何でもできればうまくいくは、勘違い?起業できちゃう人“3つ”のパターンーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第23回目です。
『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「会社とは景気の良い時に起こすべからず!」
(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第3巻 キャリア24より)
龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。
井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。
「起業するなら不景気のときが良い」のワケとは?
転職エージェントに勤める海老沢は、社内でも変人扱いされている変わり者です。転職代理人であるにも関わらず、しばしば転職希望者に起業を勧めたり、逆に転職を思い止まらせたりすることもあります。しかし、それは「どうすることが、相手にとって一番ためになることなのか?」という信念に基づいた行動なのでした。
海老沢は、部下の井野に「そもそも会社とは、不景気の時にこそ起こすものだ」と言います。井野が「創業するなら景気の良い時のほうが、ビジネスチャンスも多いのでは?」と返すと、海老沢は「みんなそう考えて、結局ほとんどの人が失敗に終わっているのが実情」だと話します。
「確かに、景気が良いときに事業を始めると、最初はそこそこ上手くいく。けれど、そういうときは世間の求人も多いから、人を募集しても容易には集まらず、銀行も借り手が多いために資金調達がしにくい。やがて同業同士の価格競争に巻き込まれ、消耗した挙句に倒産に追い込まれる企業が後を絶たない」と言うのです。海老沢は「成功したかったら、世の中の人と逆を行くこと」だと語るのでした。
起業にまつわる「2つの大きな誤解」
別の場面で、海老沢は「たいていの人は勝手な思い込みをしている」と言っています。「本当は独立できる実力がありながら、『会社を設立するには資金も設備も人材も、すべて自前で用意しないといけない』と決めてかかり、可能性にチャレンジしようとしないことが多い」のだ、と。
現在、経済を活性化させたい日本政府は、起業する人に補助金を出したり、制度を改正したりと、起業を後押ししています。助成金をうまく活用すれば、最初から人を雇用し、業務を任せることもできます。自分でわざわざイチからお金を貯めなくても、資金を調達する手段はあります。
人々の思い込みは、“社長”という職業についても当てはまります。つまり「社長とは、何から何まで自分でできないと務まらない」という勘違いです。けれど実際はその逆です。起業する際には、何もかもソツなくこなせるオールマイティーな能力よりも、「これしかないけれど、これだったら誰にも負けない」という能力があるほうがスタートアップには有利なことがほとんどです。
©三田紀房/コルク
「起業できる人」3つのパターン
一般論として、大きな視点で見ると起業ができる能力がある人には以下の3つのパターンがあります。
(1)営業が得意な人
優れた営業マンは、独立して自分で商品を売ったほうが、会社を通さない分だけ自分の取り分が増えます。フルコミッションで仕事をするほうが収入アップする人が、商材を選んで販売するやり方です。会社の看板等を自分の力量と勘違いしてしまっている人が見受けられるのもこの分野の特徴です。
(2)専門的スキルを持っている人
セールスはできなくても、他人が欲しがる尖った技能を武器に、口コミなどで顧客を広げていくパターンです。私の知り合いの中に、英語で外国人とのネゴシエーションや会議の進め方、プレゼン資料の作成の仕方などを教えている人がいます。こうしたスキルも商品(売り物)になります。
(3)マネジメントスキルがある人
マネジメントとは、ある目的に向かって人や組織を動かすことのできる能力のことを言います。これを持っていれば、必ずしも自らが専門スキルを身につけている必要はなく、スキルを有している人を雇い入れるか、従業員がスキルを身につけられる環境をつくります。私の知り合いの経営者で、もとは車の整備士だった方が、税理士と提携して会計・経理の代行サービスを立ち上げ、オーナーになった人がいます。顧客を創造できれば、商材は何でも良いワケです。
⑶はビジネスオーナーと呼ばれる領域で、(1)と(2)の人は、会社を大きくしたい場合はどこかのタイミングで人を雇い、⑶の要素が必要になってきます。
「思い込み」を払拭し、起業に至るための道とは
現在は外注やシェアリングが充実しているため、起業する際には、何から何までできる人の存在がなくても、深刻な影響を与えません。それよりは、「誰に何を提供するか?」ということや、「いかに優良なパートナーを見つけ、関係性を築くか?」といったことのほうがはるかに重要です。
どんな人にも思い込みというのは必ずあります。それを払拭する方法の一つとしては、起業で言うなら副業などであらかじめ実験してみて、自分なりの合否ラインを設定し、自分の構想が世間にどこまで通用するのかを試してみるといいのではないでしょうか。
俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。
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