気になる『Flash』での『iPhone』アプリ書き出しは?新発表が相次いだ『Adobe MAX 2009』を振り返る
アドビシステムズは24日、10月4日から7日に米国で開催されたカンファレンス『Adobe MAX 2009』のプレス向け報告会を開催しました。アドビのDMOテクニカルエバンジェリスト太田禎一氏は、新製品や新技術に関する多数の発表があった『Adobe MAX 2009』から、目立つトピックをピックアップして解説。中でも『Flash』の新版『CS5』で用意されている『iPhone』用アプリケーションの書き出しについては質問が多く寄せられ、関心の高さがうかがえました。
・『Flash』の新機能をハイライト
『Flash Professional CS5』の新機能ハイライトとしては、テキストのオーサリング機能強化、『Flash』のスクリプト言語であるAction Scriptのプログラムをテンプレート化できる『コードスニペット』、ソースファイルをXMLベースで保存するファイル形式であるXFL、そして『iPhone』アプリの書き出し機能が紹介されました。これらの機能は11月中旬に英語版で公開予定のパブリックベータ版で実装され、実際に利用できるようになります。
強化されたテキストのオーサリングを実現する『TFL(Text Layout Framework』は、既にFlash Player 10で実現しているテキスト機能を『CS5』でコントロールするもの。高度なスタイルの適用や、各国の言語についてロケール(言語や国ごとに異なる単位や記号などの表記規則)の対応などが盛り込まれ、紙に印刷するクオリティをウェブ上で実現していく狙いがあるそうです。
『コードスニペット』は、Action Scriptによるプログラミングが苦手なユーザーでも、動きのあるコンテンツを制作できるようにする機能。必要な機能を実現するために定番となるスクリプトを『スニペット』と呼ぶ単位で管理して、そちらを適用後、パラメータなどを編集することによりコンテンツを制作できます。会場では、ゲームのようにキーボード操作でキャラクターを動かすのに必要な『コードスニペット』を使って、キャラクターを動かすデモを実演していました。『コードスニペット』は、ユーザーが自由にカスタマイズしてXML形式のファイルで保存、配布できることから、将来的には『ツクール』のように簡単なゲーム制作ツールが実現するかもしれません。
XFLは、これまでバイナリ形式で保存されていた『Flash』のソースファイルを、XMLベースの非圧縮の形式で保存できるようにするもの。汎用のバージョン管理ツールなどでソースファイルを管理しやすくする目的ですが、アドビはXFLの仕様をオープンにするとしており、アドビ以外のサードパーティー製アプリケーションでソースファイルのオーサリングができる環境が実現する可能性を示唆していました。
・IPA書き出しのメニューが追加
注目の『iPhone』アプリの書き出しについても、デモを交えて説明されました。従来、ウェブ上で公開するためにSWF形式で書き出していた「パブリッシュ」のメニューに、『iPhone』アプリの形式であるIPA形式の書き出しが追加されていることが確認できます。ただし『iPhone』アプリの書き出しには、開発者がアップルコンピュータとデベロッパー契約して発行される電子証明書が必要とのこと。
IPA書き出ししたファイルは、その上でFlash Playerが動作するのではなく、通常のObjective-Cで開発したアプリケーションと同じように扱えるそうです。アプリケーションのファイルは、『iTune』に読み込んで『iPhone』と同期させ、『iPhone』上で動作を確認できるようになります。『AppStore』への登録も可能。質疑応答では「Flashのすべての機能が使えるのか?」という質問があり、それに対しては「すべての機能をエクスポートできるが、デスクトップパソコンと比べて動作パフォーマンスが出ないことが問題になることは認識している」と回答がありました。
・モバイル対応進むFlash Playerと『AIR』
2010年上期にリリースを予定しているFlash Player 10.1については、モバイルへの対応が大きなトピックとして紹介されました。従来のWindows、Mac OS、Linuxに加えて、Android、BlackBerry、Windows Mobile、Symbian、Palm Web OSといった主要スマートフォンプラットフォームへの対応が予定されています。
新機能のトピックとしては、マルチタッチやジェスチャーへの対応、マイク入力への直接アクセスが挙げられており、スマートフォン上で動作するコンテンツを意識した機能強化が予定されているようです。
2010年上期にリリース予定の、アプリケーションの開発/実行環境『AIR 2.0』については、USB大容量ストレージ検出、OSの機能にアクセスする機能、HTML 5とCSS3への一部対応などが紹介されましたが、今後のロードマップとして、2010年にはFlash Pleyer 10.1のスマートフォンへの実装が進み、その後『AIR』の実装が進むとコメント。『AIR 2.0』については後日、プレス向けに説明会を開くとアナウンスしました。
・『Flash』から分化する開発ツール
ウェブ上でリッチなユーザーインタフェースを実現する“RIA(Rich Internet Application)”の開発に向けて、2010年上期にリリース予定の『Flash Builder 4』と『Flash Catalyst』が紹介されました。デザイナーとプログラマーが両方使えるツールが『Flash』で、プログラマー向けに特化したツールが『Flash Builder』、デザイナー向けに特化したツールが『Catalyst』という位置づけになります。
『Flash Builder 4』は、現在アドビが提供している『Flex Builder 3』の後継となる開発ツール。データ中心の開発機能を整備しているのが特徴で、ウィザードを使って既存のAPI(Application Programming Interface)とデータを簡単に接続できます。デモでは『ぐるなび』のレストラン検索APIを利用した、レストラン検索のユーザーインタフェースを短時間に開発する内容が実演されました。
このユーザーインタフェースのデザイン部分を作るのが『Catalyst』。『Illustrator』『Photoshop』などで制作したデザインを読み込んだ後、画像にスクロールバーやテキストフィールド、ボタンなどのコンポーネントを配置したり、ボタンを押した際などのアクションを簡単に定義できます。こうした画面のデザインや動きを『Catalyst』で制作し、プロジェクトファイルを『Flash Builder』に渡してプログラマーによる開発を進めるワークフローを想定しています。
・『FITC』が日本でも開催
最後に、デザイナーや開発者など、アドビ製品のユーザーグループが主催するカンファレンス『FITC』が日本でも開催されることが発表になりました。11月28日(土)に東京・汐留のベルサール汐留で開催されます。先進ユーザーによるプレゼンテーションのほか、『Adobe MAX 2009』で発表された最新情報、新製品や新機能のプレビューが予定されているとのこと。ことしは日本で『MAX』を開催しないそうなので、最新情報をチェックしたい方は参加を検討してみるとよさそうです。
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宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます
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