友だち同士で二世帯住宅を建てた! 2組の3人家族、計6人の新しい拡張家族のあり方 神奈川県小田原市
シェアハウスやルームシェアなどの家族以外の人と一緒に暮らす選択肢は今までもありましたが、一緒に家を建てて暮らすとなると、ちょっとめずらしいかもしれません。夫婦や親子などでも、ともに家を建てるのは一大事なのに、「なぜ?」「どのように暮らしているの?」など疑問がつきません。今回は仲の良い友だち家族が集まり、二世帯住宅を建てて暮らしはじめたという家族に理由や暮らしぶりを拝見してきました。
夫婦+子ども×2家族。6人での暮らしがスタート
友達同士の二世帯住宅が建つのは、神奈川県小田原市。二階のバルコニーからは相模湾が見え、まさに絶景のひとこと! 広さは約200平米、6LDKの注文住宅であるこのお住まいに暮らしているのは、宮本家と長久保家の2家族です。
長久保さんのお子さんと、宮本さん。親子のような友達のような、親戚のような、なんともよい距離感です(写真撮影/桑田瑞穂)
二世帯住宅には玄関から水まわり、リビングなどを完全に分けた「完全分離型」と、お風呂など一部を共有する「一部共用型」、すべてを共有する「完全同居型」がありますが、このおうちはすべてを共有する「完全同居型」の間取りです。
1階は主にプライベートを保つ空間として、長久保さん・宮本さん両夫妻の寝室2部屋、2人の子どもにはそれぞれの部屋の合計4室、2階は約35平米のリビングダイニングキッチンとワークスペース、3階はシアタールームとフリースペースで構成されています。家族が多いため、浴室のほかにシャワー室があるほか、トイレは複数を設置していますが、基本的には暮らしている全員で共有しています。
2階のリビングダイニングキッチンは34.8平米。右奥にはドアで仕切られたテレワークにちょうどよい3畳の書斎もあります(写真撮影/桑田瑞穂)
また、お子さんは中学生1人、高校生1人なので、モノの多さとしては大人6人での暮らしを想定、シューズインクロークやウォークインクローゼットなど、収納をたくさん設けています。収納も多く、天井高もあるため、広さ以上の開放感を感じられる、贅沢なお住まいです。
ハイサッシと間接照明、アイアンづかいなど、インテリアも統一されています(写真撮影/桑田瑞穂)
売り出された「山に建つ洋館」を見学、二世帯暮らしがリアルに
長久保家と宮本家は、以前は東京都内の便利な場所にそれぞれ親子3人、別々の家に暮らしていました。妻同士が同じ企業に勤めていることもあり、昔から家族ぐるみで仲良く遊び、交流を深めていました。ここまでなら、よくある「仲良し家族の話」といっていいでしょう。
同じ会社に勤めている長久保さんと宮本さん(写真撮影/桑田瑞穂)
ところが、二世帯住宅を建ててともに住むという話になり、住宅ローンを組んで実際に実行したというからまわりは騒然。しかも場所はまったく地縁のなかった小田原です。当然、「なんで?」「なにがあった?」と質問攻めにされるといいます。
宮本さんは「本当はいろいろ事情があるのですが、説明が長くなるのもあり『ノリ?(笑)』と答えています」と笑います。
その長くなるという話、はじめからひもといてもらいましょう。きっかけはやはりコロナでリモートワークが全面的に導入されたことだといいます。
「コロナ禍になるまで、会社の近くのマンションに居住し、それこそ朝から晩、土日も仕事をしていました。休日で子どもの預け先がなかったときは、職場につれていったこともあります。ところがコロナ禍になって、会社がテレワークを導入。今後の住む場所や働き方、それに暮らし方などをよく考えるように。そこで、一緒に住んだらおもしろいんじゃない?と会話に出るようになったんです」と長久保さん。
リビングの脇にあるワークスペース。二世帯住宅のきっかけはテレワークの普及でした(写真撮影/桑田瑞穂)
当初、2家族ともに、「話半分」だったといいますが、中古物件の不動産サイトで見かけた小田原の山の中腹に建つ洋館を現地見学したところ、一気に「本気モード」になったそう。明治期から昭和にかけて、湘南、大磯や小田原には政財界の要人、文化人などが、別荘を建てましたが、そんな建物のひとつを見たことで、「2家族で住むのってこの広さや間取りなら、ありえるんじゃない?」とリアリティが湧いてきたのだそう。
また、建物に惹かれただけでなく、山や海の自然環境、都内への通勤・通学のしやすさなど、複数の“点”だった条件がつながり、「やってみたい」と、“線”になったのだといいます。
冷蔵庫は海外製。大人6人の食材を考えたら、確かに大型サイズがいいですね(写真撮影/桑田瑞穂)
山の中古住宅、海の新築住宅。最終的に「海の新築」を選択
「アリかも…?」が「できる!」になった2家族は、洋館に住むことは叶わなかったものの、憧れの小田原で真剣に土地や物件を探す日々がはじまりました。
「ほぼ2年間、不動産に詳しい友人に相談したり、複数の中古住宅、土地も見学してまわりました。考えに考え、あれこれ検討しましたが、最終的な選択肢として残ったのが、山側にある中古住宅を買うか、海の近くにある土地に注文住宅を建てるかの2つ。ただ、子どもは東京都内の中学へ通学することが決まっています。そのため、駅へのアクセスのしやすさ、中古住宅の道路事情などを鑑みて、新築で海の近くに注文住宅を建てることにしました」と決断のあらましを振り返ります。
