保育所待機児童問題:お母さん達はどのように異議申立をおこなったのか(深水英一郎)

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保育所待機児童問題

保育所待機児童問題が注目されており、杉並区、足立区、大田区と、お母さん達が立ち上がっています。

児童福祉法24条1項には、「保育の必要がある場合保護者の申し込みがあれば市町村は保育しなければいけない、またやむを得ない場合も適切な保護をしなければいけない」と決められており、行政は待機児童を減らし、ゼロにする努力をおこなう必要があります。それがおこなわれないなら自治体の長はその能力を問われることになるでしょう。都道府県の知事、そして厚生労働大臣も保育所の準備に関して責任があります。

昨今の環境変化により都市部の子育て世帯が少しずつ増えてきています。
それにより当然ながら保育所が足りなくなってきていますが、その準備をおこたっている自治体があり、
そのことが今回のような事態を招いています。

市町村や区は早急にこの問題を解決し、すべての子どもが等しく保育所に入れるようにする必要があるでしょう。
「保育所への入所ができません」と市町村区から言われた場合は当然のことながらただちにこの状態の解消を求めるべきです。

今回、連鎖して起きている「集団異議申立て」は「保育所に入れない」という行政の回答に異議を申し立てるものであり、こういった状態の解消を求めるもので行政不服審査法に基づいています。

異議申立ては個人でおこなうこともできますが、集団で一斉におこなった方がメッセージとして強くなります。

まず杉並区、そして足立区、大田区とこの流れは広がってきましたが、杉並区は緊急対策プランを発表し、またそのための予算つけることになったようです。
以下、「集団異議申立て」がどのような手順でおこなわれたのかお話をきいてまとめました。

集団異議申立ての方法

実際に集団異議申立てをおこなった方に取材しまとめてみました。
(取材協力:遠藤夫妻と咲良ちゃん @waka929さん)

異議申立書をつくる

まずは異議申立書をつくりましょう。以下のような項目があればよく、特に決まった書式がありません。
この写真は、大田区の集団異議申し立てで実際に使われた用紙を撮ったものです。

申立書用紙

doc版
https://docs.google.com/file/d/0B0kVQ2XrsFwkaF9teVBacU1wZUE/edit?usp=sharing

pdf版
https://docs.google.com/a/getnews.jp/file/d/0B0kVQ2XrsFwkWGFTZW9VZE8tcVk/edit?usp=sharing
(doc版とpdf版は大田区で使ったものをベースに筆者が作りなおしたものです)

区長に面会を求めましょう

保育サービスを行なっている課を通して、区長に面会を求めましょう。
区長に面会を求めて拒否された場合は、集団で申立書を提出することを保育課に告げ、
日時を指定しましょう。申し立てをおこなう権利はどなたにもありますから、
区側は受け取りを拒否できません。

ツイッターでよびかけましょう

同じ地域で「保育園入所不承諾」となった他のお母さんたちと一緒に提出をおこなうため、ツイッターやブログなどで広く参加者を集めましょう。可能であれば同じ地域に住む人たちにも声をかけて同じく「保育園入所不承諾」となった保護者を探しましょう。

以下は、大田区の時に実際に使われたTwitterメッセージです。

【大田区・保育園入所不承諾異議申し立てについて】3月7日(木)10時、区役所一階の受付横に集合。11時から会議室にて、保育サービス課長と面会(30分間の予定)。筆記用具と印鑑をお持ちください。当日の参加でも大丈夫ですが、事前にご連絡いただけると助かります。メンションください。

(@waka929さんのツイートより引用)

ツイッターの使い方がわからない場合は分かる人をみつけて、代わりに呼びかけしてもらってもいいです。ネットでのやりとりには手間がかかりますから、誰かに手伝ってもらう方がよいでしょう。

今回の場合、主に以下の経路で情報が伝達したようです。

お母さん → ツイッター → 新聞・ネットニュース・ブログ → 他のお母さん方

直接ツイッターを見たお母さん方もいたようですが、ガジェット通信や新聞を見て来たよというお母さんもおられました。

メディアに連絡

ツイッターをチェックしていないメディアもありますので、直接「保育園の入園不承諾に対する集団異議申立てをおこなう」ということを、メディアに伝えましょう。主に新聞やインターネット媒体に連絡をとって内容を伝えてください。(ガジェット通信の場合 情報提供は情報提供フォームをご利用ください)

取材する場合は事前に役所へ連絡しておいて欲しい、ということもメディアに伝えておいてください。

メディアに伝える内容例

・○○区で、保育園入所不承諾異議申し立てをおこないますので、取材検討してください。
・集合日時:
・集合場所:
・代表者(もしくはメディア対応係)の連絡先
・当日の参加者数(その時点の数)などの情報

