デジタルデトックスは2024年のテックトレンドか、非スマホがクラファンで約1億円調達

ここ数年、アメリカでは“非スマート”な「Dumb Phone」が復活を遂げている。アメリカの同市場はキャリアと契約を結んだメーカー各社の参加で競争が激化し、Counterpointの昨年発表によると、2023年の販売数は280万に達したという。

非スマートフォン復活の背景にあるのは、国を問わず深刻な社会問題になっているスマホ・SNS依存だ。メンタルヘルスを意識してデジタルデトックスを唱えるZ世代・ミレニアム世代の間で、機能をそぎ落とした安価な携帯電話の需要が増加。TikTokでは「#bringbackfliphones」(折りたたみ携帯電話を復活させよう)といったハッシュタグで大量の動画がアップされ、ビュー数を稼いでいる(その動画はスマホで撮影したもので、スマホで視聴するのかもしれないが…)。

TikTokの「#bringbackfliphones」検索結果画面

ミニマル機能の非スマホ製品が約9800万円の支援を獲得

そうした状況の中、2024年4月にクラウドファンディングサイトIndiegogoでEインクのQWERTYフォン「Minimal Phone」のプロジェクトがスタート、終了まであと数日というところでなんとか目標金額を達成。達成率や達成速度的には地味ながら、1710人の支援者からおよそ9800万円もの支援を獲得した。

Image Credits:Minimal Company社の公式Xアカウント

縦120ミリ×横72ミリの「Minimal Phone」はAndroid 14対応で、メッセージやカレンダー、配車サービスなど必要不可欠なアプリのみ使用可能だ。前面に8MPレンズ、背面に16MPレンズとフラッシュ搭載で撮影もできる。効率とシンプルさを求めるユーザーに理想的なバランスを実現し、「スマホ使用体験を再定義した」としている。

見た目は小さめの電子書籍端末のよう。Image Credits:Indiegogo

4000mAhバッテリー搭載で4日間使用可能。完全に使い切って電池が0%の状態から充電して、わずか30分で80%に到達、1時間でフル充電するという。表示に一切電力を使わないE-inkディスプレイによって長期のバッテリー寿命を実現している。

ベッドに入ってからもスマホにくぎ付けの毎日に疑問

開発はロサンゼルスを拠点とするMinimal Company社。「Live More, Scroll Less」(「スクロールばっかしてないで、ちゃんと生きよう」ほどの意味)を謳うMinimal Phoneは、共同設立者兼CEOであるAndre Youkhna氏の個人的な体験から生まれた製品だ。Youkhna氏は夜ベッドに入ってもなかなか寝付けず、SNSアプリの画面をひたすらスクロールしてしまうことに悩んでいた。


スマホやSNSから距離を取るため、市場に出回る「Dumb Phone」をいくつも試したが、既存製品は機能が制限されすぎていて満足できなかったという同氏。その後、テックスタートアップの経験豊富なArmen Youssefian氏を最高設計責任者CDO、応用数学・コンピュータ工学の修士号を持つRobert Abnous氏をCTOに迎え、Minimal Phoneが誕生したのである。

日本でも「ガラホ」が勢力拡大中?

アメリカでは、スマホ依存やSNS中毒は2010年代前半からすでに認識されていた深刻な社会問題だ。2020年リリースのNetflixオリジナルドキュメンタリー『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』(原題:The Social Dilemma)はSNSが人間に与える悪影響を検証。昨年10月には41州がInstagramを運営するMeta社を提訴、AIアルゴリズムでドーパミンの分泌を促し、若者をアプリ漬けにしていると非難した。

Minimal Phoneが1億円もの支援を獲得したのも、こうした背景と消費者の切実な需要があってのことだろう。「デジタルデトックスは2024年のテックトレンドになる」と予測する海外メディアも複数存在する。


日本でも今、3Gサービス終了によりついにガラケーが使えなくなるという状況で、「ガラホ」への関心が高まっている。ガラホは見た目が折りたたみのガラケーで機能がスマホという組み合わせ。ガラホを検討中だがデザインが好みではないという層をターゲットにすれば、「Minimal Phone」のような次世代「Dumb Phone」にビジネスチャンスがありそうだ。

引用元:
Minimal Company
Indiegogo
Minimal Company Xアカウント

(文・Techable編集部)

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