ジャニーズグループで学ぶ!フラット型組織時代における「チームビルディング」の作り方
多様な人材を活用し、組織を活性化させる手法のひとつとして注目される「チームビルディング」。働く人の個性を尊重し、全員の強みを発揮するフラット型の組織作りは重要課題とされています。そこで今回はキャリアコンサルタント福島知加さんに、ジャニーズのアイドルグループを例にしたチームビルディングの極意を伺いました。
WadachiLab.代表 福島知加さん
大学時代、有名テーマパークをはじめ20以上のアルバイトを経験。卒業後、大手教育関連企業の営業職として入社、2年連続全国一位を獲得。その後リクルートでコンサルティング営業に携わった後、IT企業での採用・人材育成統括、就職支援機関のキャリアコーチ・研修講師を経て、2017年4月に独立。現在は「コミュニケーションで個人と組織をHAPPYに」を指針に置き、企業・官公庁職員向けの人材育成、キャリア相談、女性支援事業を展開し、働く人々の人材育成・キャリア支援を行っている。趣味はジャニーズを応援すること、泡盛を嗜むこと。チームビルディングとは何か
●そもそもチームビルディングとは
チームビルディングとは、チームの一人ひとりがメンバーの個性や特性を理解し、全員がリーダーシップを発揮して、目標や目的に向かって主体的に動くチームのあり方です。まさに現代型のチームだといえます。
●グループとチームの違いって?
グループとは学校のクラスのように、そこに集まった仲間のこと。そこに進むべき目標や目的はありません。一方、チームとは、部活のようにある目的・目標を達成するために集まった理想を共有する集団のことを指します。
●チームワークとチームビルディングの違い
「チームワーク」はよく聞く言葉だと思いますが、実は「チームビルディング」とは異なるものです。チームワークとは、メンバーがお互い助け合ってコミュニケーションを上手に取ること、チームビルディングとは、より高いパフォーマンスを発揮するために、メンバー一人ひとりが主体的に動き、自分の強みを最大限発揮しながら、目標達成を目指します。
このとき、チームビルディングをうまく進めるためには、目標を共通認識すること、他のメンバーの能力や意欲を尊重することが重要になってきます。こう考えると、一人ひとりの違う個性が最大限魅力を発揮し合っているジャニーズのアイドルグループは、グループというより「チーム」と呼ぶ方がふさわしいでしょう。
「嵐」に見るチームが成長する“4つのステップ”
ジャニーズグループは、活動期間の長いチームの多いことが特徴です。これは成果を出すチームが必ず通る「タックマンモデル」という“4つのステップ”をしっかりクリアしているからとも言えます。
※タックマンモデル:チームが4つの成長段階を経て成果が出せる状態になることを示したフレームワーク。
主に「嵐」を例に、チームが成長する“4つのステップ”について見ていきましょう。
【1】形成期(結成直後)
形成期とはチームメンバーが選定され、結成されたばかり最初の時期です。まだメンバーが互いの人となりや強みを理解しあっていないので、遠慮しがちになり緊張感も漂っています。まずはメンバー同士で十分にコミュニケーションをとる必要があります。
ジャニーズグループの場合、デビューするまでのいわゆる「ジャニーズJr.時代」に形成期を終えているケースが多いですね。例えばKing & Princeは結成からデビューまで2年かかっています。この間に、互いを知り合うコミュニケーションをとっていたのではないかと思います。
【2】混乱期(デビュー~05年まで)
混乱期とはメンバー同士で仕事の仕方の違いや意見のぶつかり合いが起こり、対立が増える時期です。言葉の選び方や資料のつくり方など、本質的でないところで些細ないさかいが増え、成果に向かって一丸となれない状態が続きます。
ここで逃げずにしっかりメンバー間で対話ができれば、チームの結束力が高まりますし、逆にここでコミュニケーションを避けてしまうと、チームはバラバラになってしまうでしょう。
嵐の場合は、1999年9月のデビューは華々しかったものの5年ほど、CDリリースをしても「オリコン1位」を取れない不遇の時代がありました。あるメンバーがそのことに不満を抱き「今の仕事を全部やめてしまいたい」と言ったことがあるそうです。
