1台で完結するDJ機器『nextbeat』製品レビュー

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ワコムが初めてDJ機器に参入し、9月18日に発売した新製品『nextbeat』。ターンテーブル(あるいはCDJ)2台とミキサー、エフェクター、サンプラーの機能が30×30cmの本体1台に収まった、新しいコンセプトのDJ機器として注目を集めています。そのコンセプトを理解するために、早速お借りして触ってみました。

・操作パネルは5ゾーンに分類

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まず、本体の操作パネルを確認してみましょう。大まかに分類して5ヵ所のゾーンに分かれています。ここでは便宜上、各ゾーンに名前をつけておきますので、覚えておいてください。

(1)ボリューム&ディスプレー部
左上は入出力の音量を調節する4コのツマミと、LCD画面、レベルメーターがまとまっています。ツマミは再生する環境に合わせて調整したら固定しておき、後は画面で楽曲の情報や音量レベルを確認するので、あまり触ることはありません。LCD画面の下には4コのファンクションボタンがあり、画面に表示された機能を呼び出すのに利用します。

(2)イコライザー&エフェクト部
右上には計8コのツマミが並んでいます。こちらは音を鳴らすA/Bの2チャンネルそれぞれに、「TRIM」「HIGH」「MID」「LOW」のイコライジングとトリムができるツマミ。ミキサー機能の一部をここから操作します。AチャンネルとBチャンネルのツマミの間には、エフェクター機能のボタンとツマミ、スイッチが配置されています。

(3)タッチセンサ部
右下に配置する円形のゾーンはタッチセンサ。ターンテーブルの代わりとなるセンターパッドと、それを囲んで配置したピッチフェーダー、ボリュームフェーダー(いわゆる縦フェーダー)、クロスフェーダーがここから操作できます。

(4)再生操作部
左下には、ダイヤルを中心に6コのボタンが配置されています。こちらは楽曲の呼び出しとキュー、一時停止、再生に利用します。

(5)サンプラー操作部
左側の中央には、サンプラーやループ再生に利用する5コのボタンと2コのツマミが配置されています。

・楽曲データを読み込む

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『nextbeat』を使う前に、演奏に必要な楽曲を本体に読み込みます。『nextbeat』はコンパクトフラッシュ(CF)カードを外部メモリーとして使用するので、CFカードに楽曲データが収録されている必要があります。楽曲データの移動はカンタン。CFカードを挿入した『nextbeat』本体とパソコン(PC)をUSBケーブルで接続し、PCからCFカードのフォルダに楽曲データをドラッグ&ドロップするだけです。

データ形式はWAV、AIFF、MP3、AAC-LCの各形式に対応するので、たとえば『iTunes』で管理している楽曲データも無変換で『nextbeat』に読み込むことができます。ちなみに、プリセット音源は用意されていません。

コピーが完了したら本体の電源を切り、再度電源を入れると初期化されて演奏が可能になります。

・スピーカーとヘッドホンがあればOK

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楽曲データをCFカードに転送したら、後はスピーカーとヘッドホンさえあれば演奏可能。本格的に大音量で楽しむならアンプにつなぎ、自宅や外出先ならアクティブスピーカーやラジカセにつなぐだけで使えるのは便利です。

本体は30×30cmの12インチレコードサイズなので、レコードバッグに入れて持ち運ぶこともできます。操作パネルを覆うフタも付属。ホームパーティーで出張DJ、キャンプなど屋外でパーティーなど、気軽に企画できそうです(音量には注意しましょう)。

・ダイヤルで選曲

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楽曲をA→B→Aと交互に再生する基本演奏を試してみましょう。まずAチャンネルで再生する楽曲データを呼び出します。“(4)再生操作部”の「A」ボタンを押してAチャンネルを有効にしてから、選曲画面でダイヤルを回して楽曲を選びます。楽曲データは10階層までフォルダに入れて管理できるので、ジャンルやアルバム名などでフォルダを作っておくと便利。フォルダを開いたり、楽曲を選ぶにはダイヤルの中心にあるボタンを押します。

