【辺境レターズ】第8回 バーカンを語るLive House Pangea 〈後編〉
「いろんなライヴハウスの寸法をメジャーで測りまくった(笑)」
Glimpse Groupベースのツカダサトルです。パンゲアバーカン後編です。ハコ全体のレイアウトやバーカンの位置などを見ていくと、お客さん、そして出演者の両者がライヴに没入できるような細かい工夫が施されていることがわかりました。引き続き店長の吉條さんに話を聞いています。
吉條壽記(きちじょう・としき)さん。バンド、RAZORS EDGEのドラマーであり、ライヴハウスパンゲアの代表。レーベル、Shining April Records、TOUGH&GUY RECORDSも運営する。パンゲアオープン前は神戸スタークラブ、奈良ネバーランドなどで働いていた。影響を受けたライヴハウスのバーカンは同じく大阪のファンダンゴ。「生ビールの注ぎ方がめっちゃ上手くて、“生ビールうま!”って初めて思ったのもファンダンゴでしたね」とのこと。
パンゲアのステージを象徴する壁画。どことなく青が海で、大陸のイメージっぽい感じがカッコいい。
レイアウトも吉條さんが中心になって考えていきました。ライヴハウスをつくる際、まずなにを最初の基準として考えるものなのでしょうか。
吉條「ステージと動線ですかね。まずステージは、バンドが演奏しやすい環境をつくりたいと思いました。高さや広さ、音ももちろんです。レイアウトやサイズを考えていたときは、ちょうどレイザーズのツアーで全国を回っていたときだったので、いろんなライヴハウスの採寸を必ずやってました(笑)。メジャーを持っていって、ステージの幅、奥行き、またフロアのサイズとか。“これくらいのサイズでキャパ何人か”とかやってましたね(笑)」
バンドマンの地の利を活かす大作戦です。これで、吉條さんのなかにモデルとなるライヴハウスも出てきました。
吉條「十三のころのファンダンゴとか、神戸のヘラバラウンジ、難波ベアーズ、東京だと下北沢SHELTERとかを参考にしました。とくにSHELTERは、あのサイズ感で動線がよく考えられているなと思いました。楽屋からステージにカミシモ両方から出られるんです。あれがすごいなと思って」
「カミシモ両方から出られる」(ステージのカミ=向かって右側、シモ=左側)これ、出演者的にとってもありがたいんです。楽屋からステージに出られる動線が左右にあると、通路が狭くても楽器を持って前のバンドとすれ違うことがないので、転換がとにかくスムーズになるからです。で、パンゲアもそうなってるんですよ! 楽屋は広いほうではないのですが、この動線があるだけでずいぶん違います。(ちなみに楽屋に直接入れる機材搬入の裏口があるのもまじですごいと思いました!)
また、パンゲア歴の長い方、気づいたでしょうか? オープン当初、パンゲアにはステージとフロアの柵がなかったのですが、今は柵がつけられるようにステージがフロア側に数10cm広くなっているんです。フロアのスペースをちょっと削ってまで、柵をつけたのはどうして?
吉條「着脱式の柵ですね。2016年9月に増設しました。まあ運営側としては柵があったほうが安心ですし。でも、今も基本は柵をつけずにやっています。もともと僕は柵のないライヴのほうが“接近戦”っていう感じがあって好きなんです。でも、バンドによっては柵をつけてほしいというケースもあります。ライヴのパフォーマンス的にも、いろんな表現に対して寛容でありたいと思っています」
このあたりに、吉條さんのライヴハウスへの考え方が詰まっているような気がします。ちなみにステージの高さも、オープン時より20cm高くなっているそうです。天井までのゆとりを失わない、ギリギリの20cm増。微妙な差ですが、ちょっとでもお客さんからステージが観やすくなるようにという工夫です。出演者の演りやすさだけを優先したつくりではないわけです。
東京で言うと新代田FEVERをひとまわり小さくした感じでしょうか。レイアウトはごく一般的と言えますが、あなどるなかれ、です。ひとつひとつにちゃんとねらいがあるのです
物販スペースがちょっと高くなっているのも、バンドマン的にはすごく嬉しいポイント。ちょっと視線が上がるだけで、「物販スペース」と認識されやすい。お客さんが自然と物販に向かう流れができます
柵を新たに設けた跡。数10cmの差ですが、柵のあるなしでライヴの見え方もずいぶん変わってくるはずです
耳せん売ってます。これはけっこうどこのライヴハウスにもあります。ちなみに外国人客によく売れるという傾向もどのライヴハウスも似ています。実は、日本のライヴハウスは音がデカいらしいんです
バーカンはどこにあるのがいいのか?
