「パタリロができる地球人がいたか!」劇場版『パタリロ!』魔夜峰央&加藤諒インタビュー

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魔夜峰央先生の人気漫画『パタリロ!』を原作に、舞台のアナログ感と、映像化ならではVFXが融合した『劇場版 パタリロ!』が本日6月28日より全国公開。

1978年の連載開始から40年以上も愛され続け、シリーズ累計発行部数が2500万部を超える人気漫画『パタリロ!』を2016年に2.5次元ミュージカル化。そして、その舞台の要素がパワーアップした劇場版『パタリロ!』 が完成しました!

今作で主役・パタリロ殿下を演じたのは、舞台同様、俳優の加藤諒さん。今回は、劇中衣装&メイクで登場した加藤さんと、原作者であり劇場版にも出演されている魔夜峰央先生にお話を伺いました。

※本編のネタバレも少し含むのでご注意ください。

「出来るものならやってごらんなさい」と思っていたら「出来ちゃった(笑)」

――今回、『パタリロ!』が舞台から実写の映画化にまで至りましたが、これまで実写化のお話はあったのでしょうか?

魔夜:話自体は何度かありました。だいぶ以前に、「宝塚でやろうか」という話も出たのですが、美形はたくさんいるけれどパタリロ役に合う役者がいない、ということで全部流れてきたんです。今回、舞台化のお話をいただき、「舞台化するのはいいけど、パタリロを出来る人がいるんですか?」と聞いたら、「います」と言われて。

――断言されたんですね(笑)。

魔夜:「じゃあ、出来るものならやってごらんなさい」みたいな感じでした(笑)。そうしたら、出来ちゃったんですよ(笑)。

加藤:あはは!

――加藤さんは、パタリロ役のお話を聞いたときはいかがでしたか?

加藤:ミーちゃん先生に舞台化のご提案があった頃に、僕はネルケさんが手がける他の舞台の本番中だったんです。その際、スタッフさんに「加藤くんが主演の舞台の話がきまったから」と言われて! 「え!? どういうこと?」と戸惑っていたら、「『パタリロ!』って言うんだけど」と伝えられ、「ありがとうございます」となりました。そのときはまだ本当に実現するかわからない段階だったんですが、舞台第2弾、映画化まで決まって。初演が2016年だったんですけど、ここまであっという間でした。

――パタリロ役が加藤さんだと聞いて 、魔夜先生はどう感じましたか?

魔夜:当時は加藤諒がまだここまで売れていなかったんですよ。パタリロに決まってから、急に売れ出したよね。

加藤:そうですね、ミーちゃん先生パワーです(笑)。

魔夜:まあまあ(笑)。でも、パタリロ、バンコラン(青木玄徳さん)、マライヒ(佐奈宏紀さん)の3人に集まってもらった初顔合わせで、「これは大丈夫だな」と思いました。「パタリロができる地球人がいたか!」と(笑)。

――魔夜先生は、出来上がった舞台を観劇されていかがでしたか?

魔夜:よく原作を広げて作ってくれたなと思いました。漫画を、映画やアニメなど別のメディア展開したときに、ガッカリすることって多いじゃないですか。でも、『パタリロ!』の舞台に関しては、まったくそれがなくて、原作以上にグレードアップしてやってくれたので、すごく納得したし、嬉しかったです。

――今回の映画は、初演舞台の内容を演出などの要素でよりパワーアップさせた作品になっていると思います。舞台からの変化を感じた部分はどこですか?

加藤:僕は、お芝居に関しては舞台のものをそのままという意識で演じていて、映画だから変えようとはあまり思いませんでした。その中で、CGや様々な役をやらせていただいたのは、映画じゃないと出来なかった部分で、パワーアップしているところだと思いますし、楽しかったですね。

魔夜:実は、役者さんたちのお芝居部分はとても早く撮影が終わっていて、ずっとCG待ちだったんです。

加藤:この作品はほぼアフレコなんですけど、まだアフレコのときはパタリロが戦うシーンがブルーバックの状態だったりして、いつ白組さんのCGが出来上がるんだろう!と楽しみに待っていました。僕は、フルCGの撮影が初めてだったので、CGの映像とテンションなどがきちんと合っているお芝居が出来ているのか、という不安が少しありました。でも、完成版を観たときに「あ、本当にあの世界にいる!」と、すごく感動しました。

魔夜:結局、設計図は小林顕作監督の頭にしかなかったものですから、我々はどんな映画になるのか誰にもわからないし、見当もつかなかったんです。「あ、こうまとめたか!」と思いました。完成した映画を観たときに、「良い意味で昭和ですね」と監督に申し上げたんですけど、なんだか壮大なシャンデリアがぶら下がっている下にちゃぶ台が置いてあるようなアンバランスなイメージ。ミスマッチな、でもノスタルジックな雰囲気がすごくいいなと思いました。

――ヘアメイクも舞台と映画では結構違うなと感じました。

加藤:メイクと衣装さんは舞台とは違うスタッフさんが担当してくださったんですけど、やっぱりカメラの寄りの画が多くなっているので、メイクも少し薄めになっています。あとは諸事情により、僕はもみあげを作っていただいたりもしています。

魔夜:これでメイク薄めなの?