楽曲を選ぶと、数秒のロード時間の後、再生可能になります。再生ボタンを押すと演奏開始です。

・センターパッドで頭出し

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次に「B」ボタンを押してBチャンネルを選び、同様の操作でAの次に再生する楽曲をBチャンネルにロードします。Bチャンネルの楽曲を頭出しする場合は、モニター再生中に“(3)タッチセンサ部”のセンターパッドを2本指で触り、時計回りに滑らせると早送り、時計と反対回りに滑らせると巻き戻しができます。アナログレコードをターンテーブルで操作する感覚と一緒ですね。

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長い楽曲の後半からかけたい場合などは一時停止して、センターパッドに再生部分のインジケーターとなるLEDを点灯させます。1周が1曲分の長さに対応しているので、再生したい部分のセンターパッドを1本指でダブルタップすると、その個所から再生されます。2本指操作と組み合わせて、楽曲のどの部分でも頭出しすることが可能。ディスプレーには音の波形が表示されるので、レコードの溝を読むように頭出しすることもできます。

頭出ししたところから再生したい場合は、一時停止後に「CUE」ボタンを押してキューポイントを設定しましょう。「CUE」ボタンを押すとキュー再生が始まり、キュー再生中に再生ボタンを押すと通常再生に切り替えられます。

・テンポを合わせる

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Aチャンネルと同じテンポになるようにBチャンネルを調整する場合は、Bチャンネルのピッチフェーダーを操作します。ピッチフェーダーは、“(3)タッチセンサ部”の外周、上半分。左がAチャンネル用、右がBチャンネル用です。0.5%単位で-10%~+10%までピッチを変更可能。ピッチフェーダーの両端にある『Fineピッチエリア』をタップすることで、0.05%単位の微調整もできます。

「ピッチを合わせるのが面倒」という方は、『BPMマッチング』の機能を利用しましょう。BチャンネルのBPM(Beats Per Minute、1分間の拍数でテンポを表す数値)をAチャンネルのBPMに合わせるには、「B」ボタンを押しながら「A」ボタンを押すだけでOKです。

・タッチセンサでミックス

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頭出ししてテンポを合わせたら、いよいよミックスです。クロスフェーダー派の方は“(3)タッチセンサ部”外周の一番下(手前)にあるクロスフェーダーを使います。AB両チャンネルの楽曲を再生しながら、Aチャンネル(左)からBチャンネル(右)に指を滑らせればOK。

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縦フェーダー派の方は、クロスフェーダーの左右にあるボリュームフェーダーを使います。AB両チャンネルの楽曲を再生しながら、Bチャンネルのフェーダーをタッチして上にスライドさせ、Aチャンネルのフェーダーをタッチして下にスライドさせます。

ミックス中のテンポのずれは、頭出しで利用したセンターパッドの2本指操作による送り/戻し、1本指の回転操作による加速/減速で調整できます。

上記の操作をB→Aにして交互に楽曲をつないでいけば、DJプレイの基本演奏ができます。

・応用演奏(エフェクター編)

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応用編として、エフェクターを使ってみます。エフェクトをかけるチャンネルをAかB、マスターから選択して、エフェクトの種類を選択します。

エフェクトはローパスフィルター、ハイパスフィルター、ディレイ、フランジャー、フェイザ―、リヴァーヴの6種類からボタンを押して選択。エフェクトコントロールのツマミでパラメータを設定します。『TIMEボタン』を押すことで、「1/1拍」「4/1拍」など、プリセット値による設定も可能。また、ツマミだけでなくセンターパッドを利用して設定することもできます。

・応用演奏(サンプラー編)

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さらに応用編として、サンプラーの機能を使ってみます。最もカンタンなのは、ループ機能を利用したループサンプリング。“(5)サンプラー操作部”の「LOOP IN」ボタンと「LOOP OUT」ボタンを使います。

操作は、楽曲を再生中に、ループの頭に設定したいところで「LOOP IN」ボタンを押し、ループの終わりに設定したいところで「LOOP OUT」ボタンを押すだけ。自動でループ再生され、「LOOP IN」ボタンを押して頭から再生したり、「LOOP OUT」ボタンを押してループ再生を終了できます。