3階のフリースペース。デスクもあり、ワークスペースにもなります。海を見ながらの仕事……!(写真撮影/桑田瑞穂)
その間、長久保さんと宮本さんだけでなく、子どもも含めてみんなで、家についてたくさんの会話を交わしていたそう。家づくりには家族の相互理解や対話、会話が欠かせませんが、こうした風通しのよい会話をすることで、自然と「理想の家」「共同生活」を思い描けたのかもしれません。また、友達と暮らす二世帯住宅、実は無謀にみえて、その背景には「できそうだな」という理由付けがあるのだ、と言います。
「2家族とも単に交流しているだけでなく、知り合ってからの10年間、だいたい1年に1・2回は、1週間以上の長期間、2家族で旅行に行っていたんです。2家族以外にも他の家族がいることもありましたが、だいたいどこの家庭も1回は夫婦げんかが起きていました(笑)。他の家族がいることで、夫婦のケンカの落とし所がみえたり、親子の関係がギスギスしなかったり。ともに暮らす練習ではないけれど、ともに生活していて違和感がないということは分かっていました。まったくゼロから決断したというわけではないんですよ」と長久保さん。
リビングとは別にある、子どもの友達がきたら遊べる部屋(写真撮影/石野千尋)
他にもお互いの両親のことを知っていたり、血の繋がりのあるきょうだい以上に連絡を密にとっていたり。価値観や暮らし方のズレがないことは、お互い承知の上でした。ただ、もっとも気になるのが、お金の話です。
「そこはお互い一番心配だったので、リアルにどこまで出せるのか、包み隠さずフトコロ事情を話しました。子どもは子どもたちだけで遊んでもらって、大人は延々とお金の話をしました」と言います。
3階のバルコニーから。空と海と、開放感……(写真撮影/桑田瑞穂)
3階はシアタールームにもなります。人生を楽しめるお住まい(写真撮影/桑田瑞穂)
いよいよ6人での暮らしがスタート! 合宿のような、シェアハウスのような暮らしに?
そのうえで、間取りは、冒頭に紹介したような「完全分離」や「一部共有」タイプを選ばなかったといいます。
「血縁のない家族がともに暮らすライフスタイルは変則的ですよね。変則的な暮らし方と変則的な間取りを掛け合わせることはしたくなかったんです。資金計画と同様、売却や貸出など、将来にオプションを残しておきたい、そのために間取りは極めてシンプルなものにしました」と長久保さん。
2023年、こうして新築の住まいが完成。ひと足先に長久保さん家族3人での生活をスタートさせました。お子さんは都内まで通学、長久保さん夫妻がテレワークというライフスタイルです。2024年春、宮本さんのお子さんが小学校を卒業して中学生になったことで、宮本さん家族が加わりました(※夫が名古屋で赴任中のため、6人での暮らしは7月からスタート)。
長久保さんのお子さんのお部屋(写真撮影/桑田瑞穂)
宮本さんのお子さんの部屋(写真撮影/桑田瑞穂)
「思った以上に何気ない日々が心地よいです(笑)。前は会社に行くのが好きだったのですが、今は家にいて早めにみんなで夕食を食べたくなります。ご飯時の会話が増えて、子ども達の1日の出来事を聞くのが楽しいですね。日曜日にまとめて買い出しに行く時間すらも、心地よいルーティンになりました」(宮本さん)
「家の中で充実した日々を送れています。
大人の得意が異なることに加えて、子どもにとっての斜めの存在は、子どもにとってもつい盲目的になりがちな私にとってもありがたいです。旅行だけではわからなかった双方の価値観を知り、納得解を見つける過程も含め楽しめる関係をこれからも続けていきたいです」(長久保さん)
気になる生活費や家事分担などはどうしているのか、聞いてみました。
「長久保さんが料理好き、私は掃除・洗濯が好きと、お互いの得意分野を活かせるなと思っています。子どもたちも親子だと甘えがでてしまうけど、大人の集団生活をすることで自立するのではないでしょうか。生活費も大まかには決めていますが、あまり決めすぎないようにしています」(宮本さん)
リビング・キッチンがつながっていて、6人いても話しやすい距離感が保てる広さ(写真撮影/石野千尋)
「友達同士で二世帯住宅」と聞くとびっくりしますが、長い人類の歴史を考えてみれば、夫妻と子どもたちで暮らすという「核家族」で暮らしてきたことのほうがレアです。ましてや長久保さんと宮本さんがはじめに見学した洋館のような住まいであれば、祖父母、親、子ども、親の兄弟、子どもたち、書生さん、お手伝いさんなど、世代も性別も異なる人が集って暮らすことが当たり前でした。いわば「拡張家族」「疑似家族」での暮らしが想定されていたわけで、2家族が見て「ありかも!」と思えたのは、納得です。
血縁関係のある・なしに関わらず、価値観のあう人同士が、個を尊重しつつ、集団で楽しさを共有しながら暮らす。「拡張家族」は、人の住まいの基本でもあり、実は理想的なライフスタイルのような気がします。
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