企業は履歴書を通じて、その人の何を見ているのか?ーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

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企業は履歴書を通じて、その人の何を見ているのか?ーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第24回目です。

※以下、マンガ『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』のエピソードに基づいた個人の見解です。あらかじめご承知おきください。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

※以下、マンガ『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』のエピソードに基づいた個人の見解です。あらかじめご承知おきください。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「企業は、いきなり特別なあなたを求めているわけではありません。まずは普通のあなたが見たいのです」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第3巻 キャリア25より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。

履歴書を見れば「その人にとっての常識」がわかる

初めての転職を成功させ、意気揚々の井野。勢いに乗ったまま、次に担当することになった転職希望者は、28歳の爽やか青年・高島でした。現在、広告代理店に勤める高島は「より規模の大きい会社に移って活躍したい」というのが希望です。

井野は最初、「この人なら転職させるのは楽勝」だと考えますが、やがて徐々に高島のピンボケぶりが明らかになってきます。例えば、履歴書に半開きの目で写った写真を貼ってきたり、ハウツー本に書かれていた文章をそのまま書き写してきたり。井野は高島に「模範解答で埋め尽くされている履歴書は、逆に良くない例」なのだと説明します。

「履歴書でチェックされるのはその人の“常識”。社会人としての最低限のマナーがあるかどうかが見られている」と言う井野。「些細なことかもしれないが、『誤字・脱字がある』『修正液を平然と使う』などというのは、相手に対する配慮が足りない証拠。履歴書は凝りすぎず、ラフすぎずが大切」だと話すのでした。

書類審査とは減点方式で採点される

今回の話は、「企業は履歴書を通じて、その人の何を見ているのか?」がテーマになっています。履歴書とは、ひとことで言うと「この人はルールを守れる人間なのかどうか?」をチェックするためのツールです。

もともと採用とは企業にとって、自社の未来を左右する重要な活動の一環です。私も今でこそ部下に任せているものの、かつては書類審査から面接、合否の判定までを自らの手で行っていました。当時、数多くの履歴書に目を通している際に、こちらのテンションが著しく下がる瞬間というのがありました。それは、日付が入っていないとか「明らかにどの会社にも同じ志望動機を書いているな」と推察できる内容が書かれていたときなどです。

採用は、一般に広く募集をして、その中から自社で活躍できる見込みのある人材を発掘する作業となります。減点方式で振り落とすというのは、本来なら採用の目指すところではありませんが、採用する側も人間。明らかな失点は防ぎたいところです。

履歴書で重要なのは、「経歴」ばかりではない

確かに人間ですから、ときには忘れることもあるでしょう。けれど、仮に本気で「この会社に入りたい」と思っているのであれば、履歴書を書いた後に見直しくらいはするのではないでしょうか。履歴書といえども書類の一種なわけですから、書き損じは通用しません。結局のところ、こうした些細なところに、普段の仕事に対する姿勢が出てしまっているようにも感じられます。

そもそも、「いつの時点での情報なのか?」というのは大事なポイントです。情報とは鮮度が命であり、通常は古くなればなるほど価値が落ちていきます。今の世の中は契約社会であり、約束を決めてその通りに動いていくことで、初めて取引が成立します。万一、契約書に日付が書いていない、というようなことになれば、契約自体が無効になる可能性もあります。このように、企業にとって日付はとても大事な要素なのです。

企業側が、このような心構えでいるのに対して、面接を受ける側が「大したことないだろう」という感覚でいては、認識に大きなズレが生じることになります。世間では、「履歴書で重要なのはきらびやかな経歴だ」とか「たくさんの資格を持っているのがいい」などと思われているようですが、実際はその前ですでに差がついているのです。

©三田紀房/コルク

履歴書の本来の役割とは「面接につなげる」こと

このように、書類審査に通るコツは、面接時のコツや勘所とは違います。面接の場合は主に自分のプラス面を主張しなくてはいけないのに対して、履歴書は先ほど申し上げた通り「マイナスをいかに増やさないか」が基本的な戦略と言えるのかもしれません。

私の経験では、「書類審査のちょっとしたミスで、面接という舞台に上がる段階のスタート地点ですでに損をしている人が意外と多い」というのが実感です。

履歴書の本来の役割とは「失点を避けた上で、自分を知ってもらい、相手と会うための扉を開くこと」だと心得ておいたほうが無難と言えるでしょう。

俣野成敏(またの・なるとし)

30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン→』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?→』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」→』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト→

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