断熱等級6の140平米の家、断熱・気密にこだわり抜き、夏は暑さピーク時以外はエアコン要らず、空気清浄機も不要に 大阪府茨木市・Hさん宅【断熱新時代・住宅実例】

こだわるうちに住宅オタクに! 断熱にもこだわり、断熱等級6の住宅を建てた

住宅を建てる際、何にこだわるか? 間取りの使いやすさ、お気に入りのインテリア、最新の設備機器……。今回はそれら目に見える部分だけでなく、特に「断熱」と「気密」という目に見えない部分に、とことんこだわって建てられた「断熱等級6」の高断熱・高気密の住宅をご紹介しよう。

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声で家電がコントロールできる「スマートホーム」

大阪府茨木市、緑豊かな住宅街に佇むHさん邸は、外観やインテリアにもたくさんのこだわりが詰まった美しい邸宅。敷地面積170.64平米、延床面積140.07平米の木造住宅は2020年に完成し、間もなく5年目を迎えようとしている。一般的な「尺モジュール」よりも空間が広くなる「メーターモジュール」を採用することで、階段や廊下もゆとりを感じる間取りプラン。イタリア製のテーブルやアーティスティックなシャンデリア、黒をベースにコーディネートされたシステムキッチンなど、まるでホテルのようなお住まいだ。

Hさん邸

※UA値…外皮平均熱貫流率。住宅の熱の出入りのしやすさを表す。値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性、省エネ性が高い
※C値…相当隙間面積。値が小さいほど隙間が少なく気密性が高いことを表す

鳥取県「とっとり健康省エネ住宅」を参照してSUUMOジャーナル編集部で作成

※HEAT20…「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」のこと。住宅外皮水準のレベル別にG1~G3と設定し、提案している
(画像作成/鳥取県「とっとり健康省エネ住宅」を参照してSUUMOジャーナル編集部で作成)

取材はHさんの「アレクサ、シーリングファンオフ、ダウンライト70%」という声から始まった。インテリアや建具という“目に見える部分”だけでなく、音声で家電などをコントロールするスマートホームなど“目に見えない部分”へのこだわりも感じさせてくれるスタートだった。

「実は、一番こだわっていたのは、断熱性能と気密性能なんですよ」とHさん。

目を輝かせながら断熱&気密への思いを話されるHさん(夫※以降、Hさんと表記)(写真撮影:出合コウ介)

目を輝かせながら断熱&気密への思いを話されるHさん(夫※以降、Hさんと表記)(写真撮影:出合コウ介)

さらに隠されたこだわりがあったのか!
そのこだわりポイントと、プロセスを詳しくお聞きすることにした。

正面からみた外観。斜めにレイアウトした門扉や、視線を遮るフェンスなど、外観デザインにもこだわりポイントもたくさん!(写真撮影:出合コウ介)

正面からみた外観。斜めにレイアウトした門扉や、視線を遮るフェンスなど、外観デザインにもこだわりポイントもたくさん!(写真撮影:出合コウ介)

大型テレビや間接照明、シーリングライトでラグジュアリーな雰囲気のリビング。開口部は小さめにして床暖房も設置(写真撮影:出合コウ介)

大型テレビや間接照明、シーリングライトでラグジュアリーな雰囲気のリビング。開口部は小さめにして床暖房も設置(写真撮影:出合コウ介)

断熱性能、気密性能にとことんこだわることに決めた

「我が家は妻と長女(高校生)、長男(小学生)の4人家族。もともとは同じ市内の3LDK賃貸マンションで暮らしていました。そろそろ住宅購入をと考えていたとき、妻の実家にも近い茨木市で建築条件のない土地を見つけマイホーム計画をスタートさせました。それ以前は、断熱や気密、家づくりやインテリアにもあまり興味は持っていませんでした」とHさん。

「ただ、私は花粉症なので、空気清浄機がある部屋は大丈夫だけど、部屋が変わると鼻水が出たりしていましたね。いま考えると、花粉やハウスダストが室内にたくさん舞っていたのだと思います。それに結露にも悩まされていましたね」

ハウスメーカーや工務店の情報を調べ、住宅展示場やモデルハウスを見学するなど理想の住まい像を絞り込んでいくうちに「断熱と気密にはとことんこだわろう」と思ったそうだ。

「インテリアや住宅設備にもたくさんのこだわりが生まれてきたのですが、でも見える部分は後からでも変更できる。しかし、断熱や気密性能は建物を設計する際に考えておかないと、後から追加することはできない。結露や花粉症の対策、そして省エネを考えるなら、見えない部分が重要。そのことにモデルハウス見学や宿泊体験を通じて気づいたのです」

デザインにもこだわりがつまったダイニングキッチン。約24.5帖のLDKに設置したエアコンは1台(14畳用)のみ(写真撮影:出合コウ介)

デザインにもこだわりがつまったダイニングキッチン。約24.5帖のLDKに設置したエアコンは1台(14畳用)のみ(写真撮影:出合コウ介)

性能アップのオプション採用で「断熱等級6」を実現

「断熱や気密性能を体感するために、モデルハウスの宿泊体験も何度もトライしました。泊まってみると、いろいろな気づきもありましたね。たとえば全館空調のメリット、デメリットがわかったこと。男女の身体の構造の違いなのか、私と妻とでは快適と感じる温度が違っていることがわかり、マイホームには全館空調は採用しない、と判断しました」

