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官民ファンド崩壊の教訓(時代を読む)

官民ファンド崩壊の教訓

今回は嶌 信彦さんのブログ『時代を読む』からご寄稿いただきました。

官民ファンド崩壊の教訓(時代を読む)

経済産業省

安倍政権の新成長戦略の目玉として位置づけていた“官民ファンド”が崩壊寸前だ。民間が手を出しにくい事業に“官”がお金を出し、新産業を育てるという狙いだった。2012年に構想され、現在14ファンドが設立されている。その中心的存在だったのが、前身の産業革新機構を改組して設立した官民ファンドの「産業革新投資機構(JIC)」だった。政府は今後約95%を出資する大株主として関与し、新設された他の官民ファンドはJICの系列下に入る計画だったという。

ところがJICの田中正明社長(元三菱UFJフィナンシャル・グループ副社長)がJICには「将来の産業競争力を強化するという理念で民間出身のプロが集まったのに、“官庁側に信頼関係を壊す行為がみられ、それが対立原因となって民間出身の取締役8人全員が辞任することになった”」と発表し、発足後二ヶ月半で休止状態となったのである。

対立の最大の原因は、最大1億円を超える役員報酬案を経産省が一旦了承しながら、内外から「高すぎるのではないか」と批判を受け撤回してしまったことにあったようだ。報酬については予算を担当する財務省が「高過ぎるのではないか」と批判し、この高額では国民の理解も得られない、と対立が表沙汰になり、さらにJICの下に孫ファンドをつくり自由度の高い投資を行なうことも考えていたが「孫ファンドの投資先や報酬体系が不透明」と批判され、情報開示やガバナンスのあり方にまで対立が広がっていた。

民間出身のJIC役員には冨山和彦・経営共創基盤CEOや坂根正弘・コマツ相談役らも社外取締役に入っていたが、官庁が介入してきたことによって、民間の最善の手法を活用する民間の官民ファンドでなく国の意向を忖度して運用する“官ファンド”へ変質してしまう。これでは国際的に活躍するベンチャー投資などは出来ない上に、国の意向を受けて不振産業を救済するだけの“ゾンビ”機構になってしまう。」として総退陣になったようだ。

結局、このシステムでは「将来有望なベンチャー企業を探して育成するファンドを目指すという目的は達成できないし、民間らしい機動的なファンドは出来ない」として手を引くことになったわけだ。

政府はこれまでJT株や税金などを原資に約7800億円の資金を官民ファンドに投じてきた。しかし、これまで投資した14ファンドのうち、8ファンドの投資額が国などの出資金の50%に満たなかった。魅力ある投資案件をみつけられなかったのだ。

また政府がこれまで設立した14ファンドのうち、既に6ファンドは成功していないといわれ、政府もムダ金投資の批判に耐えにくいと判断したことも背景にあるようだ。実際、農水省所管のファンドは6年間に1770億円の投資予定だったのに、実績はわずか90億円。総務省案件も1370億円の投資計画に対し50億円だった。収益が見込めないのに人件費と運営費だけで毎年10億円単位の経費がかさんでいるという。

そもそも民間ファンドは、民間のリスクで将来、宝となるような企業を探し当てるのが狙いなのだが、新産業の芽が出てこない昨今の経済の動きに業を煮やしたのか、政府が専門家を集めて投資先をみつければ官民ファンドも成功すると思ったところに甘さがあったのかもしれない。

所詮、保証をバックにした官のファンドは死ぬ気で成功させる気概も少なかったのではなかろうか。本気のベンチャー投資はリスクもあるが、そのリスクを認識して成功への道を探るのが本当の“ベンチャー”で、日本にはまだまだベンチャーが育つ土壌がないということなのだろう。

そもそもまだ成功した官民ファンドがほとんどないのに、国の出す報酬額を巡ってもめるところに、真のベンチャー精神が宿っているとはいい難いともいえる。まだまだ日本のベンチャー風土、ベンチャー精神は甘い?といえるのではなかろうか。機構の方もいくつかの成功例を出してから報酬アップを申し出ればよかったと思うが、少しふっかけすぎて世間の常識を見間違えたといえるのではないか。

【Japan In-depth 2018年12月23日】

 
執筆: この記事は嶌 信彦さんのブログ『時代を読む』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2019年2月8日時点のものです。

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記者:

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