憲法を変えずに国民投票による首相公選制を実現する方法

過去20年間の各国リーダーの顔ぶれ

日本のリーダーである首相選びの制度がおかしいために、首相がコロコロと入れ替わっています。

これを、国民投票で決める形にしようというのが「首相公選制法案」です。しかもこれ、憲法を変えずに実現できるそうです。一体どうやって実現するのでしょうか。

要約すれば「国民投票の結果を受けて、それを国会で議決し、天皇陛下が国会の指名に基づいて任命をおこなう」とのことですが、果たしてどのような方法なのでしょうか。ききては東京プレスクラブの松島記者、説明してくれるのは、参議院議員の松田公太さんです。政党内のゴニョゴニョで国のリーダーが決まる今のやり方ってほんとに変ですよね。

資料
https://docs.google.com/file/d/0B4G7ozI5wFqrTzJyemZGQmc4UTA/edit

動画
http://youtu.be/rkuyJiS_qus [リンク]

コロコロかわる、日本の首相

記者
本日は首相公選についてお話をお伺いしようと思います。
日本のリーダー、総理大臣は最近5年間で6人交代していますよね?

松田
私は参議院議員になる前に2年間シンガポールに住んでいました。シンガポールはいろんな国からいろんな方々が集まるんですが政治の話になるとまず聞かれるのが「日本の総理大臣は誰だっけ?」と。最近コロコロ変わるので覚えてられないよと言われてしまいます。

今年1月にダボス会議に出席した際も、ある国のリーダーとお話をしていると「今年は日本の総理大臣は来ないのですね?、来てもどうせ違う人になるんではないの?」という風に言われてしまう。非常に情けない悲しい状況なんです。

ここ20年間の各国のリーダーの顔ぶれをパネルにまとめてみました。上からアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国、台湾、一番下が日本です。これだけ人数に差がある。日本以外では韓国が一番多いのですがそれでも20年で5人です。他の国は凡そ3名から4名。大統領制だからではないかという人もいらっしゃいますが確かにアメリカは大統領制です。その下はイギリス、日本と同じで大統領制ではありません。議員内閣制です。フランスは大統領制、ドイツは首相です。ですから必ずしも大統領制だから長いというわけでもなく単純に日本の仕組みがオカシイのではないか?ということです。

ここに並んでいる首相を30代以下の方に全員の名前を言えるかというと言えない人のほうが多いのではないでしょうか。日本国民でさえ言えない人の方が多いのではないかと言う風に思います。こんな状態では国際社会でリーダーシップを発揮する、プレゼンスを高めるということは絶対無理だと思います。国内でも政策であったり改革を首相がリーダーシップをとって進めることは難しいと思います。一年しか任期がないということが続いてますが一年だと会社の社長でもやることがありません。

頻繁な首相交代劇は日本を停滞させる

記者
一年なんて普通の会社だとあっという間に過ぎて行きます。ついこないだ正月だったのにもう正月か! みたいな感じですよね。

松田
飛ぶように時間は過ぎます。会社の社長、組織のトップといったところにも適応出来ると思いますが最初の1、2年というのはある意味練習期間というか助走期間という部分も多少あります。いろんな仕組みを考えて変えて行こう、というのは2年目以降となると思いますがそこにも至らずに日本の首相は終わっていってしまうという状況が続いています。今の日本の政治が停滞しているというのは首相がかわり続けているということと同じことだと思います。

記者
みんなが納得するリーダーが不在ということですよね?
首相公選というのはそもそもいまの議院内閣制、総理大臣の指名、とどう違うのですか?

松田
日本国憲法において現状は国会議員が首相を選ぶということになっています。国会の中でいままで首相は選ばれてきました。たとえば解散総選挙があった時はその時の党の代表が誰か、というのは日本国民はご存知なわけですから、その党が勝てば党首が総理大臣になるんだろうなというのはイメージがつくと思います。

たとえば民主党の例でいうとまず鳩山さんがなった、鳩山さんがやめられた、その次に管さんがなりました、では管さんが国のトップになるにあたって日本国民が関与しているかというと関与出来ていません。国民からすると自分たちが選んでいない人がこの国のリーダーになってしまっているという状況が続いています。今の憲法からは致し方ない、国会議員が決めることだ、間接的に決めることになっているんだとなっていますけれども私は日本国民が納得のゆく形で首相が解散総選挙以外の時も選ばれるべきではないかなと思っています。

国民の信任というプロセスを経ていない日本の首相

記者
たしかにアメリカの例だとオバマさんを支持したと思っている、支持した人が大統領になっているという。少なくともオバマさんを大統領にするために6150万人が投票しています、3億数千万人の国ですから、国民から支持されて大統領になっているといっても過言ではないですね。こなた、野田佳彦議員に対して投票した実感のある方は感覚的な話ですが千葉県で16万人くらい?

