【断熱DIY】ホームセンター商品だけで賃貸の部屋も夏涼しく・冬暖かくできる! 原状回復OK、内窓・玄関ドア・床などをひと部屋4万円以下で

【断熱DIY】ホームセンター商品だけで賃貸の部屋も夏涼しく・冬暖かくできる! 原状回復OK、内窓・玄関ドア・床などをひと部屋4万円以下で

住まいの断熱の大切さが徐々に浸透しつつある昨今では、自宅の断熱リフォームをする人も増えています。補助金が適用されても、数十万円、数百万円の費用がかかることから、気軽に実施できるとは言いにくいものです。また、自宅が賃貸という人は原状回復の問題で手を付けられないと思っている人もいるのでは。しかし、ホームセンターやネットショッピングなどで調達した資材でDIYすれば、比較的安価に、かつ原状回復も可能な、断熱性を高めるDIYができます。

そこで今回は、自宅の玄関、リビング、寝室など大部分を断熱DIYした梅木亮(うめき・りょう)さんを取材。梅木さんが実際に行ってきた断熱DIYの内容や具体的な方法をお聞きしました。

地方公務員が断熱DIYに取り組む理由

梅木さんは、自治体の都市整備局に勤務する地方公務員です。妻と二人の娘さんの四人で暮らす賃貸住宅の断熱DIYに取り組み始めたのは、2017年ごろだといいます。

「断熱に興味を持ったのは、公民連携プロフェッショナルスクールという社会人向けの教育機関で断熱について学んだのがきっかけです。僕の母は55歳のときに浴室で亡くなっているのですが、断熱のことを学べば学ぶほど、ヒートショックが要因だったのではないだろうかと考えるようになりました。日々、建築と向き合う仕事でもありますし、これはどうにかしないといけないと思うようになりまして。市の職員として、学校の断熱や戸建て住宅の独自基準の制定、市営住宅に太陽光発電システムを導入するPPA事業などに携わっていく一方で、断熱DIYにも取り組むようになりました」(梅木さん、以下同)

(画像提供/梅木さん)

(画像提供/梅木さん)

梅木さんは、断熱DIYの効果を次のように語ります。

「以前は鉄骨造のアパートに住んでいたのですが、冬は暖房を付けなければ到底過ごせない寒さでした。今はRCのマンションということで構造も違いますが、冬も冷気を感じることはほとんどありません。冬場は、内窓を取り付けた出窓部分を天然の冷蔵庫のように活用しています。それだけ外窓から冷気が入ってきていて、内窓で断熱できているということですよね」

今では、同僚や親戚にも断熱の良さや具体的な施工方法を伝え、一緒にDIYに取り組んでいるそうです。断熱DIYをおすすめするときは、詳細な見積もりも添えるといいます。友人宅の掃き出し窓・腰窓・玄関ドア・玄関土間・居間床の断熱化にかかる費用の見積書を見せていただいたところ、総額は約3.8万円~16.5万円。断熱効果や手軽さ、費用などを考慮し、複数のプランを提案しているのだとか。

梅木さんが作成した友人宅の断熱DIY見積書※現在の価格と異なる場合があります(画像提供/梅木さん)

梅木さんが作成した友人宅の断熱DIY見積書※現在の価格と異なる場合があります(画像提供/梅木さん)

業者顔負けの企画力・提案力ですが、梅木さんは事業として行っているのではなく、断熱DIYをした後の感動や心地よさを伝えたいという一心からだといいます。断熱DIYを手伝った方からは「冷暖房の効きが良くなった」「部屋のドアを開け放っていても暖かい」という声も聞かれるそうです。

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断熱DIYは誰にでもできるの? 初心者におすすめなのは「窓」の断熱

住まいのなかで、熱の出入りが最も多いのが「窓」といわれています。比較的簡単にDIYでき、その効果も感じやすいことから「初心者がまず最初に取り掛かるのにおすすめなのは窓」と梅木さんは言います。

「窓の断熱性を高めるDIYのなかで最も簡単なのは『ハニカムシェード』というブラインドを取り付ける方法です。ハニカムシェードは横から見ると段ボール紙のような構造になっていて、間の空気層によって、遮熱性・断熱性が高まります。遮光タイプや上から開口できるタイプなど、近年はさまざまな種類のハニカムシェードが販売されています」

