【静岡県静岡市】建設用3Dプリンターを導入した、ハイブリッド建築による公衆トイレ建屋完成！

静岡県に本社を構える百年住宅が、建築用3Dプリンターの技術とプレハブ建築のWPC工法を融合させた日本初(※)となるハイブリッド建築を開発。2月に、静岡市駿河区桃園町にあるSBSマイホームセンター静岡展示場において、同ハイブリッド建築による公衆トイレ建屋を完成させた。

WPC工法はデザインの自由度に制限あり

近年、地震や台風、豪雨、土砂災害が頻繁に発生しており、コンクリート住宅のような堅牢な建物が求められているそう。しかし一般的なコンクリート(RC)造は、職人不足、建築資材高騰、かつ工期が長いということから小規模建築では普及されていない。

これらの課題を解決するため、コンクリートプレハブ住宅のWPC工法に注目が集まっているが、そのデザインの自由度には制限があったという。

WPC工法×建設用3Dプリンター

WPC工法は、1955年に旧建設省の主導で官民一体となって住居不足の解消、防災のための国策として開発された、壁式プレキャスト鉄筋コンクリート構造を用いた建築工法。高品質なプレキャスト鉄筋コンクリートパネル(PCパネル)を工場で生産し、建設現場で組み立てて建てることで、地震や火災に強く、耐久性の高い住宅が短期間で建設可能なことが特徴だ。WPC工法は阪神淡路大震災の他、日本を襲った大震災において、窓ガラス一枚も割れず無傷の実績があり、無類の耐震性能を有している。

百年住宅のWPC工法の実績は、累計22,000棟以上。「住む人の命と財産を守る最強の家造りを目指す」を企業理念に掲げ、建替え不要の家、災害に無傷の家を普及させる事でスクラップ＆ビルドの日本の住宅業界を変革する。

そんな百年住宅は、建設用3Dプリンターと融合させる事で、WPC工法のデザインの自由度制限というデメリットを解決し、全く新しい建築としてハイブリット建築の開発に着手。

百年住宅は、50年以上に渡るプレキャストコンクリート(PC)パネルの工場製造技術を活かし、3Dプリンター建築のベンチャー企業・セレンディクスとのオープンイノベーションの協業を行っており、この協業の中から派生して開発されたのが、2月に完成したハイブリッド建築のトイレ建屋だ。

高耐震・高耐久の性能を維持したハイブリッド工法

今回の公衆トイレの構造躯体は、PCパネル部材を現場で組み立てるWPC工法。その後構造躯体を囲むように意匠の壁として建築用3Dプリンターで制作した部材を設置し、これまで鉄筋コンクリート造では困難であった、円形や曲線、表面の凹凸を、3Dプリンターを用いることで実現した。

部材は共に、愛知県小牧市にある百年住宅小牧工場で製作。3Dプリンター部材は13種類に分かれており、また、中空構造により軽量化も図られ、大型トラックにて容易に運搬が可能だ。

現地で組み立てた後に、中空部分へコンクリートと鉄筋を差し込み連結させるという。

構造躯体の組立工期は、通常の鉄筋コンクリート構造と比較し、1／4程度に短縮。

建設業界の大きな課題である建設職人不足による人件費の高騰を解消し、高耐震・高耐久の性能を維持したこのハイブリッド工法は、住宅など様々な建物への応用ができるという。

今後の大地震や、国が進める住宅ストック政策にも対応できる設計となっている。

誰でも気軽に見学・体感が可能に

ハイブリッド建築による公衆トイレ建屋は、SBSマイホームセンター静岡展示場内に設置。

現在、国内にある3Dプリンター建築物は、開発中や個人所有に限定されているため、一般開放はされていなかったとのこと。今回はじめて、商業施設のパブリックスペース(住宅展示場来場者向けのトイレ)に採用されたことで、3Dプリンターで制作された建築物を誰でも気軽に見学・体感できることになった。

3Dプリンター技術の導入による日本初のハイブリッド建築物を見に、SBSマイホームセンター静岡展示場内に足を運んでみては。

■SBSマイホームセンター静岡展示場
住所：静岡県静岡市駿河区桃園町1-1

百年住宅：https://www.wpc100.co.jp

(※)壁式プレキャスト鉄筋コンクリート工法を扱うプレハブメーカーによる既存工法と3Dプリンター技術を用いたハイブリッド建築として日本初。日本初の3Dプリンター住宅メーカー・セレンディクス(兵庫県西宮市)調べ。調査年月2025年1月。

(佐藤ゆり)