藤岡みなみ|工夫の喜びに酔いしれる、そのために引っ越しているのかも【思い立ったがDIY吉日】vol.91
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文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観に、思わず引き込まれちゃいます。今回は、引っ越しについて!
藤岡みなみ
文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。
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工夫の喜びに酔いしれる、そのために引っ越しているのかも
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▲ただの板が重要な役割を果たします。
どうしてこんなに引っ越しが好きなんだろう。
この4年で5回目になる引っ越しの荷ほどきを終え、ひとり考えてみた。
新しい街をだんだん知っていくのが楽しいのはもちろんだけど、暮らしを組み立てることが好きなのかもしれない。
どの部屋をどう使うか。洗面台の横の隙間をどう活用するか。
掃除用品のストックはどこに置くと便利か。炊飯器と米びつの動線はどうすると心地よいか。
決めることは無数にある。これまで作り上げた暮らしのシステムをリセットして、一から積み上げ直さないといけない。
それが面倒で引っ越しが苦手な人もいるだろうし、私も正直ある程度の面倒臭さを感じてはいる。
しかし、なにかをセッティングする際に「そうか、こうすればいいんだ!」と思いつく瞬間が愉快でたまらない。クセになるひらめきがある。
工夫、工夫、工夫。生活とは工夫することだった。一旦便利になってしまうと工夫したことも忘れてしまう。
生活を開拓する喜びを呼び覚ますのが、引っ越しなのだ。
新居の玄関には備え付けの収納がほとんどない。
上着をかけたい気がするが、壁にはフックが2つ付いているだけで、5人家族の私たちには心もとない。
玄関近くの廊下にハンガーラックを置こうか?
なんだか窮屈な感じがするなあ。
ジャンケンで勝った人が上着をかけられることにする?
なんで運任せなんだ、自分のうちなのに。
ああでもないこうでもないと考えているうち、ひらめきがやってきた。
「なんかあみあみのやつをつけたら、フックが大量に増やせるかも!」
なんかあみあみのやつ、の正式名称がわからない。調べたら「メッシュパネル」という名前で売られていることが多いようだ。
でもうちではこれからも「あみあみのやつ」と呼ばせてもらう。
このあみあみのやつが常設のフックにシンデレラフィット。
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▲あみあみのやつ、大活躍!
壁に穴を開けずに問題を解決することができた。気持ちいい!
思い返せば、幼い頃は秘密基地を作るのが大好きだった。家の中でも外でも、毎日のように新しい秘密基地を生み出していた。
「この椅子と椅子の間にマットを置いたら部屋みたいになる!」
「薄い布をかけたら、中から外の様子が透けて見えていい!窓ってことにしよう」
こんなふうに、工夫をして自分だけの空間を整えることに昔から夢中になっていた。
秘密基地の中でゆっくり過ごす時間よりも、こちゃこちゃと空間を作っている時間のほうが長かったのは、そうしているのが一番面白かったからだろう。
まだ生えている大きな葉っぱの先を引っ張ってきてコンクリートの隙間に挟み、軽く触れると葉が茎のほうに戻っていくのを利用して「自動ドアだ」などと喜んでいた。
30秒でできるDIYでトイレをほんの少しだけおしゃれに
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▲貼り付ける時、ちょっとした隙間が大切。
新居のトイレにはちょうどいい台がない。
前の家ではトイレットペーパーホルダーの上に台があり、私はしないけどまあ人によっては本とかスマホとかも置けるし、ちょっと便利だった。
試してみたかったDIYがある。友人宅に行った時に教えてもらった超簡単な裏技だ。
木版(まな板や木製トレー、小さいすのこなど)にブックエンドを両面テープで固定する。
トイレットペーパーホルダーに上から差し込めば、あっという間に小物置き場ができる。
30秒もあれば作れるのにてきめん、それっぽくなる。
上に何か置いてもいいし、置かなくても、トイレのおしゃれ度がわずかに数%くらい上がる。
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▲たいてい差し込めるようになっている。
実はこの方法を知った時、面白い工夫だと大いに感動し、なぜうちはもう台が付いてしまっているんだろうと少し残念にすら思っていた。
それくらい私は、工夫ができるチャンスをうかがっている。
新しい家はまだ、全然便利じゃない。
それはひらめきしろが大量にあるということでもある。工夫パラダイスだ。
すべてを攻略した時、また引っ越したくなっているのかもしれない。
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▲急きょ呼び出されたパンダ、花。
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「Pacoma」はホームセンター系のフリーペーパーに出自を持つ、「暮らしの冒険」がテーマのライフスタイル系Webマガジン。ノウハウ記事からタレントの取材記事まで「暮らしを楽しむためのアイデア」をテーマに日々発信しています。
ウェブサイト: http://pacoma.jp/
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