松田
そういう風にも言えると思います。野田総理は千葉の4区で国会議員として立候補し、16万票の得票を経て国会議員になっています。しかし野田さんを選んだ千葉県民全員が総理大臣になってもらいたいと思って投票したかというと、それは別の話ではないでしょうか。国会議員としては良いと考えて投票したけども、その時点で総理大臣だとどうだろうと考えて投票したわけではない。そしてそもそも、国会議員としての得票を見るとたった16万人しかいません。そして16万人が選んだ総理が国会議員全員の賛同を経て国会議員になっているかというとそうではなくて民主党の中の小さな派閥、グループのなか――実際に党内の戦いはテレビでご覧になった方も多いと思いますが――最後は海江田さんと野田さんで戦ったわけですけれどもあれも政策ではなく、政局の部分で結果的に野田総理が決まったわけです。ごく一部のグループの人たちにしか選ばれていない。こういった考え方からすると国民からかけ離れたところで首相が選ばれてしまっているということになります。

記者
仕組みは違いますが東京都知事、それから橋下さんが当選した大阪市。東京都は今回260万票以上獲得して知事になられてますし橋下市長も有権者75万人、平松さんも50万票以上といった形で地方公共団体においては有権者自身が投票した、みんなで選んだ首長だよね、という気にはなっているわけですよね?たとえばお隣の韓国にしても最終的には政党に投票という形ですが李明博大統領に対して「ハンナラ党に入れるぞ!」と言う風な人が合計で1100万人以上投票しています。直接間接とわず国家のトップに対しての信任ということでは世界レヴェルで見ても日本はまったく無い状況と言ってよいでしょうか?

国会議事堂

日本のリーダーを国民投票で選ぼう

松田
アメリカはほぼ直接選挙に近い形ですが細かく言うと大統領の選挙人を一般有権者が選んでという形になっていますが基本的には一緒です。有権者が、それだけ大多数の方が選んだという実績があるとその国のトップも自信にかわります。「自分には民意がある」と思いますから。

日本の総理大臣がなかなかリーダーシップが発揮できないと言われていますが、かたや地方自治体のトップはリーダーシップを発揮されている方が多いですよね。橋下市長や東国原知事もそうでしたが「自分が直接選ばれた、民意がついてるんだ」と自信を持つことによって自分がやろうと思っていた政策を実施できますし、信任を得ているという気持を持つことによって非常に強くリーダーシップもとれるんではないでしょうか。

記者
日本のリーダーと国民の関係って仮面夫婦みたいな感じですかね?

松田
そうですね、結局総理大臣は政党の中の自分の派閥の国会議員から選ばれるわけですから、そっちばかり向いて仕事をしてしまう。政策等打ち出そうとしてもその派閥の中のだれかリーダーシップを発揮出来る人が反対だというとどうしても「彼らは自分の選挙を手伝ってくれたし彼らが反対なら反対せざるを得ないか」と党内の考えを優先させてしまいます。

「国民の代表である」と胸をはれる首相をつくる

記者
原発にしてもなんにしても僕らがわからないところで密室政治みたいな感じでひどいことになってしまうのが続いてしまってますよね。

首相公選の法案が通れば、国際的な場に国民の信任を受けたリーダーが赴いて「俺は国民の代表です」とはっきり言って仕事ができるというメリットがありますね。

松田
国民投票で首相を選べるようになったら自分の政策を明確に打ち出さなくてはならない。たとえばTPPはこうするんだ、消費税はこうするんだ、社会保障はこうするんだということを明確に訴えて国民に選んでもらう。選んでいただいたということはもちろん反対する人はいますが選挙に勝ったということであればこれは民主主義ということですから大多数の信任を得たということになって国際社会でも打ち出せるようになる。それが一つのメリットです。

もう一つのメリットは国民サイドにあっていまのところ国民は先ほどの密室政治といったように知らないうちに決められてしまうという諦め感があります。残念ながら政治の傍観者になってしまっています。

しかしこの首相公選制が傍観者から参加者にかわる大きなきっかけになるのではないかと思っています。

リーダーシップが必要だと申し上げていますがリーダーシップの裏側にあるのはフォロワーシップなんです。フォロワーシップを発揮していただくためにも直接選んでいただく。自分たちの選んだリーダーだったら幹の部分ではなく枝葉の部分で自分と考え方が違うなと思ったとしても逆サイドについて反対に回るということは無くなるはずです。自分たちが直接選んだというのは重要なことだと思います。