ファンクションボタンを押すことで、ループ区間を「1/8」「1/4」「1/2」「1/1」と区切って繰り返し再生することも可能。ループの頭と終わりはディスプレーで波形を見ながら、ツマミで位置を調整できます。

通常のサンプラーとしては、「SAMPLE REC」ボタンを押した後に、ディスプレーに表示される空きメモリーをファンクションボタンで指定して録音を開始します。同じファンクションボタンを押すと録音が完了。録音したサンプルはチャンネルにロードして再生します。サンプルの頭と終わりは、ループサンプリングと同様の操作で調整可能。

サンプル再生ではセンターパッドを使った演奏機能もあり、ライブ演奏を重視した仕様といえます。サンプルの楽曲を4分割して、センターパッドを90°ごとに4分割したエリアをタッチして再生できます。

一方のチャンネルをループ再生して、もう一方のチャンネルで演奏するサンプルをオーバーダビング(重ね録り)する『フレーズレック』機能もあり、ループとサンプルを組み合わせた簡単な楽曲制作もできます。

・ライブ演奏に『ポータブルユニット』

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『nextbeat』のさらにユニークな機能が、ライブパフォーマンスを重視した『ポータブルプレイ機能』。実は“(2)イコライザー&エフェクト部”と“(3)タッチセンサ部”は『ポータブルユニット』として一体になっていて、演奏に必要最小限な機能を自由に持ち運ぶことができるのです。『ポータブルユニット』と本体はワイヤレス通信により、10m程度まで離れて演奏ができます。

『ポータブルユニット』では楽曲の選択はできませんが、両チャンネルに音源をロードしてあれば通常の演奏だけでなく、エフェクターの利用やサンプルの録音と演奏まで可能。今後、どんなDJがどんなパフォーマンスに活用していくか楽しみです。

・使用感

すべて1台で収まるというコンセプトが、とにかく斬新な『nextbeat』。楽曲のデジタルデータ化が進む今日、これからDJを始めるユーザーが最初に手に取るDJ機器の最右翼になりそうです。ターンテーブルやCDJを触ってきた世代にも、既に慣れた操作の延長線上で操作できるように設計されているのが印象に残りました。

筆者はターンテーブルの方が親しみがあるのですが、タッチパッドをレコードのように扱えるのは魅力的。ワコムがペンタブレット製品で培ってきた技術が、こんな分野に応用されるとは驚きです。タッチセンサのレスポンスは良好で、機械的なツマミによる操作と比べても問題は感じませんでした。基本的にはプロユースの製品なので、信頼性は重視されている模様。新分野へ参入するワコムの本気を感じます。

16万9800円(店頭想定価格)と高額商品なので、家庭で楽しむにはハードルが高いかもしれません。ですが省スペースな点も考慮すると、従来のDJ機器をリプレースする価値はありそうです。DJ機器を触ったことがある方は、店頭でまず体験してみることをオススメします。

『nextbeat』仕様
サイズ:W300×D300×H85mm
重量:2.6kg
電源:ACアダプター(本体)、アルカリ単三電池×4本(『ポータブルユニット』)
無線周波数帯域:2.4GHz
入出力端子:
RCAピンジャック L/R(マスターL/R出力、AチャンネルL/R出力、BチャンネルL/R出力)
RCAピンジャック(DIGITAL REC出力)
CFカードスロット
USB Type B
ステレオフォンジャック(ヘッドホン出力)
フォンジャック(マイク入力)
対応楽曲データ形式:WAV(拡張子.wav)、AIFF(拡張子.aiff/.aif)、MP3(拡張子.mp3)、AAC-LC(拡張子.mp4/.m4a/.m4b/.aac)
付属品:フタ、アルカリ単三電池×4、ACアダプター、電源コード、CFカード(Type1)、ストラップ、RCAケーブル、USBケーブル、かんたんガイド、保証書
価格:実勢価格

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宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

ウェブサイト: http://mogera.jp/

TwitterID: shnskm

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