福島第一原発のある福島5区から見る、今の選挙制度はここがおかしい

福島第一原発のある福島5区から見る、今の選挙制度はここがおかしい

東京電力福島第一原子力発電所が立地する福島県双葉郡。

8万人ほどの有権者のうち、5万5千人ほどが福島県内をはじめ全国に避難しています。
今週、わたしは、福島県内をはじめ、福島県外の双葉町の人々が約150人弱避難している埼玉県加須市騎西高校、羽生市、群馬県前橋市などで、選挙権を持つ避難者に対して、どのように候補者の政策を知らせる仕組みが行われているか見てきました。

埼玉県をはじめとした県外の避難先

結論から言うと、1戸〜20戸程度の借り上げ住宅を中心とした避難世帯が散らばっている現地では、候補者の掲示板もなく、福島県の県紙(福島民報・福島民友)も配られていないので、どのような候補者がどんな政策を掲げているのか知ることが非常に難しいと感じました。頼りになるのは選挙公報だけですが、全く政策が書かれていない候補者も中にはおり、投票の参考にするには材料として弱いと感じました。

騎西高校は150人ほどの避難者数の大規模な一次避難所ですが、目視した限り、ポスターを掲示する場所はありませんでした。ポスターの掲示場所があったとしても、よほど人員に余裕がある陣営でなければ、ポスターを貼りに来ることはできません。

福島県内の仮設住宅

福島県内の仮設住宅に住んでいる双葉郡の有権者が実際に投票するには、役場機能があるところまでいかねばならないので、場所によっては何時間もかかります。

仮設住宅に臨時に設置される期日前投票所も、日替わりの設置のため毎日設置されているわけではありません。非常に不便です。
現実的には仮設住宅や県外避難者の投票は不在者投票制度を利用することだと思いますが、不在者投票制度をすべての有権者が知っているわけではないので、投票率は下がると思います。

個人情報保護法の問題

候補者がハガキを送るか、電話で投票依頼とセットですることは公職選挙法では合法とされています。

また、候補者が、ハガキや電話で、不在者投票や期日前投票について、投票依頼とは機会を別にして説明をすることも問題ないとされています。

ですが、個人情報保護法があり、どこに有権者が住んでいるかを候補者が知ることができません。

つまり、公職選挙法で定められた法律に則り候補者が有権者に対して政策を「知らせる権利」も、有権者が候補者の政策を「知る権利」も、個人情報保護法によって阻まれているといえます。

選挙運動においてこのような苦戦を強いられているのは、現状ではたぶん福島5区だけだと思いますが、福島5区は原発が立地する重要な選挙区です。有権者の意思が十分に反映される必要があると思います。
インターネット上で有権者に対して政策を公報出来る仕組みを作れば、もっと便利になると思うのですが、みなさんはどう思いますか?

一方、現行の期日前投票は、投票券を持っていなくても、投票所で住所を言えば投票できてしまうというかなり大雑把なシステムです。インターネット選挙は解禁されず、毎回選挙のたびになりすまし投票が報道されるような「ざる」な期日前投票制度はOKだというのも不思議だなと思います。

※この記事はニュース解説サイト『Foresight フォーサイトフォーラム』より転載させていただいたものです。
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※写真:福島県双葉町民が避難する、埼玉県加須市旧騎西高校(中島麻美撮影)

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