加藤:薄めです。

魔夜:これで?

加藤:薄めですよ! 舞台のときはもっともっとガッツリやってました。

魔夜:ああそう。元々顔が濃いからわかんないよ(笑)。

加藤:あははは!

――舞台の映像を観ると全然違いますよね。

加藤:そうですね。僕以外の舞台に出ていたみんなにもビジュアルの違いはあるので、舞台版を観た方たちも楽しみにしていただけたらと思います。僕もスク水姿になるとは思っていなかったです(笑)。

魔夜:あくまでも舞台をベースにした作品になっているので、舞台版を観ていない方にどう受け取ってもらえるのか、という心配は少しありますね。

――舞台のセットをそのまま映画でも使用しているところに驚きました!

魔夜:まあ、お金もなかったんでしょうね(笑)。

加藤:そうなんです、お金の面も大きいんですけど(笑)。ラース・フォン・トリアー監督の『ドッグヴィル』という映画も、暗幕のあるスタジオにチョークで線を書いて、最低限のセットで映画を撮るという手法で作られていたんですが、ちょっとそれに近い感じでやりたい、ということを企画段階で話していました。

魔夜:小林監督も初めて映画を撮るので、何が出来るのかよくわかってなかったみたいなんです。経験を積んだスタッフに「あれをやりたい」「これをやりたい」と伝えても「出来ません」と言われることも多く、とても苦労したそうなんですけど、逆にその作り方が面白くなっているのかもしれないね。

隅々まで観て欲しい! 豪華なゲストキャストがたくさん!

――では、映画でのお気に入りのシーンを教えてください。

魔夜:私はやっぱり巨大化するところですね。漫画で出来なくはないけど、あの迫力は出ないですよね。あそこは一番ビックリしたし、面白かったです。

加藤:実はあれもアニメ映画『AKIRA』のオマージュが入っていたりするんです。僕は全部大好きでお気に入りなんですけど、強いて言うなら、みんなで歌って踊る『次回予告だNEXT!』のシーンは、すごく好きです。でも、隅々まで観て欲しいですね。「なんでこんなところに、こんなすごい方が出ているんだろう」という、ゲストの豪華さも見どころです。

――1回観ただけでは気づかなそうなポイントをいくつか教えていただけると嬉しいです!

加藤:佐藤流司くんが一瞬出ているんですよ。新聞配達の少年として。

――え!? 出ていました……?

魔夜:全然わからないな。新聞配達の少年なんていたか(笑)?

加藤:パタリロ殿下が来るよ~!みたいな冒頭のシーンで新聞を配っているんです。他にも俳優の上山竜治さんが出ていたり、デッカチャンとか、ミーちゃん 先生ファミリーとか。マヤメンズの人たちがいろいろな役で出ていて、劇中に登場する石膏像もマヤメンズの柴一平さんなんです。ポスターも、よ~く見たらいろんな豪華キャストの方が写っているんですけど、本編を何回も観て気づいて欲しいですね。

加藤諒は魔夜ファミリー!

――また、魔夜先生原作の映画『翔んで埼玉』にも、加藤さんは出演されていますね。

魔夜:諒くんは、もう魔夜ファミリーの一員です。『翔んで埼玉』の武内英樹監督に、「なんで諒くんを使ったんですか?」と聞いたら、『パタリロ!』の舞台に出演されていることをご存知で、きっと私の作品に馴染みがいいだろう、ということで使ったと言っていました。確かにその通りですよね。

加藤:いや~、ありがたい話で、『翔んで埼玉』の撮影現場でも武内監督が、『パタリロ!』のときはどんな風に世界観を創り上げていったかなど、すごく質問してくださったり、いろいろ頼っていただいた面もありました。でも、役が『パタリロ!』とは違って。

魔夜:『パタリロ!』の中では、諒くんは埼玉県人をいびる役なんですよ。でも、『翔んで埼玉』は真逆で、いびられる埼玉県人になっていますからね(笑)。

――両作品観た人には、立場が逆転しているので面白く感じると思います。魔夜先生は、加藤さんの魅力はどんなところだと思いますか?

魔夜:なんと言いますか、人間離れしているところでしょうね。常人にはパタリロのような役は出来ませんよ。ハッキリ言って、地球人には出来ないです(笑)。

――もはや、加藤さんのことを地球人だと思っていない?