その時、リーダーの大野さんは「今、目の前のことを頑張れないやつが、何を頑張れるんだ」と話しました。この言葉をきっかけにチームが一つにまとまり、苦しい時期を乗り越えられたのだそうです。(『嵐 15年目の告白~LIVE&DOCUMENT~』2014年、NHKより)。
ここで注目すべきポイントは、嵐のメンバーは対立したとしてもぶつかり合うことを恐れず、対話を繰り返してチームの結束力を高めてきたところです。
【3】統一期(05年10月『花より男子』~)
統一期は、互いの考え方や強みを理解し合い、メンバー同士がチーム内の役割を認識しはじめる時期です。メンバーがそれぞれの個性を理解することで、互いがサポートし合ったり、苦手な部分を補い合ったりし始めます。
嵐は2005年の『花より男子』による松本さんのブレイクをきっかけに、一気にスターダムを駆け上がりました。この頃、相葉さんは『天才!志村どうぶつ園』がスタートし(04年)、二宮さんは映画『硫黄島からの手紙』で世界的に高い評価を得ます(06年)。
櫻井さんは『NEWS ZERO』(06年)、大野さん初の個展開催(08年)もこの頃です。メンバー同士がそれぞれの個性の生きる仕事に力を入れ始めたことによって、チームに勢いが生まれました。
【4】機能期(2010年『紅白歌合戦』初司会~)
機能期とは、メンバーそれぞれがプロフェッショナルとして主体的にリーダーシップを発揮し、チームがうまく機能するようになる時期です。個々人で目標を立てて自律的に動くようになり、コミュニケーションも活発になります。
この時期以降の嵐は、全メンバーがそれぞれの活動で力を発揮しながらも、ライブの時などに「嵐は俺たちにとって帰る場所」という発言が出るなど、チームとしての一体感がより一層強くなっていることが見てとれます。
「嵐」としては2010年から5年連続でNHK『紅白歌合戦』の司会を務めます。その後も相葉さん(16年)、二宮さん(17年)、櫻井さん(18年、19年)と、現在に至るまで国民的アイドルとしての地位を確立したこの時期が、嵐の機能期と言えるでしょう。
この時期は、各メンバーの役割が外部からも見える化するのが特徴的です。
松本さんはチームが生み出すプロダクトのクオリティを上げるこだわりの人、相葉さんは誰からも愛されるムードメーカー、二宮さんはコミュニケーションでメンバーを繋ぐ役割、櫻井さんは幅広い仕事にチャレンジして「嵐」をアピールするチームのPR担当、大野さんはチームを支える大黒柱としての役割を果たしているように見えます。
ジャニーズグループに見るチームビルディングの極意
ここで、ジャニーズグループのチームビルディングの特徴を見てみましょう。大きく2つのポイントがあります。
チームの適切な人数とは
1つ目は小規模であるということ。今、デビューしているチームは、Hey! Say! JUMP!の8人が最大です。直接コミュニケーションを取って意思疎通できる規模になっており、チームビルディングの観点から見ても、10人以下のチームが適切というセオリーに則っています。
どんなタイプのメンバーをそろえる?
2つ目のポイントは多様性があるということです。これはあくまでもキャリアコンサルタントである私から見た推察なのですが、人のパーソナリティ(性格・キャラクター)を9つのタイプに分けてとらえる「エニアグラム診断」でジャニーズグループを見てみると、嵐もSMAPも、KinKi Kidsも、メンバーのパーソナリティ(性格・キャラクター)がまったく重複していないように見受けられるのが、特徴的です。
例えば、もし嵐の各メンバーを診断したとしたら、私の見立てでは、松本さんはカリスマ性、相葉さんは個性的なタイプ、二宮さんは探求・分析派、櫻井さんは楽観主義者、大野さんは平和を愛する人となり、全員、キャラがかぶっていないと思われます。
さらに嵐の場合は、この多様性のあるメンバーが対立・対話の時期を経て互いを理解し、尊重し合っているからこそ、長く活躍できるようなチームになっているのでしょう。
※エニアグラム診断:90問に及ぶ設問を基に、人の性格を9種類にタイプ分けしてとらえる新しい人間学、心理学の考え方の一つ。日本では人間関係構築のために学ぶ人が多く、教育、弁護士、医師、心理療法士、グーグル・アップル・アマゾンなどの海外大手企業では、研修などで取り入れられている。
チームリーダーはどう選ぶ?
