史実を緻密な脚本で映画化『セプテンバー5』ピーター&ベンインタビュー「登場人物全てにフォーカスが当たっていて、集中力を保っている」

オリンピック史上最悪の事件として今もなお語り継がれている歴史的な1日を、緻密な脚本と重厚な映像で圧倒的な緊迫感を描き、ゴールデングローブ賞 作品賞(ドラマ部門)に続き、 アカデミー賞 脚本賞に見事ノミネートされた『セプテンバー5』。本日より公開となります。

本作は、ミュンヘンオリンピック開催中の1972年9⽉5⽇に、パレスチナ武装組織「⿊い九⽉」に襲撃されたイスラエル選⼿団11⼈が犠牲になったテロ事件を題材に、緻密な脚本と重厚な映像で圧倒的な緊迫感を描き出した社会派映画。⽶映画レビューサイトRotten Tomatoesでは批評家スコアが93%、観客スコアが91%(※)と高評価を得ています。(※2025年2月9日現在)

ABCのスポーツ局のトップであるルーンを演じたピーター・サースガードさんと、スポーツ局の重役・マーヴィンを演じたベン・チャップリンさんにお話を伺いました。

▲ピーター・サースガード

▲ベン・チャップリン

――非常にスリリングで楽しませていただきました。緊迫感がすごく、演じている皆さんはへとへとになったのでは?と想像します。撮影で緊張感をキープするためにスタッフ、キャストが工夫していたことはありますか?

ピーター:自分たちが意識したことは、緊張とか危機感よりも、仲間意識、連帯感でした。群像劇として、キャラクター一人一人のやり取りやつながりを意識していました。緊張感の演出は、カメラマンの方や編集の方がやってくださるので、現場にいる自分たちが気をつけたのは、当たり前なのだけどグループとしてやることを大切にしていたんだ。複数の俳優が集まって、一つの生命体として連動していくということだね。多くの映画は一人の主人公がいて、その相手役がいて、そして相棒がいて…という構成だけれど、本作の場合はたくさんの登場人物が同等に絡み合っていくのが面白いんだよね。

ベン:登場人物が多いのに、同じ度合いでフォーカスが当たっていて、集中力が保てるのはすごい映画だなと脚本を読んで感じました。みんなが1つのものを作り上げていく楽しさをすごく強く感じた作品でした。

――ルーンとマーヴィンは確固たる信念を持っている二人ですが、お互いのお芝居に引っ張られた部分、助けられた部分はありますか?

ベン:演じるということは、まさにそういう部分が楽しいんだ。

ピーター:僕が演じたルーンは資本主義野郎「俺が世界を全部買ってやる」と息巻いているところにマーヴィンがやってきて「いや、ちゃんと規制を守るんだ」と牽制する。映画でいうと、僕がプロデューサーで彼が監督みたいな役回りだったと思うのだけど、脚本にはすでにそういう関係性が描かれていたんだよね。この2人はすごく長い間一緒に仕事をしてきた仲間同士なのだけど、僕たち自身も俳優としてすごく昔から知り合いなんだ。ロスで同じ先生に芝居を教わっていたこともあるからね。

ピーター:この2人は昔からの知り合いで歴史があるのだというところをすごく見せたかったし、意識しました。それに対して、ジョン・マガロ演じるジェフリーは若手で、チームに新しい仲間が加わった、そこからまたストーリーが広がるよね。

――ジェフリーがルーンとマーヴィンに自分なりの仕事ぶりを見せた様に、お2人がジョンさんに刺激を受けた部分はありますか?

ベン:ジョン・マガロは経験豊富な俳優なので、若手とは思っていないんだけど。

ピーター:ジョンは違うけれど、僕は「映画初出演です」という新人の方と仕事をするのが好きだよ。その方にとっては、一作目って自分を証明する必要があるから全身全霊で挑んでいますよね。そうするとこちらも必死になってやらなきゃいけないし、自分の演技やパフォーマンスも上がるんだよね。

ベン:俳優の仕事というのは年齢は関係無くて、20代から始める人もいれば、80代の人も同僚と言えるし、年下の方の演技に圧倒されることもある。俳優って引退が無い仕事でもあるし、色々な年齢層の人と交われるとこがこの仕事の醍醐味ですよね。

ピーター:俳優ってどんどんうまくなるんじゃなくて、実は徐々に落ちていくものだと思っている。演じることが当たり前になって、芝居にあぐらをかくようになったり、惰性でやるようになることがすごく危険なんだよね。

ベン:そういうのってカメラにも必ず映ってしまうものだから、「自分はこれで大丈夫かな」という危機感を持って取り組むことはとても大事だよね。

――素敵なお言葉をありがとうございます。セットやプロップスなど時代背景に基づいてしっかりと作られていたそうですね。驚いた部分はありますか。

ピーター:あんな大きなFAXにはビックリしたね。冷蔵庫かと思った(笑)。

ベン:リモコンがワイヤー付きだったことも面白かったね。この事件が起きた時、僕らは赤ん坊だったけれども、見たことのある家電製品も多かったから、「あの時のまんまだ、すごい!」と感動したよ。

ピーター:昔はテープを運ぶのも一苦労でニュースを中継していたけれども、今はiPhoneというものがあって、一人一人が映像を配信出来る様になったよね。本当に何が現実なのか事実なのか、分からない世界になってしまった。本作に出てくるキャラクターたちがどの様にニュースを伝えようとしていたのか、ガジェット類も含めて注目してもらえると面白いと思うよ。

――今日は素敵なお話をありがとうございました!

【STORY】
1972年9⽉5⽇ミュンヘンオリンピックでの、パレスチナ武装組織「⿊い九⽉」による、イスラエル
選⼿団の⼈質事件。事件発⽣から終結まで、その緊迫に溢れた⼀部始終は、当時技術⾰新
がめざましい衛星中継を経て全世界に⽣中継された。
しかし、全世界が固唾を飲んでテレビにくぎ付けとなったその歴史的な⽣中継を担ったのは、なん
とニュース番組とは無縁のスポーツ番組の放送クルーたちだった。

■監督・脚本:ティム・フェールバウム 『HELL』、『プロジェクト:ユリシーズ』
■出演:ジョン・マガロ『パスト ライブス/再会』、ピーター・サースガード『ニュースの天才』、レオニー・ベネシュ『ありふれた教室』、ほか
■全⽶公開:2024年11⽉29⽇ ■原題:SEPTEMBER 5 ■配給:東和ピクチャーズ
■コピーライト:©2024 Paramount Pictures. All Rights Reserved. ■公式サイトURL:https://september5movie.jp/

  1. HOME
  2. ガジェ通
  3. 史実を緻密な脚本で映画化『セプテンバー5』ピーター&ベンインタビュー「登場人物全てにフォーカスが当たっていて、集中力を保っている」

藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。