魔夜:思っていません!

加藤:地球外生命体と言われても、褒め言葉として受け止めます(笑)。

魔夜:良い意味で地球外生命体ですよ。

原作を裏切っていないと感じるのは、魔夜峰央先生の思い描く“間”が再現されているから

――漫画の『パタリロ!』はまだ続いていますが、今後、加藤さんの演じるパタリロに影響を受けることはありそうですか?

魔夜:それはないと思いますよ(笑)。パタリロは諒くんしか演じることが出来ないとは思っていますが、漫画に関しては、他に引っ張られるということはほとんどないです。何かあったときに、“取り入れる”ということはあるかもしれませんけど、加藤諒のパタリロに何か引きずられることはないと思いますね。

――逆に加藤さんが魔夜先生の作品に影響を受けた部分はありますか?

加藤:僕はパタリロを演じるにあたり、影響を受けているものはたくさんあります。動きだったりキャラクターづくり、あと、お芝居の間(ま)などは、『パタリロ!』で学んだところは大きいですね。

魔夜:特にギャグは“間”なんですよ。漫画でいうと、コマがあってその仕切る縦線が間なんです。その次のコマに移るときに、どれだけ時間が経っているかを表すのに技術が必要で、それが0.1秒なのか、0.5秒なのかでまったく変わってきますから。たぶん、諒くんはそういうことをあまり意識しないで自然にできていると思います。

――舞台化や映画化されたときに、魔夜先生が思い描いている“間”は再現されていましたか?

魔夜:『パタリロ!』と『翔んで埼玉』では、再現されています。だから、原作を裏切っていないというか、原作を知っている方たちがガッカリしていないんだと思います。

――なるほど! では、映画を観てくださる方にメッセージをお願いします。

魔夜:先程も言いましたが、舞台をベースにしている作品なので、もしかしたら舞台を観ていない方には分かりづらい部分もある作品かもしれませんけれども、とにかく最後まで何も考えずに観ていただきたい。たぶん、笑えると思うので、損はさせないと思います。

加藤:実写版『パタリロ!』の魅力の1つとも言えるのが、歌やダンスのシーンだと思うんですけど……。

魔夜:今回の劇場版で初めてパタリロ1人で歌ったんでしょ?

加藤:そうなんです、パタリロは主役なのに、舞台ではソロ曲がなかったんですよ(笑)。だから、今回初めてソロで歌わせていただいて本当にありがとうございます!って念願のソロ曲だったり(笑)。歌にダンス、ギャグもラブストーリーもあって、とカオスな状態になっていますので、『パタリロ!』ってこういう世界観なんだなというのを楽しんでもらえたら嬉しいです。なので、普通の映画だと思わないで観に来ていただけたらいいな、と思います。

魔夜:そうね(笑)。だから、3次元じゃなく、2.7次元くらいだと思って観に来てくれたらいいかな。

――2.7次元という言い方は、すごく納得できる表現だと思います(笑)。ありがとうございました!

[撮影:山口真由子]

劇場版『パタリロ!』 6月28日(金) よりTOHOシネマズ新宿ほか全国順次ロードショー!
【STORY】
常春の国マリネラ王国の皇太子パタリロ・ド・マリネール8世が、側近のタマネギ部隊を引き連れて大英帝国にやってくる。パタリロの前に現れたのは、ボディガードを任命されたバンコランと、謎の美少年記者マライヒ。権力争いで命を狙われているパタリロを中心に、美少年たちの耽美な世界が繰り広げられる。やがて舞台はマリネラ王国、銀河系宇宙、埼玉県春日部、バンコランの過去にタイムスリップなど、時空を超えて縦横無尽に駆けめぐるのだが……。

■原作:魔夜峰央「パタリロ!」(白泉社刊) ■監督:小林顕作 ■監督補:小泉宗仁 ■脚本:池田テツヒロ
■音楽:小林顕作 ■撮影:伊集守忠 ■照明:酒井隆英 ■舞台照明:坂本明浩 ■衣装デザイン:朝月真次郎
■美術:片平圭衣子 ■ヘアメイク:堀川貴世 ■振付:足立夏海 平原慎太郎
<出演>
加藤諒/青木玄徳 佐奈宏紀/細貝圭 金井成大 石田隼 吉本恒生 三津谷亮 小林亮太/
松村雄基 近江谷太朗 木下ほうか 池田鉄洋/須賀健太 鈴木砂羽/魔夜峰央/西岡德馬/哀川翔 ほか
■配給:HIGH BROW CINEMA ©魔夜峰央・白泉社/劇場版「パタリロ!」製作委員会 2019
2019年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/103分
■公式サイト:https://patalliro-themovie.jp/

(C)魔夜峰央/白泉社

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アニメや可愛いものが大好き。主にOtajoで執筆中。

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