次に、どのようにチームリーダーを選んでいるのか見てみましょう。ジャニーズにはそもそもリーダーのいるチームといないチームがあります。リーダーがいるのは、TOKIO、V6、嵐、NEWS、King & Prince。基本的には最年長者がリーダーになることが多いですね。
一方、リーダーがいないのはKinKi Kids、関ジャニ∞、Hey!Say!JUMP!など。そもそも一人ひとりがリーダーシップを発揮していれば、リーダーはいらないということもチームビルディングの本質。今の時代にマッチしていると思います。
チームリーダーに求められることは何か
チームのリーダーに求められることは、以下の2つです。 1. 会社が求めていることを理解し、管理・統率する
2. メンバーを尊重し合い、各メンバーの個性を最大限発揮させる
今はフラット型の組織が主流になっているので、カリスマ性で引っ張っていくタイプのリーダーだけでは、こぼれ落ちてしまう人が多くなる可能性があります。安心してなんでも意見や考えを伝えることができ、この人にならついていきたいと思える人、苦しい時期も我慢して待てるリーダーが今の時代にはマッチしているとと言えます。
例えば中居さんは「はじめはグループ名の認知を上げるために僕や木村君が前に出たが、稲垣君や草なぎ君など他のメンバーがブレイクするまで絶対に我慢すると決めていた。彼らがブレイクしたらすごいことになると思っていた」 (『ナカイの窓』2013年、日本テレビより)と語っています。
このようにメンバーの個性やキャラクターを理解し、励ましながら支え、押し上げられるタイプの方が今どきのリーダーとしてふさわしいのだと思います。
もし今は「なかなか上手くいかないな」「チームに貢献できていないかも」「日の目を浴びてないな」と感じている人も、将来日の目を浴びるタイミングになった時のために、しっかりパフォーマンスが発揮できる準備を整えておくと、嵐やSMAPのように、一気に個性やキャラクターが輝き出し、チームもより強固なものになっていくとも言えます。
【まとめ】チームをより強くするために必要なこと
メンバー同士がより強いコミュニケーションを取るためには、言葉の言語コミュニケーションと、表情・アイコンタクト・身振り手振りなどの非言語コミュニケーョンを一致させることがポイントです。
感謝の気持ちを伝えたいなら「ありがとう」の言葉だけでなく、表情も「ありがとう」の表情をしないと相手に伝わらないですよね。当たり前のことかもしれませんが、非言語コミュニケーションは無意識に対応しているので意外とできていなかったりします。
非言語コミュニケーションをうまく使い、安心して何でも言える心理的安全性の高い環境をつくることが重要です。
また、会議やミーティングでは目的やテーマを決め、どんどん結論を出す会話をすることも重要です。それから適切なタイミングで目標を確認しあい、共通認識をはかることも、定期的に行う必要があるでしょう。
嵐は目標を確認するコミュニケーションをよく行っています。「次のライブ、どうしたい?」「これから先どうする?」「お前はどうしたいの?」などと話しあい、次の方向性を決めているのです。 <チームビルディングで成果を出すポイント>
* チームは小規模であること
* 多様性があるメンバーでチームを構成する
* 定期的に目標を確認し合い、共通認識をはかる
* チームメンバーでサポートし合う
* チームリーダーはメンバーの個性を最大限発揮させる
これからの時代に成果を上げる「チーム」のあり方とは、個々人がプロフェッショナルとして主体的に動き、それぞれの個性を輝かせながらも、節目節目でチームに戻ってくる。あるいは、チームの他のメンバーをサポートし合う。
たとえ対立したり、意見がぶつかり合ったりする時期があったとしても、チームビルディングができていれば、いつしか個人もチームも成果を出せるようになるはずです。
成果の出ないチームにいると、「メンバー編成が良くないからでは…?」「あのメンバーのせいでは…?」と誰かのせいにしたくなってしまいがちです。しかし、チームビルディングの手法を学ぶことで、チームで対立が起きても、「今は混乱期だから、チームが成長するために必要な時期だ」などと冷静に捉えられるようになり、チーム崩壊の危機を乗り越えられるのではないでしょうか。
チームのコミュニケーションがうまくいかなかったり、成果がでないと感じたら、一度チームビルディングの観点から自分のチームの状態を検証してみることをお勧めします。 取材・執筆:石川香苗子 編集:馬場美由紀
関連記事リンク(外部サイト)
はじめての英語ビジネスプレゼン、失敗せずにうまく伝えるコツ~英語力に自信がなくても大丈夫!
スカイプ英会話で初心者が上達するための4つのポイント
モチベーションとやる気を高める技術~行動心理学からわかった4つのテクニック
ビジネスパーソンのための、キャリアとビジネスのニュース・コラムサイト。 キャリア構築やスキルアップに役立つコンテンツを配信中!ビジネスパーソンの成長を応援します。
ウェブサイト: http://next.rikunabi.com/journal/
TwitterID: rikunabinext
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。