ハニカムシェードを取り付けた窓(画像提供/梅木さん)

ハニカムシェードを取り付けた窓(画像提供/梅木さん)

ハニカムシェードの価格はメーカーやサイズによって異なりますが、3,000円程度と安価な商品も見られます。カーテンレールに取り付けるタイプやつっぱり式の商品を選べば、賃貸住宅でもネジ穴を開けずに取り付けが可能です。既製品を取り付けるだけでも断熱性は高まりますが、梅木さんはある“工夫”をしているのだそう。

「ブラインドと壁の間に、どうしても隙間が空いてしまうんですよ。僕はその隙間に1cmほどの厚さの木の板を入れて、ブラインドと板にも隙間が生まれないようにプラスチック製のL字の資材を取り付けています。L字のプラスチックが『レール』のようにブラインドに沿うため、空気が逃げません」

ハニカムシェードと壁の間に生じる隙間(画像提供/梅木さん)

ハニカムシェードと壁の間に生じる隙間(画像提供/梅木さん)

梅木さんは木の板とL字のプラスチック製の資材で隙間を埋めている(画像提供/梅木さん)

梅木さんは木の板とL字のプラスチック製の資材で隙間を埋めている(画像提供/梅木さん)

DIYで内窓の取り付けも可能だといいます。内窓をつけるというと、かなり大掛かりな工事になりそうなものですが、1万円程度から購入できるキットを利用すれば、誰でも簡単に取り付けられるそうです。

「窓枠の大きさを測って部材をカットする必要がありますが、キットにはわかりやすい説明書がついていて、カットに必要な工具がついている商品もあります。部材をカットしたら、あとは窓にはめ込むだけ。我が家は賃貸住宅なので、内窓の枠は両面テープで取り付けています。ハニカムシェードと比べると、やはり内窓のほうが断熱効果は高いです。ただ、掃き出し窓など大きな窓は、DIYで内窓を取り付けるのは難しいかもしれません。窓の大きさや開閉の頻度などを考慮して、ブラインドと内窓を使い分けるといいと思います」

説明書に従って部材をカットし、はめ込むだけで内窓を取り付けられるキット(画像提供/梅木さん)

説明書に従って部材をカットし、はめ込むだけで内窓を取り付けられるキット(画像提供/梅木さん)

左/内窓を取り付ける前、右/DIYで内窓を取り付けた後(画像提供/梅木さん)

左/内窓を取り付ける前、右/DIYで内窓を取り付けた後(画像提供/梅木さん)

DIY後の温度差は5℃以上!! 注目の玄関断熱DIY

玄関も、熱が出入りしやすい場所の一つです。開け閉めの際に空気が出入りすることはもちろん、金属製の部分も多く、閉めていても玄関ドアそのものから熱が出入りしているのです。しかし、玄関ドアを断熱性の高いものにリフォームするとなると、数十万円の費用がかかります。またマンションの場合、玄関ドアは共用部にあたるため、持ち家であっても独断で改修することはできません。一方、玄関ドアの内側に断熱材を貼り付けるDIYなら、戸建てもマンションも、持ち家も賃貸住宅も断熱化が可能です。

梅木さんは、YouTubeやnoteなどでも断熱DIYの良さや具体的な方法を発信しており、玄関ドアの断熱DIYをテーマとした動画の視聴回数は11万回を超えています。

「玄関ドアは、ドアノブや上部のドアクローザーなどを避けるように断熱材をカットし、磁石で貼り付けるだけです。断熱材と磁石の接着には、断熱材に刺すだけで取り付けられる金属製の『メンディングプレート』を使っています。
断熱材をドアに貼っただけでは見た目があまり良くないので、表面には仕上げ材としてビニル床シートを貼っています。資材の購入にかかったのは、トータルで5,000円程度です。
古い玄関ドアだと、上下左右に小さな隙間があることがあります。隙間が見られる場合は、100円ショップでも売っている『モヘアシール』という起毛したテープで塞ぐと気密性を高められます」

左/断熱材を取り付ける前の玄関ドア、右/DIYで断熱材を取り付けた後の玄関ドア(画像提供/梅木さん)

左/断熱材を取り付ける前の玄関ドア、右/DIYで断熱材を取り付けた後の玄関ドア(画像提供/梅木さん)