当日の様子

参考までに大田区のときの様子を時間順に説明します

朝10時 区役所のロビー集合
 メディアなどきていれば、ここで取材を受けます。カメラが入っている場合は、映って良い人とそうじゃない人を分けて、メディア側に撮影してほしくない範囲を指定します。

朝10時半頃 メディアのみ手渡し予定の部屋で待機させられ、お母さんと赤ちゃんは別室にて、異議申立書の説明と、記入がおこなわれる。
メディア側は役所の方と撮影方法について打ち合わせ。実際の手渡し方法の確認とカメラが立ち入ってはいけない範囲の指定。顔の撮影が可能な席と不可能な席について明確化。大田区の場合、顔を出していい親子と、そうではない親子の座席を明確にわけ、手渡しの順番はまず顔を出していい親子からはじめて、その後顔を出したくない親子という風にしました。

朝11時頃 異議申立書の手渡し開始。

役所側の代表者に手渡し開始。ひとりづつ渡して、どうして欲しいか、その場で代表者に述べます。メディアが来ている場合は、できるだけ大きな声で要望を述べた方がよいです。数が多い場合は、代表者がまとめてというやり方もあるかと思います。特に赤ちゃんがたくさんいる場合、あまりに長時間にならないような工夫が必要です。

11時半頃 手渡し終了、囲み取材など

役所の偉い人にコメントしてもらったり質問に答えてもらう時間が15分ほど。

12時頃

区議会議員との話。大田区の場合、別室にて9名の区議とお母さん方の話し合いがおこなわれていました。事前に区議と連絡をとっていれば、その区議を通して呼びかけをおこなってもらい、区議との話し合いなどを設けた方がよいでしょう。保育園などを作るためには予算が必要ですので、区議がこの問題を理解している必要があります。ここには、主に保育園を増やそうと考えている会派、政党の議員さんが集まるものと思われます。

13時頃
区議との話の後、個別の媒体の取材に応じます。大田区の場合、呼びかけ人の方にテレビ1社、新聞1社、ネット媒体1社(ガジェ通とブロガーさん合同)の取材がはいっていました。

マスメディア対策について

この問題は注目度が高く、しばらくメディア取材が入り続ける可能性があります。マスメディアが取材に来た場合に注意すべき点です。

・顔を撮影されてもよい方と、撮影されたくない方は明確にわかるようにしておいた方がよいです。
 なにか印をつけるか、場所を明確にわけ、そのことをメディア側に告げます。可能であれば出来る限り顔を隠す工夫をした方がよいでしょう。

・匿名でと告げても様々な理由をつけて名前や生年月日をきかれる場合があります。雰囲気に飲まれ、答えてしまう人がいますが、これに答えてはいけません。本名がメディアに掲載される可能性があります。特に複数の媒体に取材される場合は、一社だけに匿名と告げても他には伝わりません。可能な限りメディアは活用すべきですが、名前など個人情報がなくても掲載はされますので、匿名にしたい場合は、一切それらの情報を出さないようにしてください。

・メディアのカメラマンの立ち位置を明確に決め、それを守るようメディア側に告げましょう。入ってきてほしくない場所があれば明確にそれを伝えてください。またこのルールを守れないメディアはその場ですぐに注意しましょう。すぐに注意しないと、それが既成事実化し、他媒体のカメラも押し寄せてきます。特にテレビカメラはマナーが悪いという事例をよくききますので、気をつけてください。

保育所の問題、待機児童問題などの情報を募集しています

待機児童の問題について情報を求めています。この件についてなにかご存知の方や、これから申立をおこなう予定の方などガジェット通信編集部までご連絡ください。また、認可保育所以外の保育施設等に子どもを預けた場合の費用や、体験談も募集しております。編集部まで情報提供お願いします。
情報提供はこちらからお願いします
https://www.razil.jp/getnews/tarekomi/ [リンク]

取材にご協力いただいた遠藤さん親子

(取材にご協力いただいた遠藤さん親子)

参考

児童福祉法
第二十四条  市町村は、保護者の労働又は疾病その他の政令で定める基準に従い条例で定める事由により、その監護すべき乳児、幼児又は第三十九条第二項に規定する児童の保育に欠けるところがある場合において、保護者から申込みがあつたときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない。ただし、保育に対する需要の増大、児童の数の減少等やむを得ない事由があるときは、家庭的保育事業による保育を行うことその他の適切な保護をしなければならない。

第三十九条  保育所は、日日保護者の委託を受けて、保育に欠けるその乳児又は幼児を保育することを目的とする施設とする。
 保育所は、前項の規定にかかわらず、特に必要があるときは、日日保護者の委託を受けて、保育に欠けるその他の児童を保育することができる。

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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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