で、ハイハイ、そのなかでのバーカンですよ。バーカン。フロア入り口から右に進むとバーカンがあるのですが、つまり、入り口とは反対側にあるということです。
吉條「奥にバーカンをつくれば自然と人の流れがそっちにできるかなと思って。でも、今やったら入り口側にしてもよかったかなと思ったりしてます(笑)。入ったらすぐに頼めますからね。売上的なことも考えたら、多分入り口側にあったほうがいいでしょうし」
これは難しいところですよね……。バンドマン的には、お客さんがちょっとでも前のほうに来てくれたほうが嬉しい。でも、お客さんによっては前のほうにはちょっと行きづらい……なんて方もいらっしゃいます。とはいえ、ステージの真横にあるわけではないですし、個人的にはちょうどいい場所にあるんじゃないかと思います。
吉條「あと、最初はバーカンの注文受け口が違う場所にあったんです。今で言ったら物販スペース側ですね。要は、お客さんがステージに背中を向けて注文する格好になっていたんです。それを、ステージに背を向けることなく注文できる位置に変えました。前のほうでライヴを観ている人も注文しやすいんじゃないかなと思って」
写真右側、青い布を被っているのがPAブース。その手前の机と、真ん中の赤ロープ部分が物販スペース。フード出店などがある日は、真ん中がフードスペースになったりもします。オープン時は真ん中にPAブースがあったとのことですが、ドリンクがかかってしまったりするトラブルを防ぐため、今の位置に
PAブースを移動した際、注文受け口も今の位置(写真真ん中)に変更。以前は右側(写真では募金箱が置いてあるところ)にありました。入り口からはほんの若干離れましたが、ステージに背を向けることなく注文できて、また前のほうで観ているお客さんも頼みやすいようにという工夫です
バーカンの足もとも少し高くなっています。こういうちょっとしたところも嬉しいです
バーカンスタッフは基本ひとり。忙しいときはふたりで、注文の聞き役とお酒をつくる役に分かれます。作業しやすいように物が配置されて、効率よくお酒がつくれるようになっています
たとえばこれは氷を入れるバケツ。製氷機のほうにわざわざ歩いていかなくてもいいように、シンクのコールドプレート上に置いています
瓶の蓋を開ける栓抜きです。お客さんから「あの栓抜きなに?」とよく言われていたので、そのまま商品名に。「that 栓抜き」ということ。パンゲア、アニマで買えます
こうして
こうなる
影響を受けたバーカン
吉條さんには、「影響を受けたライヴハウスのバーカン」があります。それが同じく大阪にある、「ファンダンゴ」です(以前は十三にありましたが、現在は堺に移転して営業中)。
吉條「お酒の種類がたくさんあって、ファンダンゴのバーカンが大好きだったんですよね。ライヴハウス行きはじめのハタチくらいのとき、メニューを見ながら、“700円もするカクテルがある!”とか知るんですよ。そもそもライヴハウスのバーカンでお酒を飲むという行為自体に憧れがありましたからね。それで、“今度これ頼んでみようかな”とか思ってたんです。パンゲアのメニューも多めにしているのは、そういうところからきています」
誰もが通る道かもしれませんが、パンゲアのバーカンにあるのもそんな吉條さんの原点なのです。
吉條「常に、自分が行きたいライヴハウスにしたいなと思ってます。お酒も、ちょっとの手間をかけて美味しく飲んでもらおうというのは絶対ですよね。それに、美味しいビールが飲めるライヴハウスのほうが自分でも嬉しいので(笑)」
右はスタッフの住田悠真さん。パンゲアのブッキングイベントの多くを担当し、吉條さんは「出てくれるバンドに対してメリットを感じてもらおう、という内容の企画を組んでるのがいいなと思います」と信頼を置く。ちなみに住田さんがバーカンに立つこともあり、「瓶ビールがいちばん売れますね。ミサイルは、気合入ってる人が頼むかな、って感じです(笑)」。わかりましたっ。次も気合入れて行きます! パンゲアのみなさん、これからもよろしくお願いします!!!
インフォメーション
Live House Pangea おすすめライヴ情報
2月25日(火) Live House Pangea
Linen Frisco ”natura” release party
LIVE:Linen Frisco , Acidclank(Solo Set) , Amsterdamned , Qoodow
SHOP:HOLIDAY! RECORDS
OPEN/START 19:00/19:30
ADV/DOOR 2,500/3,000(+1D)
https://eplus.jp/sf/detail/4242290001-P0030001
https://livepangea.com/live/linen-frisco-natura-release-party
または各バンド予約
●RAZORS EDGE ライヴ情報
2月2日(日)神戸太陽と虎
GUMX New EP ”Spam Buddy” Tour 2024-2025
LIVE:GUMX , TENDOUJI , RAZORS EDGE
OPEN/START 17:00/17:30
ADV/DOOR 3,500/4,000(+1D)
https://eplus.jp/sf/detail/0078120001-P0030033P021001?P1=0175
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