新感覚サスペンス・スリラー『マッチング』内田英治監督インタビュー「良い演技って実際に血が出るより怖いんですよね」

身近すぎるアプリから始まる恐怖を描く、新感覚サスペンス・スリラー『マッチング』が2月23日(金・祝)より公開中です。

ウェディングプランナーとして仕事は充実しながらも恋愛音痴な主人公・輪花(りんか)役には土屋太鳳、輪花とアプリでマッチングする“狂気のストーカー”永山吐夢(ながやま とむ)役に Snow Man の佐久間大介、輪花に想いを寄せるマッチングアプリ運営会社のプログラマー・影山剛(かげやま つよし)役を金子ノブアキが演じます。そして輪花、吐夢、影山が巻き込まれていく「アプリ婚連続殺人事件」を杉本哲太、片山萌美、真飛聖、後藤剛範、片岡礼子、 斉藤由貴ら実力派キャスト陣が集結。

原作・脚本・監督を務めた内田英治さんにお話を伺いました。

――本作とても楽しく拝見させていただきました。翻弄されました…!原作・脚本・監督を担ってらっしゃるということでご苦労も多かったのではないでしょうか。

サスペンスということで特に脚本は苦労しました。「ここを変えると、ここがズレてくる」という、修正も大変になってくるので。登場人物たちの年齢に辻褄が合っているか、とか、本作では過去と未来を行き来するので、出来事を書き出して整理したりしました。ミステリーって読むのはめっちゃ楽しいですけれど、作るのはなかなか大変だなと。ミステリーやサスペンスの小説を書かれている皆さんは本当にすごいなと改めて尊敬しました。

――本作でミステリーを選ばれた理由はどんなことですか?

20代の頃はミステリーが好きで、ミステリーしか読まない人でした。純文学とかそういったものは読まずに。10代の頃はハヤカワ・ミステリ文庫から入って、20代になってからは髙村薫さんなど日本の作家さんも読み始めて。なので、好きだということには自信があるのですが、作ることには自信が無かった。

ヒューマンドラマを作るのとは、全然違う脳の部分を使うんですよね。理数系というか数字の世界。僕、その分野がめちゃめちゃ苦手で。でも、1つのジャンルじゃなくて色々なジャンルに挑戦したいなと思った時に、避けては通れないのがミステリーの世界ですよね。それで、今回1回チャレンジしてみようと。でもまた次にやらせていただくことがあるとしたら、売れているミステリーの原作に挑戦したいです(笑)。プロの小説家さんがしっかり練られてきた物を映像化出来るということは幸せなことなんだなと思います。

――原作があると「結末を知っている人がいる」というウィークポイントがあるかもしれませんが、確かにトリックなどは考えることが本当に大変そうですよね。

しかも、良いミステリーってオチを知っていても何度でも読めますからね。

――題材がマッチングアプリという所がリアリティありますし、便利なサービスですけれど、ここまではなくとも実際に怖いことはたくさん起こっていそうな気がしました。

スタッフの中にもマッチングアプリで出会ってお付き合いをして、結婚して幸せそうな方もたくさんいるので、そういう話を聞いて心から「おめでとう」と思いつつ、一方ではトラブルも起こっている世界ですよね。こういう、知らない人同士の出会いは形を変えて存在していたわけですけれど、例えば、明治大正時代のお見合いとか。いつの時代から生まれたのかは分からないですけれど、知らないもの同士がある日突然恋人になるというのは面白いですよね。

――劇中に昔のチャットも登場していて、確かにチャットもマッチングだよなあと。

マッチングアプリは優良なものは運営会社がきちんと安全面を考慮していますけれど、データ回線時代のチャットなんて、本当に相手が誰か分からないですものね。それこそホラーだなと思います。今後はもっと恋愛の過程をすっ飛ばす便利なサービスが出てくると思いますし、100年後には全然違う価値観になっていそうで、そういうことを想像するのも面白いなと思います。

――おっしゃる通りですね、出会いは進化し続けて。

出会うのは人間と人間なんで、そこには良いドラマもあれば、悪いドラマもある。僕はどっちかというと、悪いものが好きなんで、この様な作品が出来上がったわけです。

――土屋太鳳さん演じる輪花がアプリの悪いものに翻弄されていく姿にハラハラしました…!

