【ここは法廷だゼ!】元カノへのイヤがらせで執行猶予判決を受けながら今回も……

真夜中の自転車

ある日の東京地裁。罪名は器物損壊。別の裁判を見てから少し遅れて法廷に入ると、証拠調べの真っ最中だった。被告人は見たところ50代くらいの男性。くたびれたチェックのシャツをグレーのズボンにインしており、髪はふさふさの天然パーマ。器物を損壊しそうに見えないが、おおむね人は見かけによらないものである。

被告人には建造物侵入&脅迫の前科があった。一昨年のクリスマスイブ、ひとりで飲んでいるとき「1年前のクリスマスは彼女と一緒に過ごしたなぁ……」と別れた彼女の事をふと思い出し、彼女が経営している店に電話をかけたところ、ないがしろにされ憤慨。灯油をポリタンクに入れ店へ乗り込み居座った、というものだ。これで懲役1年、執行猶予3年の判決(保護観察付き)を受けている。今回も、その別れた彼女がらみで起こした事件だった。

自宅最寄りの飲み屋で飲んだ後、また別の街で飲んでいると、被告人曰く「例の彼女との楽しかった日々を思い出し、むしゃくしゃして嫌がらせしたくなり、自転車のタイヤをパンクさせる事を思いついた」という。そして飲み屋を出てタクシーに乗り、途中コンビニでカッターナイフを購入し、元カノの家へ。外に停めてあった自転車の前輪と後輪、どちらもカッターで切り裂いた。午前3時30分のことである。その後すぐに自首している。

弁護人に対しては「ヨリを戻したいというのは全くない。カッターで彼女に危害を加えるつもりもなかった」と、あくまでもその日むしゃくしゃして自転車をパンクさせるだけの目的だったと主張。事件を起こした理由を「自分自身の心の弱さ、気持ちの弱さ……」と、よくある感じで心の弱さをアピール。生活保護を受けており、肝炎などの持病で通院していることや、仕事を世話してくれている男性からヤクザへ引きずり込まれそうになってストレスになっていたなどという事も述べ「これからは……物事をハッキリ言える自分でありたい……」と実にハッキリしない様子で今後の抱負を語った。しかし生活保護を受けながら飲み屋をハシゴした挙げ句タクシーを飛ばし元カノの家へイヤがらせに行くとは……そんなガッツがあればすぐに仕事も見つかりそうなのだが……。

前科では元カノの店に灯油入りのポリタンクを持ち込んでおり、今回は夜中にカッターを買い元カノの家へ行っている。この被告人はひょっとして、仮に元カノと鉢合わせしていたら危害を加える可能性もあったのではないだろうか。それに、一昨年にはすでに別れているにもかかわらず未練が残り過ぎだ。

検察官「会いたい気持ちは本当になかったの?」
被告人「ないです」
検察官「じゃ憎かったんですか?」
被告人「いやあの〜、楽しかったころ……付き合って……た……頃の……思い出して……ま、自分……悪いんですけど振られて……ムシャクシャして……」

と「物事をハッキリ言えるようになりたい」と言ったそばから、ビックリするほど歯切れの悪い調子で述べていた。気持ちが整理できていないのだろうか。求刑は懲役8月。前刑の執行猶予が取り消される事は決まっているので確実に刑務所行きだろう。服役で恨みがつのり、出所時にまた元カノへイヤがらせしないことを祈るばかりである。判決は6月25日。

画像引用元:flickr from YAHOO
http://www.flickr.com/photos/tablexxnx/6343882023/

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高橋 ユキ

傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。

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