渋谷に本格大衆焼肉屋が開店したらしいので行ってみた / 飯田屋

この記事は正直に書きすぎているので、編集部の意向ゼロ、完全なる筆者のエッセイとしてお読みください。

渋谷駅から徒歩5分ほどの場所に本格大衆焼肉の焼肉屋ができたと知り、行ってみました。

その店舗名は『本格大衆焼肉 飯田屋』(東京都渋谷区道玄坂1-17-10)。そもそも大衆焼肉の定義とはどんなものか? 明確には「ない」と考えているのですが、曖昧ながら共通概念としてあるとすれば「庶民価格」という点はポイントかもしれません。

愛される大衆焼肉屋の基準とは

皆さんの街にも、古くから営業が続いてて、年季が入りながらも地域住民に愛される焼肉屋さんがあるかと思います。筆者は、愛される大衆焼肉屋の基準として安いのはもちろん、高級肉を仕入れることより「1. チープな肉でもどこまで美味しく昇華できるか」「2. タレを極めているか」「3. 肉へのタレの揉み込み(または仕込み)の技術」という点があると思っています。1と3は同じような意味ですね。店員の人柄の良さは言うまでもありません。

もともとうまい肉がうまいのは当然。高級肉がうまいのも当然。チープな肉でもうまくするのが職人。大衆焼肉にはそんな熟練の職人がいたりします。

本格大衆焼肉とは何か?

そこで疑問が出てくるわけです。大衆焼肉は理解できるが、本格大衆焼肉とは何か? 言葉通りなら、大衆焼肉を極めた焼肉屋ということになるのかなと。筆者は日本各地の大衆焼肉店をめぐるのが趣味なのですが、店名に「本格」を入れている大衆焼肉店を知らないので、違和感というより不思議な気持ちに。答えはふたつ、「とりあえず本格をつけて箔をつけた」か「本当に大衆焼肉を極めた店」のどちらか。いろいろ考えても答えは出ない。ということで行ってみました。

着席すると温かいおしぼり

店内は清潔感がある、新しい感じがしました。スタッフは慣れていない感じがありましたがオープン間もないので仕方ないでしょう。着席すると温かいおしぼりが出され、ドリンクのオーダーを聞かれます。生レモンサワー(税込600円)にしました。とりあえず今回は以下のものをオーダーしました。

<オーダーしたもの>
特選生タン塩 (税込2400円)
特選ハラミ (税込2400円)
カルビ (税込1300円)
もつしゃぶ (税込1400円)
アブシン (税込800円)
生キムチ (税込600円)
生レモンサワー(税込600円)
中ごはん (税込300円)
合計 税込9800円

この店は大衆焼肉屋ではありません

結論からいえば、おそらくこの店は大衆焼肉屋ではありません。よって大衆焼肉の「本格」でもないです。まず価格帯が大衆焼肉というには高額すぎます。カルビやロース、ハラミ系はすべて税込1300円以上。オススメの赤身肉は税込2400円。「価格に対する感じ方なんて人それぞれだろう」という人もいると思うので、百歩譲って値段は見なかったことにしてもいいです。……ですが、問題はここからです。ほかのどの部分からも大衆感が伝わってこない。どこかに大衆焼肉と言える何かはないか観察しますが、退店まで感じられませんでした。

『本格大衆焼肉 飯田屋』のタレは薄い

ここでまた値段の話に戻りますが、大衆焼肉店と認識されている焼肉店のなかにも、カルビやロースが1000円以上する店があります。それでも人気があり、地域住民や焼肉好きに愛されているのは、シンプルに「おいしい」から。値段以上のおいしさがそこにあるからです。しかし『本格大衆焼肉 飯田屋』のタレは薄い。繊細なのではなく、単純に薄い。これは代表にも直接お伝えしたのですが、肉質は良くて美味、しかしタレが薄く、肉質の良さを出しきれてない。

タレの味を薄くして飽きがこないようにし、たくさんオーダーする流れを作っているのでは? と邪推してしまったレベルです。

これ、「2. タレを極めているか」「3. 肉へのタレの揉み込み(または仕込み)の技術」がアウトということなのです。極上の麺を超薄いスープで食べている感じに近いです。肉質は良いのです。特選生タンも、塩特選ハラミも、カルビも。でもそのすべてに「ああ、ここにもう少し塩気があれば」「ここに醤油ダレの香ばしさがあれば」と感じたのです。チープな肉からおいしさを最大限に引き出す店が多いなか、リッチな肉なのに生かしきれてないのです。至極残念。

新鮮なのは理解できるのですが臭みあり

「ここは大衆焼肉ではない」と理解してから、普通に焼肉屋として楽しもうとしましたが、肉質が良いので一定のうまさは感じられるものの、残念なポイントが多すぎました。

代表にオススメされたもつしゃぶは、モツを湯に入れて60~90秒ほど経ってからポン酢に浸して食べるユニークで楽しいメニューなのですが、モツに臭みが残っていました。新鮮なのは理解できるのですが、臭みは徹底的に取り除いたほうが良いと思います。120秒以上湯に浸したところ、やや臭みは消えました。今回の場合、筆者の理想は200秒以上です。

モツは甘くて旨味も強い、しかし臭みもアリ、というのが感想。代表がオススメするのも理解できる旨さです。しかし臭いので、処理を徹底したほうが良いと思われます。臭みがせっかくの美味しい気分を破壊します。

「これではまだダメだ」と思える職人がこの店には必要

普通の焼肉屋としてですが、もつしゃぶやアブシンなど、あまり知られていないユニークで楽しいメニューを用意した点は良いなと感じました。単なる金儲けではなく、お客さんの笑顔を見たい気持ちがあるのだなと思いました。ただツメが甘いので、しっかりメニューに向き合う中の人が必要かなと感じました。「これでいっか」や「こんなもんでいいでしょ」はもってのほかで、「もうちょっと良くできるかも」でも足りず、「これではまだダメだ」と思える職人がこの店には必要です。

<ここまでの話>
あたたかいおしぼりが嬉しい
お冷を出してくれる気づかいアリ
本格大衆焼肉の概念が分からない
大衆焼肉にしては価格が高い
大衆焼肉の要素がない
タンや赤身肉は良質
タレが薄すぎる
肉に対する仕込みの効果を感じられない
よって肉の良さを生かしきれてない
もつしゃぶのモツは新鮮だが臭みが残る
ライスはうまい
カルビとライスの相性は良かった

店名の「大衆焼肉」

重ねて言いいますが、大衆焼肉の概念は曖昧。それゆえ人により大衆焼肉に対する「像」(ヴィジョン)があると思います。それを理解したうえで皆さんにお聞きしたい。どんな部分でもいいので大衆焼肉といえる象が『本格大衆焼肉 飯田屋』から感じられますか。と。それは実際に行ってみないとわからないと思いますが、個人的には、大衆焼肉を愛している者として店名から「大衆焼肉」を外してほしいなと思いました。普通の「焼肉 飯田屋」であれば、努力次第で良いお店にエボリューションするかもしれません。

おおいに期待しています!!

「本格大衆食堂という店名」や仕込みの雑さは焼肉マニアとしては「え?」って感じはありますが、代表やスタッフの皆さん、アドバイザーさんなど、現場は超優秀な人達ばかりかもしれません。ボクや焼肉ファンの皆さんは「別次元の本格大衆焼肉」として食べに行くのが正解かもしれません。もしかしたら現場のパワーで大人気店になっているかもしれませんよ。おおいに期待しています!!


(執筆者: クドウ@地球食べ歩き)

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