本作を作り始めて色々な方に取材をしたのですが、人の幸せを演出する会社に勤めていながら、自分の幸せを置き去りにしてきたという方が実際にいて。輪花はウェディングプランナーですけれど、仕事が激務だからこそアプリを使う。という導入の部分を作りやすいキャラクターではありました。土屋さんに元々持っていたイメージが華やかな作品に出ている方だったので、僕なんぞの作品にはご縁が無いだろうと思っていて。でも、実際にはしっかりと恐怖に立ち向かってくれて、汚れるシーン、大変なシーンをやってくれる強さがあって。そして、何よりスタッフに愛される女優さんです。輪花は強さを持っている女性ですけれど、またご一緒させていただく機会があったら、もっと恐怖に翻弄される土屋さんも撮ってみたいです。

――佐久間大介さんも、今まで見たことの無い様な表情をたくさんされていました。

僕は佐久間さんとリハーサルもするし、ずっと演技を見ているから、佐久間さんの違った一面という部分が分からなくなっていた部分があるのですが、本人はさらに分からなかったと思います。物理的に自分の演技を見られないですしね。でも、試写を観た方に「佐久間くん良かった」とたくさん言っていただくので、良かったなと思います。

――グループの中でも明るい方だなという印象が強かったので、ファンの方も驚くのでは無いかと思います。現場では元気いっぱいだったのでしょうか?

初めて会った時からもう全開モードで。波長が人よりも30パーセントくらい高いのかもしれない。昔からそうだったのか、今度聞いてみます(笑)。現場でもずっと明るいのだけれど、役作りをすごくちゃんとやってきているんで、本番になるとスパッと吐夢になっていました。めっちゃ明るいんですけど、目がスリラー向きだなと。「目、怖いね」ってよく褒めさせていただきました。

他の作品とか観ていると、全く悪く見えない方がめっちゃ悪役をやっていたりして、しらけることもあるので、なるべくそうならないように、 佐久間くんなりの怖さみたいなものは、話し合ったり、僕も考えて現場で出そうと工夫していました。

――ミステリーの演出をする上で監督はどんなインプットをされたりしましたか?

ネットとかで過去の事件を見ているとヒントが結構あったりするんですよね。やっぱり想像力の限界ってあるので。現実の方がなんというか、伏線が繋がってないというか、実際の人間って考えずに悪いことするやつはするじゃないですか。「え、なんでお前そんな悪いことしちゃったの」みたいな人が実際にいる。でも僕らが脚本を書くときは“理由”を絶対に探すので。そういうのを解消したい時は、昔の事件を調べることがあります。

――本作でミステリーを初めてご覧になる方もいるかもしれませんね。

映画が出来上がった付近は、ちょっと怖さがぬるかったなって反省してたんです。でも、台湾の映画祭で先行上映をした際に「怖い」という感想が多かったり、目を覆ってる方もいて。殺人事件の直接的なシーンは描いていないのですが、その代わりに演技はすごくリアルにお願いしていたので。皆さんとても良い演技をしてくださって、良い演技って実際に血が出るより怖いんですよね。

――今日は貴重なお話をありがとうございました!

映画『マッチング』大ヒット上映中!

出演:土屋太鳳
佐久間大介 金子ノブアキ
真飛聖 後藤剛範 片山萌美 片岡礼子
杉本哲太 斉藤由貴
監督・脚本:内田英治
原作:内田英治『マッチング』(角川ホラー文庫刊)
音楽:小林洋平 共同脚本:宍戸英紀
主題歌:Aimer「800」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
製作:『マッチング』製作委員会 制作・配給:KADOKAWA
(C)024『マッチング』製作委員会

【ストーリー】ウェディングプランナーとして仕事が充実している一方、恋愛に奥手な輪花(土屋太鳳)は、同僚の尚美(片山萌美)の後押しでマッチングアプリに登録をすることに。
勇気を出して一歩踏み出し、デートに臨んだ輪花だったが、現れたのはプロフィールとは別人のように暗い男・吐夢(佐久間大介)だった。
その後も執拗にメッセージを繰り返し送る吐夢に恐怖を感じた輪花は、取引先でマッチングアプリ運営会社のプログラマー影山(金子ノブアキ)に助けを求めることに。しかし時を同じくして”アプリ婚”した夫婦が惨殺される事件が連続して発生。被害者たちが輪花の勤める結婚式場で式を挙げていることが判明するのだったー。

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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