がん治療現場における「セカンドオピニオン」の重要性とは?

 「セカンドオピニオン」という言葉を知っていますか。これは、例えば医療などの現場で、より適した治療法を模索するために、主治医以外の第三者の専門家(この場合は医師など)に意見を求めることで、患者自身がその治療法を選択するための重要な手掛かりとなります。近年では、特にがん治療や精神医療の現場でその重要性を指摘されています。

 松竹の映画宣伝部として数々の映画プロモーションを手掛けてきた清宮礼子さんは、大ヒット映画『おくりびと』のプロモーションを担当している裏で、家族とともに最愛の父の闘病を必死に支えていました。その父と家族の闘病を書いたのが『大切なひとのためにできること』(文芸社/刊)です。
 この本の中で、清宮さんはがん闘病における「セカンドオピニオン」の重要性についてつづっています。

 清宮さんの父親は肺がんを告知された段階で、すでにステージIIIBと末期状態。ですが、進行を止めなくてはいけないということで、主治医に治療方法を一任していました。しかし、それ自体はベストな選択だったと思えるものの、やはり最初からセカンドオピニオンを受けて知識を得て納得してから治療を受けることは大切だと言います。
 清宮さんの場合、セカンドオピニオンを受けたきっかけは、病院の事情で主治医が転院されることになり、新しい主治医に今後の治療方法を相談したところ、イレッサという薬を使ってみては、という提案をされたからでした。
 イレッサが登場した2002年当時、通常の抗がん剤よりも重大で致命的な副作用を起こし、裁判沙汰になるケースも多発しました。そういう背景もあり、いまだに賛否両論の考え方があります。

 都内の病院に赴き、医師に意見を求めた清宮さんは、イレッサがベストだと判断され、イレッサでの治療が始まったあとも、様々な医師の元に行き、検査データなどを見せて「イレッサの投与が効果としてベター」「イレッサを服用されるのがベスト」という意見をもらいました。しかし、父の病状を聞いた医師から、「私だったら何もしないですね。身体に負担がかかってしまうから、緩和治療で自然に任せたい」といった厳しい言葉も出てきました。
 こうした中で、清宮さんは医師の中にはこちらから何かを問いかけなければ淡々ときめられた治療を行っていくという方も多いのでは、と感じたといいます。もちろん親身になって話を聞いてくれる医者もいましたが、たいていの医師はドライな受け答えで、その言い方に不用意に傷ついてしまったりすることも多々あり、患者の心までケアできる医師は本当に少ないのだという現実が彼女の目の前に広がっていました。

 『大切なひとのためにできること』は、父親が肺がんを告知されてから亡くなるまでの時間を描いた家族の物語です。セカンドオピニオンのほかにも在宅介護のメリットやデメリットなど、家族視点でのがん治療の現場が克明につづられています。
 大切な人が病に倒れてしまったとき、自分たちはなにをすればいいのか。この本を通して考えておくことが大事なのでしょうか。

(新刊JP編集部)



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