左/玄関ドアに断熱材を貼る前の表面温度は14.7度、右/断熱材を貼った後の表面温度は20.8度にまで上昇(画像提供/梅木さん)

左/玄関ドアに断熱材を貼る前の表面温度は14.7度、右/断熱材を貼った後の表面温度は20.8度にまで上昇(画像提供/梅木さん)

断熱材を貼る前の玄関ドアの表面温度は14.7度でしたが、断熱材を貼った後は20.8度まで上昇しました。しかし、サーモグラフィーで見ると、土間は温度が低いことを示す青色のまま。とくにマンションは上下の部屋も同じ場所に玄関があることから、ドアだけでなく土間の断熱性を高めることも大切だと梅木さんは言います。

「玄関の土間は、ベニヤの板と角材、断熱材を使ってDIYしました。ベニヤ板の両側と真ん中に角材を取り付け、その間に断熱材を敷き込んだものを土間の上に置くだけです。土間には傾斜があり、ガタつきが出るため、家具の足などに貼る滑り止めシールで調整します。上からビニル床シートを貼れば、見た目にも綺麗です」

玄関土間の形に合わせてカットしたベニヤ板に角材を取り付け、その間に断熱材を敷き詰めたものを土間の上に置くことで断熱性が高まる(画像提供/梅木さん)

玄関土間の形に合わせてカットしたベニヤ板に角材を取り付け、その間に断熱材を敷き詰めたものを土間の上に置くことで断熱性が高まる(画像提供/梅木さん)

DIY後の玄関土間(画像提供/梅木さん)

DIY後の玄関土間(画像提供/梅木さん)

床はタイルを敷き詰めるだけで断熱性UP! 極薄の断熱材なら段差も最小限に

梅木さんは、家族が最も長い時間を過ごすリビングやキッチンの床の断熱DIYにも取り組んだといいます。床の断熱化というと、フローリングの張り替えや床下断熱を思い浮かべますが、既存の床に木材のタイルを敷き詰めるだけでも断熱性の向上が期待できるのだとか。

「僕が使用したタイルは50cm×50cmで、裏に滑り止めのゴムがついているヒノキ材です。部屋の形や大きさに合わせて端だけカットする必要がありますが、カットするのが難しい場合は端まで敷き詰めようとせず、余った部分に砂利などを敷くのもいいと思います。好みの色や素材を使うことができますし、自然素材なら裸足で歩いても気持ちいいですよ」

左/DIY前のリビングの床、右/DIY後のリビング。右奥がタイルの代わりに砂利を敷いた箇所(画像提供/梅木さん)

左/DIY前のリビングの床、右/DIY後のリビング。右奥がタイルの代わりに砂利を敷いた箇所(画像提供/梅木さん)

梅木さんが使用したタイルは断熱材が施工されているものではないそうですが、さらに断熱性を高めたい場合はタイルの下に“極薄”の断熱材を敷くといいと教えてくれました。

「厚みのある断熱材を敷くと、ドアが開かなくなったり、段差が生じたりしてしまいます。最近では、厚さ4mm程度の非常に高性能な断熱材が販売されています。タイルの下にこういったものを敷けば、より断熱性は高まります」

安全にも注意して、楽しみながら断熱DIYしよう

安価に断熱化できるだけでなく、楽しみながら取り組めるのも断熱DIYのメリットの一つです。梅木さんは「カスタマイズしてグレードアップさせていくことも楽しい」と、断熱DIYの魅力を語ります。

ハニカムシェードと壁の隙間を埋めるためにプラスチック製のL字の素材を使うことも、玄関ドアに磁石で断熱材を貼り付けるアイデアも、ホームセンターや100円ショップを回っているときに思い付いたのだとか。お子さんが小さいころは、ご家族で楽しみながら断熱DIYに取り組んでいたといいます。

「窓ガラスに直接、断熱シートなどを貼ると、膨張率の差分から窓ガラスが熱割れを起こすリスクがあります。おそらくシートにも注意書きとして書いてあると思いますが、DIYするときは、どのような素材であっても説明をよく読むことが大切です」

最後に、断熱DIYの注意点についても教えていただきました。安価に、そして楽しみながら挑戦できる断熱DIY。安全を確保しつつ、できることからDIYに取り組んでみましょう。

●取材協力
梅木亮さん
YouTube「賃貸でもできる断熱DIYチャンネル」

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