“最後の職業作詞家”及川眠子と吉田豪が赤裸々トーク! 作詞の奥義・アイドル論・それからあんなお話も……

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新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌「残酷な天使のテーゼ」やWinkの「淋しい熱帯魚」など多くの大ヒット曲を書いた作詞家の及川眠子さんが、作詞の教則本『ネコの手も貸したい 及川眠子流作詞術』(リットーミュージック)を上梓しました。それに伴い行われたトークショーでは、プロ・インタビュアーの吉田豪さんが、なぜ今作詞の教則本なのか? 伝えたかったことは? など及川さんに鋭く切り込みました。その全貌をお届けします。

及川眠子 出版記念トークイベント
2018年9月8日(土)@HMV&BOOKS SHIBUYA
聞き手:吉田豪
 取材・文:秋摩竜太郎

最近、音楽のことをよく訊かれるようになってうれしいんですよ。(及川)

吉田 及川さんには3年ぐらい前に一度インタビューさせていただきましたね。

及川 はい、そうなの。

吉田 あれが意外と話題になって。

及川 そのおかげでフジテレビの『アウト×デラックス』から出演依頼が来ましてね。

吉田 アウトな人という認定をされて。

及川 そうそう(笑)。

吉田 それからようやくちゃんとした本、『ネコの手も貸したい 及川眠子流作詞術』を出版されました。

及川 残念ながらちゃんとしてますよ(笑)。だから最近、音楽のことをよく訊かれるようになってうれしいんですよ。

吉田 読ませていただいて、とても勉強になりましたよ。歌い出しはア行にするとか、そういうことを意識したことがなかったもので。

及川 ありがとうございます。

吉田 ほかの作詞家さんはどれくらい考えているものなんでしょうか?

及川 どうなんですかね。何十年もやっている人はそれなりの技術があるでしょうけど、それぞれ違うはずですしね。ただ女性の作詞家に多いのは、字面を気にするっていうこと。目で見たときに美しい文章でもある、そういうものを目指す人も多いですよね。私は気にしませんけど、歌っていうのは目で見るものではないのでね。いかに言葉がメロディとうまく噛み合うかですから。

吉田 ボクが及川さんの名前を知ったのはCoCoがきっかけだったんです。だからこの本にCoCoとribbonの違いがしっかり書かれていたのがうれしかったです。

及川 CoCoは私立の女子校の高校生。ribbonの娘たちは公立、共学の高校生っていうね。だからCoCoとribbonの見ていたり過ごしたりしている世界観の違い、そういうことは意識していましたね。

吉田 当時はいわゆるアイドル冬の時代でしたけど、それでも全然規模が大きくて、ホールでコンサートをやっていたり、予算もしっかりとありましたよね。

及川 フジテレビのバックアップがあったのでね。

吉田 彼女たちをきっかけとしてアイドルの仕事が来るようになったんですか?

及川 いや、アイドルはゆうゆ(岩井由紀子/おニャン子クラブ)ですね。Winkの前に、おニャン子の高井麻巳子ちゃんとか、工藤静香もやってたかな。私を育ててくれたディレクターが彼女たちを担当していたんです。で、高橋洋子は、実はWinkのバックコーラスをやっていたんですよ。踊りながらね。さらに洋子ちゃんのトラ(代役)で彼女のお姉さんも関わっていたり。その後、今やアニソンの女王と言われている奥井雅美ちゃんもバックコーラスをやっていましたね。というのは最近雑談をしていたなかで発覚したんですけど(笑)。

吉田 当時は接点がなかったんですか?

及川 Winkの場合は完全に分業制で、私が唯一接点のあるミュージシャンは仮歌の人だけだったんです。広谷順子さんとか。

吉田 なるほど。Winkの特殊な音楽性というのは、元ジャックスの水橋春夫(プロデューサー)さんの存在が大きかったわけですよね?

及川 もう彼のアイディアですよね。

吉田 マニアックな洋楽を次々とカバーしていき、シングルはちゃんと売れそうなものを作るという。

及川 そうですね。水橋さんのやりたいことを周りの職人さんたちが形にしてあげた、それがあのときのWinkじゃないですかね。

吉田 アルバム『Especially For You 〜優しさにつつまれて〜』とかどうかしてましたよね(笑)。ブロンディのカバーとデボラ・ハリーのカバーが収録されているんですよ。被ってんじゃねえかっていう。

及川 めちゃくちゃでしたね(笑)。でもバランスを取りながらやれていたのはすごいですよね。

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