様々な試行錯誤の結果、納得のいった地元の泉北ホームに住宅設計と建築を依頼。標準仕様でも充実したスペックを持ち、なおかつ設計の自由度が高く、コストパフォーマンスとのバランスの良さを感じたのが決め手だったそう。また、断熱・気密性能アップのために、オプション仕様のグレードアップも施している。

【断熱・気密性能への主なこだわりポイント】

玄関ドア ⇒ 天然木の内部に断熱パネルを持つ高断熱商品、ガラス部分をトリプルガラスタイプにグレードアップ
窓サッシ ⇒ トリプルガラスの製品にグレードアップ。気密性能を考え「引き違い窓」を減らし、「縦すべり出し窓」もしくは「横すべり出し窓」をメインに
屋根断熱材 ⇒ 断熱材の厚さをプラス
換気扇 ⇒ 気密性を保てる同時給排気タイプに変更
などなど。

結果的には「断熱等級6」相当の性能を持つ住まいが完成。標準仕様と性能アップであれば2000万円台の建物であったが、設備や建材のオプションなどを採用することで、3000万円台前半の建築費用となっている。

玄関ドアにもオプションを採用して断熱性能をアップさせている(写真撮影:出合コウ介)

玄関ドアにもオプションを採用して断熱性能をアップさせている(写真撮影:出合コウ介)

リビングの窓はトリプルガラスの大開口タイプを採用(写真撮影:出合コウ介)

リビングの窓はトリプルガラスの大開口タイプを採用(写真撮影:出合コウ介)

レンジフードは気密性を重視して同時給排気型に変更(写真撮影:出合コウ介)

レンジフードは気密性を重視して同時給排気型に変更(写真撮影:出合コウ介)

玄関ホールとリビングの仕切りにはデザイン性の高いハイドア(H2500)を採用。断熱・気密性能が高いので、ドアは開けている時間も長いそうだ(写真撮影:出合コウ介)

玄関ホールとリビングの仕切りにはデザイン性の高いハイドア(H2500)を採用。断熱・気密性能が高いので、ドアは開けている時間も長いそうだ(写真撮影:出合コウ介)

高断熱性能の快適さを、いちばん実感できるのは夏

断熱のこだわりが満載の住まい、実際の住み心地はどうなのだろう?
「冬と夏で比べると、より快適さを感じるのは夏ですね。外部からの熱がほとんど入ってこないので、1階はエアコン1台で充分快適です。最初の3年ほどはエアコンを24時間稼働させていましたが、いまは暑さがピークの時だけ稼働させています。すぐに快適な温度になるし、電気代の価格高騰の影響はあるとはいえ、以前の住まいから広さが倍になり、家電が圧倒的に増えたことを考えると、電気代が安いことに気づきました」

「もうひとつ、うれしいのは空気清浄機が要らなくなったこと。気密性能が高くなったので、花粉症の症状も大きく改善しました。たまに、なんだか鼻がムズムズするなと思ったら、妻が窓を開けていました(笑)」とHさん。

一方、冬場も快適で省エネの暮らしを実現できているようだ。
「各部屋の室温はスマホを使ってよくチェックしています。冬の日中は太陽光も差し込み暖めてくれるので、2階はエアコンを使わなくても17℃~20℃をキープしています。ふとんを出て寒い、と感じることがないですね」

LDKだけでなく寝室や子ども部屋、クローゼットなど各所に温度&湿度計を設置。スマホを使ってリアルタイムチェックが可能!(写真撮影:出合コウ介)

LDKだけでなく寝室や子ども部屋、クローゼットなど各所に温度&湿度計を設置。スマホを使ってリアルタイムチェックが可能!(写真撮影:出合コウ介)

妻にもお聞きした。
「賃貸マンションで暮らしていたときは、冬の寒さと結露のストレスがありましたが、それはまったくなくなりましたね。あっ、いま話していて気がつきましたが、モコモコの室内着を着なくなりましたね! 夫の花粉症対策も考えて2階の洗面・洗濯室にガス衣類乾燥機を設置して洗濯物は室内干しがメインに。洗濯物のベランダ干しがなくなって家事負担が減りました」とのこと。

断熱と気密。基本性能へのこだわりがおすすめ!

もっとこうすれば良かった、と思う改善点をお聞きしてみた。
「換気は熱交換がないタイプにしたのですが、冬場は外の冷気が入ってくるので熱交換タイプにしておけば良かったと思います。建てたハウスメーカーの場合、当時はオプション仕様だったのですが、現在は標準になっているようです。あと、太陽光発電のパネルは最大まで載せておけば良かった。昨今の電気代高騰を予測できていなかったのが残念です」

最後にこれから住まいを建てる方へ、アドバイスをお聞きしてみた。
「やはり、断熱&気密の基本性能にこだわったほうがいい。インテリアなどは後で追加やリフォームできるけど、断熱材はそう簡単には追加ができません。設計段階で決めておかないと柱や梁のサイズにも影響しますからね。宿泊体験もいいと思いますよ。レジャー感覚で泊まってみると、快適さと家族に合っているかどうかがわかると思います」

さすが「住宅オタク」のHさん! ハウスメーカーの担当者にも負けず劣らずの知識と見識をお持ちでした。

●取材協力
泉北ホーム

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