90歳のおばあちゃんに学ぶ 毎日を楽しく生きるコツ

 総務省の発表によれば、今年初めて高齢者人口(65歳以上の人口数)が3000万人を上回り、日本の人口の24.1%が高齢者となったという。
 これまで、高齢者の方々からパソコンに対して「難しそう」「機械のことは分からない」という声が多く聞かれたが、近い将来、高齢者にとってもパソコンが必需品になるのは間違いない。

 パソコンを使うことで、もっと老後の生活が豊かになる。そんな可能性を実感させてくれるブログがある。
 「さっちゃんのお気楽ブログ」というブログを知っているだろうか。
 “さっちゃん”こと堀江幸子さんは、現在90歳! 徳島県でひとり暮らしをしている。
 70歳から本格的に絵を習い始め、80歳でパソコンを購入。84歳でブログを開設して以来、6年間、自筆の水彩画をスキャンしてとり込み、短いエッセイとともに毎日アップし続けているが、このブログ、1日2000件、多い日は10000件にも上るアクセスを記録しているという。

 『また、あした。』(堀江幸子/著、扶桑社/刊)は、その「さっちゃんのお気楽ブログ」を書籍化したもの。日々の生活の中で見つけた楽しみや喜び、感じたことが短い散文調の文章と色彩豊かな絵を通して表現されている。
 新しいことに挑戦する精神や、前向きに生きる姿勢は読み手の心の打つものだが、そんなさっちゃんの「老い」を楽しむ心がよく表れている一編を引用しよう。

秘密の小箱

短歌の友達が
贈ってくれた菓子折り

セットの中のひとつ
「藍大尽」の小箱

誰にも食べられる心配がない
ひとり暮らし

でも、これだけは
見つからない秘密のところに隠してある

忘れた頃
「あれ!こんなところに小箱が?
何かしら……」

見つけたときの喜びをたくらんでいる

物忘れのひどくなった
年寄りの密かな楽しみ
(『また、あした。』p78-79より引用)

 「老い」を逆手に取って、楽しみすらつくりだす。そんな遊び心に、クスッとしてしまう。その他にも、畑のキュウリのつるが元気にのびているのを見て、食べきれなくてキュウリの山に埋もれてしまう想像をしたり、夕顔の花を見て、花の使命に気付いたり。90歳になっても発見の日々は続く。
 昔よりも物覚えは悪くなったし、すぐに忘れるようにもなった。でも、こんな風に言う。

「それでも、いまがいちばん楽しいの。私の人生、70歳から始まったのよ」(p105より引用)

 そうだ、今が青春なのだ。
 読んだ人の誰もが「こんな90歳になりたいな」と思うであろう一冊だ。
(新刊JP編集部)



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