92 歳と54歳の精神科医コンビ、人生後半に待ち受ける不安とうまく付き合うコツを語り尽くす!

92 歳と54歳の精神科医コンビ、人生後半に待ち受ける不安とうまく付き合うコツを語り尽くす!

 孔子は『論語』で「四十にして惑わず」と説きましたが、40代を迎えても人生はなお迷うことばかり。この先のことを考えると、思わず不安な気持ちになってしまう……という人は少なくないでしょう。

 実際、「人生100年時代」と言われる今の時代、以下の不安や悩みを抱える人は多いといいます。

「生きていく目的が見いだせない」
「夫や子ども夫婦、周りとの関係がうまくいかない」
「体のあちこちが痛んで何をするにもおっくう」

 そこで、これまで多くの中高年や高齢者の相談に乗ってきたという54歳の精神科医・奥田弘美さんと92歳の精神科医・中村恒子さんによる著書『不安と折り合いをつけて うまいこと老いる生き方』を紹介します。

 といっても、堅苦しいところはまったくなし。世代の違う友人ふたりがお茶を飲みながらざっくばらんに話している……そんな温かくゆるやかな空気感が本書にはただよっています。

 なかでも、深い気づきに満ちているのが恒子先生の言葉の数々。彼女は1945年、終戦迫る6月に、医者になるために16歳でひとり広島県尾道市から大阪に出てきて、医学専門学校に入学しました。戦後の混乱のなかで精神科医となり、飲んだくれの夫に手を焼きながらもふたりの子どもを育て上げ、90歳になるまでフルタイムの勤務医として働き続けてきた経歴の持ち主です。人生の場数を踏んできた”老いのベテラン”ともいえる彼女の人生訓は、さまざまな人生にヒントをもたらしてくれることでしょう。

 たとえば、加齢とともに起きる”身体機能の低下”を防いで若さを保つことを意味する「アンチエイジング」。世の中には「いつまでも美しく、若くあることが素晴らしい」と煽るメディアも多く、老いることに恐れや戸惑いを感じている中高年もたくさんいるといいます。そんな風潮に対し、「老いるってことは、当たり前で、自然なこと」だと恒子先生。

「私なんか、まったく気にせんと、毎日がむしゃらに働いて、子育てして……気がついたら孫もできて、90歳を越えていたって感じよ。鏡を見たら、シワシワでクチャクチャした顔が映っているけど、これで普通やと思うから、ぜんぜん悲しくない」(本書より)

 これを受けて奥田先生も、「老化は自然なことだと開き直る潔さを持つと、心が余計なことに振り回されなくなって、視野がぐーんと広がる気がします」と話しています。

 この「老いを受け入れる」という姿勢は、老いへの不安と折り合いをつけるための考え方として大いに役立ちそうです。恒子先生は老いについて、「面白いもので、ええ塩梅に気力や体力が落ちてくるから、あれしたい、これしたいって気持ちがだんだん少なくなっていくんやな」(本書より)と自身を重ねて説明します。

 私たちは気力・体力の衰えをネガティブなイメージでとらえがちですが、見方によっては「欲がなくなり、ラクに生きられる」ととらえることもできます。そう考えれば、老いるのも悪いことばかりではないと少し晴れやかな気持ちになりませんか?

 ほかにも、老いや孤独との付き合い方、人間関係、就活などにまつわるさまざまなヒントが詰まっている本書。どうすれば人生の後半戦を気楽に生きていけるのか、そのコツをぜひ本書から学んでみてください。

 なお、恒子先生の人柄や生き方をさらに詳しく知りたくなった方は、16万部のベストセラー『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』もおすすめします。

[文・鷺ノ宮やよい]

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