正月に飲む「お屠蘇(おとそ)」とは?その意味や語源の由来を解説
正月に飲むお酒の「お屠蘇(おとそ)」。
名前だけなら聞いたことがあるかも知れませんが、その由来や正しい飲み方とはどうなっているのでしょうか。
そこでここでは、お屠蘇がどのようなものかを解説します。
「お屠蘇(おとそ)」とは?
お屠蘇は、正月にその1年の無病長寿を願って飲むお酒です。
無病長寿を願って飲むお酒
お屠蘇にはさまざまな生薬が漬け込まれており、いわゆる薬草酒の一種です。
飲むことで邪気を祓い、1年の無病息災を祈るという意味が込められています。
実は正月に飲む日本酒の事ではない
広い意味で、お正月に飲む日本酒を「お屠蘇」と言い表すことがありますが、もともとは薬草酒を指す言葉。
日本酒に対して使う場合もあれば、みりんに薬草を漬け込んで作る場合もあるので、正月に飲む日本酒を指す言葉ではないんです。
本来のお屠蘇
本来、お屠蘇とはどんなお酒だったのでしょうか?
お屠蘇の歴史
お屠蘇の歴史は、平安時代に現在の中国にあった唐までさかのぼります。
唐から伝来し平安貴族に広まる
正月に薬草酒を飲むという文化は唐で生まれ、平安時代に日本に渡来してきました。
当時は宮中の正月行事として広まり、貴族の間でだけ行われてきました。
江戸時代ごろになって、やっと一般にまで広まったそうです。
元来「屠蘇散」「屠蘇延命散」と呼ばれる薬用酒
お屠蘇の中身は、もともと「屠蘇散」「屠蘇延命散」と呼ばれる生薬です。
「屠蘇散」「屠蘇延命散」には、胃腸を活発にして血行を良くし、風邪を引きにくくする効能があるといわれています。
何かと食べ過ぎてしまったり、胃腸に負担が多いお正月には合理的な風習ともいえますね。
お屠蘇の作り方
屠蘇散の中には、「大黄(ダイオウ)」「桂皮(ケイヒ)」「防風(ボウフウ)」「山椒(サンショウ)」「桔梗(キキョウ)」といった生薬が5~10種類程度配合されています。
これらの生薬を日本酒やみりんに漬け込んで作ります。
大体5~8時間漬け込めば成分が抽出されますので、そうしたら屠蘇散を取り出すのだとか。
お屠蘇の飲み方・作法
お屠蘇を飲む前には、必ず手を清めて神棚や仏壇を拝んでおきましょう。
家族が揃ったら新年の挨拶を済ませて、おせちを食べる前に飲みましょう。
お屠蘇をお正月らしい感じの酒器に入れたら、家族全員で東の方角を向いて飲みます。
飲む人の右側からお屠蘇を注ぎ、家族でも年下の人から先に飲むようにしましょう。
酒器にお屠蘇を注ぐときには3回に分け、飲むときも3回に分けて飲みきるようにしましょう。
飲むときには、「一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」と唱えます。
お屠蘇の語源
お屠蘇の語源には、様々な説があります。
代表的なところでは、お屠蘇の「蘇」が悪鬼(災いの象徴)を表し、それを「屠る(体を切ってバラバラにするという意味)」という意味が込められているとする説。
鬼気(悪いものの気配)を屠り弱った魂を蘇生させるといった意味が込められているという説などがあります。
お屠蘇の注意点
縁起のいいお屠蘇ですが、お酒ですので飲む際には注意が必要です。
お屠蘇を飲んだら運転は厳禁
日本酒やみりんを使ったお屠蘇を飲んだ後の運転は絶対に避けるようにしましょう。
くれぐれも、「お屠蘇を飲んだからきっと事故も避けられるはず!」なんて思わないように!
子供への強要はしないように
お屠蘇を飲むのは、1年の無病息災を祈るおまじない的な意味合いが強いものです。
とはいえ、未成年や子供には絶対に強要はしないようにしましょう。
あくまで“おまじない”“儀式”ですので、子供は酒器に口をつけて「飲むふり」で十分。
お屠蘇とはいえれっきとしたお酒なので、絶対に未成年には飲ませないようにしましょう。
まとめ
お屠蘇は、古代中国・唐の時代にまで起源が遡るお酒です。
健康祈願の縁起物として古くから飲まれてきましたが、もともとは薬草酒なので、正月に飲むお酒を指す言葉ではありません。
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