在、最終日には掃除機掛けや風呂掃除、ゴミの分別を行い東京の自宅に帰っていった。申し送りは共通のプラットホームで伝えることができる。
森さんは実に軽やかに多拠点生活を楽しんでいる。「旅行以上移住未満」というコンセプトにぴったりマッチしている活用の仕方だ。
利用者インタビュー② 単なるワーケーションで終わらない1.5拠点

マーケティング・営業企画・事業開発支援のプロとして活動しながら、大学でも講座を持つ高広伯彦(たかひろ のりひこ)さん(画像提供/高広伯彦)

高広さんが利用している、五条駅すぐ近くにある通路奥の物件「京町家洛縁六条裏」の2階和室(画像提供/SuiTTe)
大阪出身の高広さんは、もともと京都に縁が深い。大学の修士課程や博士課程を京都で過ごした経験もある。今は関東エリアに住んでいるが、今期から京都の大学で講師として教鞭をとっている。「シムターンズ」の利用を決めた背景には、最近の宿泊代の高騰がある。
「最近はインバウンドもあり、京都の宿がものすごく高い。シムターンズを利用して京都の町家を拠点にするということは合理的ですね。京都には学生時代からのなじみの場所も多い。むしろシムターンズを利用することで『京都に行く理由が欲しかった』というのが正直なところです」と高広さん。
また京都の持つアカデミックな雰囲気も、そこに身を置きたいと思わせる大きな理由になっているそうだ。
「最近はワーケーションが流行っていますが、京都には単に1日や2日滞在するだけでは終われない文化的背景があります。いるだけで空気の成分が違うと感じるような。たとえばカフェ文化、マスターと客が話す会話の中にもそのまま歴史や文化を感じることがあります。『野良インテリ』というか、専門性やビジネスから離れたところに本当の『知』があると。京都には、そんな空気が流れていて、それが魅力になっていると思います」
さらに、シムターンズを利用することで利用者同士やオーナーとの連帯感にも心地よさを感じているようだ。
「シムターンズには、共同利用者同士やオーナーが一緒にいい空間をつくっていく共通認識があるように感じます。共通のプラットホームでお互いの情報交換ができるので、先日も包丁のキレが悪くなったので、研ぎにもっていくと伝えましたが、すぐに了承されました。一緒に滞在するわけではありませんが、同じ家に住んでいる仲間同士という感覚がありますね」
高広さんに京都のおすすめスポットをたくさん紹介してもらったのだが、どれも旅行で来ただけでは分かりづらい場所ばかりだ。学生時代に関西の情報誌で編集経験もある高広さんにとって、京都での生活は編集しがいのあるテーマのようだ。
これからは全国展開、まずは沖縄の首里城近くで「石畳の杜」プロジェクトが進行中
京都から始まったシムターンズだが、全国展開の足掛かりとして沖縄でも「石畳の杜」プロジェクトが進んでいる。場所は首里城近くの石畳エリア、琉球石灰岩が敷き詰められた歩道や両側に石垣が所々に残されており、琉球王国が栄えた当時の面影を今も感じ取ることができる。

「石畳の杜」プロジェクト周辺写真(画像提供/株式会社SuiTTe)
「京都と沖縄の共通点は、どちらも観光都市であり、自然が豊かでありながら都としての歴史があるということです。また移住地として人気があり、外から来る人間を受け入れやすい環境。お祭りなどのイベントも一年中開催されていて、人と人とのつながりが生まれやすい。また建物の高さが抑えられている点も特徴、今回の石畳エリアも昔ながらの景色が残されているので沖縄らしさが感じられると思います」と西村氏。
設計中のプランは1階と2階を玄関で完全に分離した2区画のサブスク型タイムシェアリング。各々に下記のようなテーマを持たせて企画中だそうだ。
■1階は庭を楽しむ空間。リビングから延びるテラス石と緑の庭でBBQを楽しむ
■2階は景色を楽しむ空間。2階のテラスからの眺望や開放的な屋上、簡易サウナを楽しむ

「石畳の杜」プロジェクト1階プラン(画像提供/株式会社SuiTTe)

「石畳の杜」プロジェクト完成予想図(画像提供/株式会社SuiTTe)
「竣工前に、首里の伝統工芸を土間で体験できるイベントや関係者による塗装イベント、首里の杜を愛する人のための植樹イベントなども計画しています。沖縄で大切にされている“ゆいまーる(助け合い)精神”で、近隣の人も参加できる竣工見学会や首里の食を味わう交流イベントも計画中。地元の方も含めて、このプロジェクトが受け入れてもらえるように考えています」
入居前の段階で施設が近隣の方に受け入れてもらっていれば、スムーズに1.5拠点が始められそうだ。
インタビューさせていただいたお2人のように、積極的に自分の生活を楽しむ人たちに活用されているのが特徴のシムターンズ。
滞在期間は別だとしても「いずれ、このシステムがうまく運用していくようになれば、入居者メンバーが集まるオフ会を開いてみたい」とのこと。同じ空間を共有するものとして、顔見知りになっておきたいという気持ちは自然だろう。バトンを渡すように暮らすことで、お互いへの思いやりやいい意味での適度な緊張感は、この新システムを運営していくのに大事な要素かもしれない。
西村氏は、いずれ京都だけではなく全国各地でこのシステムが運用されるようになれば、日本の住まいのカタチも変わってくるのではと期待しているそうだ。魅力のある場所なのに使われていない空き家も増えている今、不動産活用のスタイルにも可能性が広がる。2拠点とまではいかずとも1.5拠点居住なら、さまざまな人がチャレンジしやすいはずだ。
今後は、京都哲学の道、京都出町柳、大阪阿倍野といった場所でリリースされる予定とのこと。続報が楽しみだ。
●取材協力
SymTurns ~セカンドハウスシェアで二拠点生活を実現~
「シムターンズ」オンラインセミナー(3月29日)

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