ビジネスの“伝える”スキルが上がる!「想像力」の鍛え方──マイクロソフト澤円のプレゼン塾(その10)
想像力を働かせながらプレゼンテーションをすれば、聴衆を一気に引きつけることができるという澤円さん。では、想像力を高めるにはどうしたらよいのでしょうか?
澤円のプレゼン塾・第10回は澤さんが実際に行っているという「想像力を高める」練習法を紹介します!
想像力を高める練習方法
想像力を高める方法は、いろいろあるでしょう。
今回は、私自身が日々行っている方法をご紹介します。
私は、何かしらの人工物を目にしたら、下記の3つを想像します。
それが必要になった理由 それを最初に生み出した人 それが作り出されるまでの過程
人工物はなんでもOKです。
大きいものから小さいものまで。一般的なものからレアなものまで。
例えば、電車のつり革について想像してみましょう。
「それが必要になった理由」を想像する
つり革は、電車が揺れたときに、立っている人が転ばないようにするために必要です。
これは、立って乗る乗り物ができてから必要性が発生したということでしょう。
最初は何だろう?馬車かな?それとも船?
いずれにせよ何かに立って乗っていたら、揺れた拍子に転んだ人がいたんでしょうね。そのときに「何かつかまるものがあれば…」と思ったことでしょう。
これが一つ目の「必要になった理由」の想像です。
「それを最初に生み出した人」を想像する
では、転んでしまった革職人のミヒャエルさん(17世紀のドイツ人)は、自分の技術を活かして、乗り物の天井からぶら下げる革を作ります。最初は一本のひも状の革を輪っかにしてぶら下げたことでしょう。
でも、それだけだと手が締め付けられて困る。なので、友人で樽職人のチャールズさんに、頑丈な四角い枠を作ってもらって取り付けてみます。たしかにしっかり握れるようになりましたが、強く握ると手が痛い。なので、樽の技術を利用して丸い取っ手にして…と工夫していきます。
これが「最初に生み出した人」に関する想像です。
「それが作り出されるまでの過程」を想像する
そして最後が「作り出される過程」の想像。現代の電車についているつり革は、まぎれもない工業製品で、大量生産が求められます。なんとなく、大田区の工場あたりで作っているような気がします。
つり革の革の部分の素材は、本革ではなくナイロンやキャンバスが主流のようです。素材メーカーから取り寄せた一枚のシートを工場でカットして、一分間に何十本もの革が作られているかも知れません。
取っ手の部分はプラスチック。専用の金型をこれまた頑固親父が代々経営している町工場で、がしゃんこがしゃんこと作っていることでしょう。
その組み立ては、やっぱりベルトコンベアーで自動化されているのかな?いや、もしかしたら伝統芸能的手作業で作っているかも…?
と、いろいろと想像できる訳です。この想像は、電車に乗っている時間に十分できます。想像は脳を活性化させてくれるので、脳にとっていいストレッチになります。なにより、本もスマホも何もいらない。コストゼロでできるのです。
そして、いろいろ想像すると興味がわいてきます。なので、想像した後は「調べる」という行動に移しやすくなります。
つり革に関して言えば、日本では三上化工材株式会社という大阪府淀川にある会社が、国内の過半のシェアを占めているそうです。
こんなこと、興味がわかなければ絶対調べませんよね。逆に言えば、興味を持てば調べることは苦にならないですし、面白い発見があったりするわけです。
私が調べた限りでは、「最初に生み出した人」まではたどり着けませんでした。知ってる人、教えてください(笑)。
想像力を高める練習の意味
「今は検索すれば何でも一発で調べられるのに、なんでわざわざ脳内だけでそんなことするんだ?」って思う方もおられるかもしれませんね。
これはあくまでトレーニングであって、「正しい情報を知る」ことが目的ではありません。目の前にあるものについて頭を使うことで、いろんなアイディアの出やすい脳にするのです。これは、前回までで説明させていただいた「思考を飛ばす」ためのトレーニングにも最適です。
そして、いろいろ想像した後で「答え合わせ」のような感覚でネット検索するなどして調べれば、なかなか得られない知識を身に着けることができます。
雑学が多くなると、プレゼンテーションの合間の小噺などに使うことができます。一石二鳥どころではないメリットが得られること請け合いです。
想像をいろいろ働かせると、世の中の様々な事象に興味を持つようになります。興味範囲が広い人のプレゼンテーションは、魅力的になります。
知識を得ることを目的にするのではなく、ご自身の「脳力」を高めるためにも、あらゆるものに対して想像力を働かせてみましょう。
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著者プロフィール
澤 円(さわ まどか)氏
日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界世界No.1プレゼン術」
Twitter:@madoka510
※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。
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