支持率のお話もこれもグラフになっているのでご覧になっていただくとこれは歴代小泉首相以降の支持率です。管さんや野田さんは入ってないです。野田さんもいま20~30%台と言われていますが他の方々も小泉さん以外を見ていただきたいのですが最初政権についた時は非常に高いわけです。鳩山さんなんか70%以上。ところが数ヶ月たつと20%に落ちてしまう。

管さんもそうですし他の方々もそうです。なぜ最初に支持率がぽーんと上がるかというと「とにかくやらせてみようか、勝手に決められたかもしれないけど」国会の中で決まったことだから仕方が無いかと。どちらかというと消極的な支持です。蓋を開けてみるとリーダーシップも発揮出来ないし自分の思った政策と違うことを言ったとなるといっきに暴落し、支持率に現れてきます。

それがフォロワーシップの無さにも現れています。これでは首相もたまったもんではないと思います。支持率が暴落するとなにが問題かというと政党のなかで支持していた国会議員、派閥の人たちも反転する可能性があります。支持率がなくなると敵に回る可能性があるわけです。

首相支持率の推移

記者
「鳩山さんや管さんを支持していると自分の選挙が危ない」ということになるわけですね?

松田
そうです。この人の言っていることは国民的に人気がないのだから反対のことを言わないと次の選挙で自分自身が落ちてしまうかもしれない。と、自分のことしか考えてない。そもそも国会議員もフォロワーシップが無いと思うんですがとにかく自分の再選を考えるとついて行けないとなってしまうわけです。

記者
「私もついて行くわよ」みたいなフォロワーシップを発揮して成功に導かれるドラマって日本人は好きだと思うんですが、その裏返しなんでしょうか。

松田
国会の中では国会議員が自分のことしか考えてない。再選のこと、出世のことしか考えてない人たちがほとんどではないでしょうか。となると、たとえば管さんの不信任案の時を見ていただければ管総理不信任の流れになっていた、国民も管さんでは任せられない、だから不信任案を可決した方が良いだろうと思って投票の前日まで多くの民主党の国会議員がテレビに出て「自分は賛成しますよ(不信任案に対して)。国民のためと思うと管さんに降りてもらわなくてはいけない」と堂々とインタビューに答えていた。

ところが翌日の朝コロっとかわって風向きが危ない、まだ管さん残るんではないかとなったら反対票を平気な顔をして入れている。数時間前までお国のために賛成票を泣く泣く投じると言っていた人が反対に回っている。これは国会議員の信念の無さをすごく見せてしまったのではないかと思います。

75%の国民が国民投票をしてもらいたいと考えている

記者
首相公選をスタート地点にして国会、政治と投票する人、リーダーシップとフォロワーシップを構築するチャンスがここからスタートするということですか?

松田
とにかくやってみようと、まずは時事通信の調査によると75%の国民が国民投票をしてもらいたいと考えているわけです。国民の多くの人がそう思っているのならば一回やってみましょうと。2~3回やってみてうまく行かない場合は一回それを戻しても良いかもしれません。

しかし我々が提案しているのは憲法を改正して首相公選をやりましょうということではなくて現行憲法の中でもやれる中身を考えた提案なんですよね。これは直接的な首相公選ではありませんが推薦型といいますか、国民投票という形でやってもらって国民投票で選ばれた首相を国会で信任するという形をとる、国民の意思を尊重して国会議員が指名するということを考えてます。

首相公選制を実現する方法

首相公選制を実現する方法

記者
法案の内容を高校生でも解るように説明してください。

松田
高校生もすぐに有権者ですからね。
どういう形をとるかというと「選挙」ではなく「国民投票」というかたちで皆さんだったら誰を総理大臣に選びたいですか? ということを問いかけます。

細かい部分は法案として決めてなくてみんなの党では基本法案、首相選びに対しては国民投票制度を導入しましょうという基本的な考え方を国会に法案として提出しています。細かい議論は深めつつ国民的議論でやって行こうと思っています。考え方としてはたとえば政党の代表を候補者として出すやり方、国会議員何十名かの推薦を経て候補者とする場合、などいろいろ考えられます。

それによって選出された候補者が5人でてきたとすると、この五人で公開討論会などをおこなう。「今日はTPPについて議論してもらいましょう」とその5人で生中継でライブで見ていただけるような形を取って議論する。二日後には消費税と社会保障の一体改革がありますがこれについて議論してもらう。それを見ながら自分にあった政策の人を確認していただく。そして国民に投票をしていただく。突出した二人で決戦投票するのか、そのままの結果を本会議場に出すかなど議論はありますが、最終的には国民投票の結果を見て本会議場で国会議員に選んでもらう。そうすれば憲法上は国会議員が最終的に決めるという形になっていますので国会議員が選んだ形になります。

