多様化するトレーラーハウス。災害支援、公共施設、宿泊、店舗など様々な可能性に注目
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東京ビッグサイトで「東京トレーラーハウスショー2023」が開催されると聞いて訪れてみた。トレーラーハウスが立ち並ぶ姿は圧巻だったが、その利用方法は実に多様だ。どんな利用方法があるかについて、それぞれ見ていこう。
【今週の住活トピック】
日本最大級!43台のトレーラーハウスが一堂に「東京トレーラーハウスショー2023」
トレーラーハウスとは?キャンピングカーとは違うの?
SUUMOリサーチセンターは、2023年のトレンドとして「平屋回帰」を予測した。単なる平屋ではなく、コンパクトな平屋のことで、住宅の面積が小さな主拠点の平屋と、小屋やタイニーハウスなどのサードプレイスの平屋に分類している。トレーラーハウスは後者に該当する。
一般社団法人日本トレーラーハウス協会によると、トレーラーハウスは、次のように定義されている。
「トレーラーを一定の場所に定置し、土地側の給排水配管電気等の接続が工具を使用しないで脱着できる構造体であり、公道に至る通路が敷地内に確保されており、障害物がなく随時かつ任意に移動できる状態で設置したものをトレーラーハウスと呼ぶ。」
キャンピングカーも、小さいながら車の中にベッドやキッチンを設置したりできるが、車のバッテリーの電気を使い、備えたタンクの水を使う。排水もタンクにためて処理する必要がある。一方トレーラーハウスは、タイヤの付いたシャーシ(車台)に載せて、車で牽引して公道を移動する。一定の場所に設置して、住宅と同じように外部の水道や電気などの生活インフラと接続する。そのため、トレーラーの中にはトイレやシャワールームも設置でき、エアコンなどの家電も使うことができる。
まるで小さな小屋のようだ。ただし、小屋は建築物だが、トレーラーハウスは原則として自動車に該当するので、市街化調整区域などの建築物が建てられない場所にも置くことができる。
災害支援から店舗、グランピングまで多様に利用できるトレーラーハウス
こうした特徴のあるトレーラーハウスなので、さまざまな利用方法がある。今回の「東京トレーラーハウスショー2023」では、会場を8つの展示ゾーンに分けて、トレーラーハウスを展示している。
●災害支援
●公共施設
●事務所
●店舗
●グランピング&レジャー
●レンタル
●シャーシ(車台)
●未来型
「災害支援」ゾーンには、防災基地局トレーラーやレスキューホテル、室内のウィルスや細菌を外部に流出させるメディカルキューブ、トイレキューブなどがあった。
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通信・発電や一時救護が可能な防災基地局トレーラー(手塚運輸)
※各掲載写真はいずれも筆者撮影
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カプセルベッドを4台設置したカプセルキューブ(写真右)、トイレキューブ(写真中奥)、メディカルキューブ(写真左)(いずれもトレーラーハウスデベロップメント)
同様に「公共施設」ゾーンには、シャワーキューブや低床トイレキューブ、スモーキングキューブ(分煙時の喫煙所)などがあった。
また、「レンタル」ゾーンになるが、ベビーケアトレーラーというのもあった。内部には、授乳スペース、おむつ替えスペース、着替えスペースがあり、ママたちには嬉しい場所だと思った。
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ベビーケアトレーラー(西尾レントオール)
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ベビーケアトレーラー内部。奥にカーテンで仕切れる授乳スペースが2つ、手前におむつ替えスペースなどがある
もちろんトレーラーハウスは、「事務所」や「店舗」としても利用でき、展示会場には担々香麺を提供するキッチントレーラーなどもあった。
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エアストリーム(キャンピングトレーラー)のキッチン仕様は見た目もかわいい(トレーラービレッジ)
さて、住まいとしての利用方法は主に「グランピング&レジャー」だろう。自然豊かな場所などに置いて、のんびりくつろげるトレーラーが数多く並び、サウナ専用トレーラーも2台展示されていた。
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グランピングトレーラー(奥)とデッキトレーラー(手前)を並べて設置した展示。取り外せないウッドデッキは取り付けられない(建築物になる)が、トレーラーを並べれば広々としたウッドデッキも一体的に使える(トレーラーハウスデベロップメント)
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サウナ専用トレーラー(トレーラーハウスデベロップメント)
電線から電気を得られなくても生活できるトレーラーハウスも
次に、「未来型」ゾーンの中からオフグリッドトレーラーハウスを紹介しよう。
生活インフラが遮断、あるいは整備されていないといった場所では、電気などが使えなくなるが、太陽光パネルや太陽熱温水器などを搭載したエネルギー自立型のトレーラーハウスなら、発電して蓄電池にためた電気を使い、温水器のお湯でシャワーを浴びるといったことも可能。水を使わないトイレも設置してあった。
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オフグリッドトレーラーハウス(イスズ)
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車内には蓄電池・全熱交換型換気システムなどの周辺機器(左)、おが屑でし尿を分解させるバイオトイレ(右)が設置されている
最後に紹介するのは、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトを主導する工学院大学教授・鈴木敏彦氏の活動に賛同した淀川製鋼所が、中銀カプセルタワーの1つを取得し、トレーラーカプセルとして再生したもの。黒川紀章氏が提唱したメタボリズムの設計思想が、トレーラーハウスとして継承されている。
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中銀カプセルタワーのカプセルを載せたトレーラー(淀川製鋼所)
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動く中銀カプセル「YODOKO+トレーラーカプセル」の内部
ニーズが変わる!?不動産から可動産へ
さて、展示場では各種のセミナーも開催されていた。筆者はこのうち、YADOKARI代表取締役の上杉勢太氏による「『可動産』と『タイニーハウス』の可能性」を聞いた。
これからは不動産から可動産へと、ニーズが変化するという。その背景には、人口が減り単身世帯が増えることに加え、コロナ禍で二拠点居住やアドレスホッパーといった新しい生活スタイルが広がっていることがある。住宅コストが暮らしを圧迫する一方で、災害住宅としてコンテナ状の住宅が使われるなど、小さな家が注目されるようになった。
海外には先行事例が多い。北欧では、住宅キットを使ってDIYでサマーハウスを建てたりしているし、アメリカではリーマンショックを機に、小さな家でシンプルに暮らすというタイニーハウス・ムーブメントが起きた。同様に、車を使ったVAN×LIFEというムーブメントも起きている。
日本でも、テレワークが加速し、移動式店舗・オフィスが増加している。不動産は建築基準法の制約を受けるが、VANやトレーラーハウス、移動可能な小屋などの可動産であれば、絶景の無人駅に人を集めるといったこともできる。というような可能性の広がりについて、上杉氏は熱く語っていた。
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「グランピング&レジャー」ゾーンに出展したYADOKARIのトレーラーハウス
トレーラーハウスは、設置場所の自由度の高さや住宅取得のコスト軽減などのメリットもあるが、暮らし方が多様になるこれからは、生活拠点の選択肢の一つとして注目されていくのではないか。好きな場所で好きなことができるスタイルが広がるほど、トレーラーハウスの新しい利用方法も増えていくだろう。
●関連サイト
日本最大級!43台のトレーラーハウスが一堂に「東京トレーラーハウスショー2023」
東京トレーラーハウスショー2023公式サイト
SUUMO「トレーラーハウスとは?住居にする方法や用途、価格、設置方法、かかる税金は?」
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