もう一つ、第一章で天皇陛下は国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命するとありますのでこれも現状国会の中で指名された国会議員を天皇陛下に指名してもらっていますのでこれも引き続きこの形を取らせていただきたい。いままでの流れと基本的にはかわりません。第5章第67条の総理は国会議員の中から国会の議決でこれを指名するというのもかわらない。ただこの前のステップとして国民投票というものが出てくると言うことです。

首相公選制を実現する方法

公開討論会できちんと議論できる人が首相に選ばれるような仕組みを

記者
東京都知事選挙の場合11名くらい立候補していますが首相公選の場合何名くらい出てくるのでしょうか?

松田
出たい人は数限りなく立候補してもらって良いと思うのですが要件が先にあります。例えば芸能人の方が知名度が高いということで手を挙げて自分がやりたいとおっしゃったとしても国会議員何十名かの推薦が得られるかというとなかなか得られない。

政党代表もしくは政治団体代表でないといけないという要件を授けた場合はそう簡単には立候補したいと思っても出来ないかもしれません。

また、公開討論会を実施しますので、議論をして、その議論に耐えられるかという点もみられます。知名度だけの人であればそこでボロが出ます。ですので、知名度だけではなかなか推薦は集められないと思います。

記者
衆議院選挙の時でも「知名度」を用いた立候補者選びの手法をとられる政党が多かったですよね?

松田
それは公開討論会とか出なくても良いからじゃないですか?

衆議院選挙に出ている立候補者は極端な話、街頭演説なんてする必要がありませんし、名前だけ出してポスター貼ればそれで良いのですから勝ってしまう可能性はあります。でも衆議院も各区で公開討論会をしなくてはならないとかなったらなかなか知名度だけでは出て来れないと思います。

記者
公開討論会など意外とネットなんかでは見られていますよね?
二昔まえのテレビしか無かった時代からすると。

松田
全然違いますね、ネットの力は凄いなと。アメリカの大統領選でも一番ポイントなのは全国党大会のあとの共和党と民主党の代表が決まったあとの討論会です。ここで有権者はしっかり見て決めて行くわけです。討論会の時間は非常に重要です。両候補者が意見をぶつけ合って討論するというのは非常に大切なことです。

記者
最後に、首相公選はどのようにしたら現実化するのでしょうか?

松田
いろんな形の積み重ねだと思っています。まずはみんなの党として正式に議員立法して基本法案を提出させて頂いております。

国民の皆様にも実際にこういう法案が提出されている、考えてみようかという機運が高まる可能性が出てくる。もう一つは他の政党に呼びかける。自民党の中にも民主党の中にも首相は公選でという考えの方が結構いらっしゃる。そう言った方々の協力を得て話を大きくして行きたい。

そもそも各政党の中で国会に提出された法案が審議されるかどうか、少数政党のものはそもそも議論されないことが多いです。そのまま吊るされてしまって、無視されてしまう。シュレッダー送りのケースが非常に多いです。

各政党の統一した意見が、よし、これについて話し合いましょうという形にまとまらないと公開の場で話さえ出来ません。それを実現するためには各政党の議員の皆様に協力していただいて各政党の中で話を盛り上げてまとめて行くということをしなくてはならない。

これに関して難しいのも現状で民主党も自民党も既成政党は首相公選制に限らず全てにおいてまっぷたつに別れてしまっている。政党としての理念がまとまっていないので新しいことにチャレンジしようとした時にみなさん完全にバラバラになってしまう。

それをまとめるのは至難の業と思っています。そこの部分をあきらめずにしっかりと根回しをしてゆく。幸いに首相公選制を考える議連が出来まして山本一太さんが会長になっていただいてやっているんですが、議連を通じて引き続き勉強会を開き積み重ねて話を広げて行きたいと思っております。

一番重要なのは国民の皆様です。国民の皆様が首相公選はやるべきだと非常に多くの人たちがアンケートでも言っています。この人たちがアクションを起こしていままでのようにコロコロと自分たちのしらないところで首相がかわるような仕組みはもううんざりだ、自分たちに選ばせてほしいと、いうことを声を大にして言い始めていただければかわる可能性は十分あります。

国会議員というのは国民の考えを尊重しなくては当選できない存在ですし、そうしなければならないという気持をしっかり持っているわけですから首相公選への機運が高まってきて国民的議論となって首相は国民が投票したいということになってくれば「自分もそれに賛成なんだ」という国会議員が出てくると思っています。

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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

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